「テニス肘」の初期症状をご存じですか?治療方法についても解説!【医師監修】

今回は、テニスなどの腕や手首を使うスポーツ・家事・パソコンのタイピング等により、肘から手首にかけて痛みが現れる「テニス肘」についてのお話です。このテニス肘とは、何が原因で引き起こされるのでしょうか。
今回は具体的な検査や治療方法を分かりやすく解説します。
薬などを使用せず自分で行うことができる予防法やケアの方法もあります。正しい方法を身につけて、痛みによるストレスのないアクティブな毎日を過ごしたいですね。
※この記事はMedical DOCにて『「テニス肘」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
テニス肘の検査と治療
受診を検討するべき初期症状を教えてください。
患部を安静にしても痛みが改善しない場合・痛みがだんだんと強くなってきた場合・患部が腫れて熱を持っている場合には、整形外科へ受診しましょう。
どのような検査を行うのでしょうか?
痛みの反応を確認するための検査は、以下の3種類です。
- 「Thomsenテスト」
- 「Chairテスト」
- 中指伸展テスト
腕を前に出し、肘を延ばした状態で手首を上に反らします。医師が下の方向に力を加えた状態で、それに逆らうように上方向に力を入れ手首を反らし続けます。この状態で肘の外側に痛みが出るかを確認するテストです。
肘を延ばしたままの状態で椅子を持ち上げ、肘の外側に痛みが出るかを確認します。
腕を前に出し、肘を伸ばした状態で手首を上に反らします。医師が下の方向に力を加えたとき、肘の外側に痛みが出るかを確認するテストです。肘を伸ばしたままの状態で椅子を持ち上げ、肘の外側に痛みが出るかを確認します。
腕を前に出し、肘を指先まで真っすぐ伸ばした状態からテスト開始です。医師が中指を下方向に力を加えます。その力に逆らって、中指を上に持ち上げようとしたとき、肘の外側に痛みが出るかを確認します。
治療方法を教えてください。
その上で、痛みの状況に応じて薬物療法・リハビリテーション・装具の装着などの治療を行います。
- 薬物療法
- リハビリテーション
- 装具の装着
痛みの症状が比較的軽い場合には、炎症を抑える飲み薬(非ステロイド性消炎鎮痛剤=NSAIDs)や湿布で様子を見ます。痛みや炎症を抑える薬を長期にわたり内服することで胃腸が荒れてしまうことがあるので注意しましょう。
また、肘の外側が痛み始めてから1カ月半以内の急性期で痛みがあまりにも強い場合には、患部に直接ステロイドの注射し、症状の改善をはかります。物を持ち上げることができないなど、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合でも、注射の翌日には痛みの症状が改善することがほとんどです。
痛み止めの効果は1~2か月間続きます。ただし、その後、再び患部が痛み始めることもあるので、薬物治療とリハビリテーションとの同時並行で改善を目指すことが基本です。
痛みへの即効性はないものの、ストレッチ・温熱療法・超音波療法などの理学療法も効果的です。
理学療法士とともに、患部に負荷がかかる原因を明らかにし、できるだけ負荷の少ないフォームを身につけることも長い目で見た病状の改善に繋がります。外側上顆付着部にかかる負担を軽減するための肘バンドを装着する方法もあります。
このバンドは、上腕骨外側上顆の骨の出っ張り部分から指2本手首側へ下げた位置に巻いて使用する装具です。筋肉を圧迫することで、動作時に患部へかかる力を弱め、安静を保つ効果が期待できます。
テニス肘は手術することもあるのでしょうか?
ただし、1年以上経過したにもかかわらず、内服薬・注射・リハビリ等で改善が見られないような場合には手術を選択することもあります。手術の方法は主に以下の2つです。
- 「オープン法」
- 「関節鏡視下法」
傷んだ腱を部分的に切除し、傷んでいない部分の腱と骨を縫い合わせる手術です。肘の外側を切開するため、神経が圧迫されている場合は、神経の圧迫を取り除く手術を同時に行うこともあります。
関節鏡を使って、関節の中から傷んだ腱を切除する手術です。直接切開する手術とは異なり、傷口が最小限に抑えられるというメリットがあります。
ただし、関節鏡手術の場合には、全身麻酔での処置が必要です。また、神経が障害されている場合、関節鏡で処置を行うことはできないため適応外となることもあります。
編集部まとめ
スポーツや労働によって腕から手首にかけて痛みが生じるテニス肘は、数日で治ることがある一方、重症化して手術が必要になることもある病気です。
普段から腕や手首をたくさん使う人は、ストレッチ・アイシング・筋力トレーニングなどのセルフケアを行うことが予防に役立ちます。
安静時でも痛みが続く・痛みがだんだん増している・患部が腫れて熱を持っている場合には、痛みを我慢せず、すみやかに整形外科へ受診しましょう。