「小脳変性症」と診断される人はどのくらいいる?治療法についても解説!【医師監修】

小脳変性症は、小脳の神経に障害がおきて、手足がスムーズに動かせなくなる病気です。
現在、国内には約3万人の患者さんがいると報告されています。
遺伝性と非遺伝性の2種類に分類され病気の原因も複数判明していますが、症状を根治する治療方法は現状ではなく、主に対症療法での治療を進めています。
現代では運動機能を補うことで病状を悪化させるリスクを減らし、長く日常生活の質を維持できるようになってきました。
小脳変性症の検査や治療方法について解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「小脳変性症」の初期症状・余命はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
脊髄小脳変性症の検査と治療方法
受ける必要がある検査の種類を教えてください。
- 患者様とご家族の問診を行い、血液検査や神経生理学検査で脳波を調べ、脊髄小脳変性症の診断をします。その他に脳のMRI又はCTで画像検査をし、小脳や脳幹の萎縮がないか評価します。
- 遺伝性か非遺伝性であるかは家族構成・症状・検査によって判断できますが、一部の分類しづらいものは遺伝子検査が不可欠です。遺伝性の脊髄小脳変性症であるかは、専門機関の遺伝子検査で判定できます。遺伝子検査は専門性も高く、ご本人やご家族へ心理的な負荷がかかるため専門機関へ相談を行うなど定期的なケアが必要です。
脊髄小脳変性症と診断される患者さんはどれくらいいますか?
- 多系統萎縮症の中の脊髄小脳変性症と判定されたものも含めて現在、国内では患者数は約3万人が脊髄小脳変性症を発症しているといわれてます。
- 遺伝性ではない脊髄小脳変性症がほとんどで全体の2/3に達します。残りの1/3が遺伝性の脊髄小脳変性症です。その中で痙性対麻痺は脊髄小脳変性症の約5%に及びます。
- 遺伝性の脊髄小脳変性症には遺伝子ごとに番号が振り分けられており、国内の大半がSCA3(マチャド・ジョセフ病)・6・31型・歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)です。
- 遺伝性の脊髄小脳変性症を発症している患者のほとんどの病原遺伝子が確認されています。ただ、現在もわかっていない病気が多数あります。
治療方法が知りたいです。
- 現在は脊髄小脳変性症を治す、病状の進行を止めるための根本的な治療方法は現状ではありません。主に症状を鎮めるための対症療法を行っています。
- 脊髄小脳変性症で現れる症状を鎮静させるには飲み薬で治療し、運動機能を保持するためにはリハビリが効果的です。運動失調には、甲状腺刺激製剤を処方し、足のひきつり・立ち眩みなどそれぞれの症状に対しては薬で治療を行います。
編集部まとめ
脊髄小脳変性症とは、平衡感覚や筋肉の緊張を保持して動作をスムーズに行える役割を担っている小脳や脊髄に障害が発生し、運動失調が起こる病気の総称です。
原因には遺伝子の異常が関わっている場合もあり、その遺伝や発症の原因について研究が進んできていますが、まだ不明な点も残されています。
検査は医師が問診・神経生理学検査(脳波)・画像検査(MRI)を行い脊髄小脳変性症の診断をします。
治療は、病状の進行を止める根本的な方法は見つかっていないため、症状を鎮める対症療法を行っているのが現状です。
脊髄小脳変性症発症をすると徐々に運動機能の障害が進行し歩行中に転倒するリスクが高くなってきます。
運動機能を保持するためにリハビリをしたり、家に手すりを取り付けたりするなどの対策を行い、転倒するリスクを減らすことが大切です。