「低アルブミン血症」の兆候となる症状はご存知ですか?医師が監修!
公開日:2025/04/15

低アルブミン血症とは、血液中に存在しているタンパク質のアルブミンが正常値よりも低くなる症状です。
低アルブミン血症は普段聞きなれないかもしれませんが、さまざまな原因によって引き起こされます。
日頃むくみや急な体重の増加などありませんか?気になるむくみや急な体重の増加は、低アルブミン血症を引き起こしているサインかもしれません。
聞き慣れない病名ではありますが、この機会にぜひ知っておくとよいでしょう。
※この記事はMedical DOCにて『「低アルブミン血症」の原因・症状・兆候はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
低アルブミン血症の特徴と症状
低アルブミン血症はどのような特徴がありますか?
- 低アルブミン血症とは、血液中に存在するタンパク質であるアルブミンが正常よりも低い状態になる症状です。アルブミンは血液中の血清部分に含まれ、人の体内において主要なタンパク質となります。
- 低アルブミン血症が起こっている場合、以下のような特徴がみられます。
- 全身のむくみ
- 腹水や胸水
- 尿量の減少
- 血圧低下
- 低アルブミン血症は、肝臓の異常によるアルブミン産生の低下や、腎臓の異常によるアルブミン喪失などが原因となり引き起こされます。血管の中の水分が外に漏れ皮下や臓器の外に貯まるので、上記のような症状が起こるのです。
- また、アルブミンは1日に10〜15g合成され、血流を介して体内に分布しています。
- 一方、血清アルブミンは常に分散されており、体内で合成と分散のバランスを保つことで正常に作用します。
症状を教えてください。
- 低アルブミン血症が起こると血管内の水分が血管外へ移動し、前述したように全身のむくみ・腹水・胸水・血圧低下の症状が起こります。アルブミンは、血管内に存在することで水分を血管内に留める重要な役割を担っているのです。
- また、低アルブミン血症は原因となる疾患に関連した症状がみられます。
- 例えば肝硬変では出血傾向や黄疸が認められ、肝硬変における合併症のひとつとして挙げられるのです。
- 食道静脈瘤により吐血するなどの症状もみられる場合があります。原因となる疾患の症状についても把握しておきましょう。
発症する原因が知りたいです。
- 主な原因は、アルブミンの産生低下や体内からの喪失です。産生低下では肝硬変が引き起こされます。
- 肝硬変とは慢性肝炎を発症し、長い年月をかけて肝臓の機能が低下した状態です。肝硬変を引き起こすと肝臓でタンパク質の産生・分散・有機物の分解が十分に行われなくなり、アルブミンの産生にも影響されてしまい低アルブミン血症となるのです。
- 肝硬変の原因として約半数を占めるC型肝炎ウイルスのほかに、B型肝炎ウイルスやアルコールの多量摂取が挙げられます。
- アルブミンの喪失は、ネフローゼ症候群などの腎疾患によって引き起こされます。腎組織で炎症が起きるとアルブミンが大量に尿中に漏れてしまい、低アルブミン血症を生じて起きる疾患です。
- ネフローゼ症候群は原因疾患がない一次性のタイプと、糖尿病や膠原病などの原因疾患によって引き起こされる二次性のタイプがあります。
- アルブミンの喪失が主体となる低アルブミン血症が発症する背景として、ネフローゼ症候群のほかに以下の病態があります。
- 低栄養
- 炎症性腸疾患
- 急性膵炎
- 重度のやけど
- 敗血症
- 妊娠高血圧症候群
- もし思い当たる症状があるのなら、低アルブミン血症を疑うことも視野に入れましょう。
兆候はありますか?
- 低アルブミン血症が生じているとさまざまな兆候がみられます。
- むくみ
- 体重増加
- 尿の泡立ち
- 腹部や胸部に息苦しさを感じる
- 上記のような兆候がみられる場合は早急に医療機関を受診し、検査を受けることをおすすめします。
- 一過性の症状と考えずに放っておくことは控え、ご自身の未来の健康のためにも兆候を見逃さないようにし日々気をつけましょう。早期受診が今後への対策の鍵となります。
低アルブミン血症を発症しやすい人の特徴を教えてください。
- 比較的高齢者の方が発症しやすい傾向にあります。なぜかというと、血清アルブミンが加齢に伴い低下することで低アルブミン血症の割合も増加するためです。アルブミンを増やすためには、良質なタンパク質が必要です。
- 高齢者の方は若い頃に比べタンパク質の摂取量が低下していることも、低アルブミン血症を発症させやすい原因となります。
- タンパク質は成人男性で1日60g、成人女性で1日50gの摂取が必要とされています。タンパク質制限を必要としない慢性疾患のある高齢者は、さらに2〜3倍増やしたタンパク質が必要となるので覚えておきましょう。
編集部まとめ
低アルブミン血症は、原因疾患の治療を行っていくことが改善に繋がります。
肝硬変など、原因疾患によっては治療が遅れたことにより効果が得られない場合もあるので、早期受診が重要となるでしょう。
また、タンパク質摂取量の低下が原因で低栄養となり、低アルブミン血症を引き起こす場合もあります。
タンパク質を含んだ栄養バランスのよい食事を心がけるなど、生活習慣の改善も低アルブミン血症を引き起こさないために重要となります。
今一度生活習慣を見直し、そもそも低アルブミン血症の原因疾患を引き起こさないように気をつけていきましょう。
参考文献