「低置胎盤の出産のリスク」はどんな症状かご存知ですか?医師が解説!
公開日:2025/11/05

胎盤は、母体から胎児へ栄養や酸素を送る大切な役割をもっています。通常は子宮の上の方に作られますが、作られる位置に異常がみられた場合は注意が必要になってくるのです。
そんな胎盤の位置異常のひとつに、胎盤が子宮の下の方に作られている低置胎盤が挙げられます。
この記事では低置胎盤とはどのような状態なのか、分娩時の注意点についても解説しています。
※この記事はメディカルドックにて『「低置胎盤」の赤ちゃんへの影響・出産リスクはご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 裕斗(医師)
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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
目次 -INDEX-
低置胎盤の出産への影響

出産のリスクを教えてください。
- 通常の妊娠と比べて分娩時に出血量が多くなりやすいリスクを負っています。
- これは、胎盤が付いている子宮の下の方(子宮下節)は収縮する力が弱く、分娩後の止血機能が充分に働かないことが原因です。
- また、前回の帝王切開部分に胎盤が作られている場合は、胎盤が癒着する可能性があり、癒着している場合、大量出血のリスクが高まります。
- 出血が多い場合子宮内にバルーンを挿入する、出血している部分を縫い縮めるなどの方法がとられますが、それでも出血が止まらない場合は母体の命を救うために子宮摘出手術を行うケースもあります。
- 出血量が多いと輸血が必要になってくるケースもありますが、低置胎盤の診断が確定したら自己血を貯血して備えておく方法もあります。
低置胎盤は赤ちゃんに影響するのでしょうか?
- 低置胎盤は、子宮内での赤ちゃんの発達に影響はありません。
- しかし、胎盤が剥がれやすい位置にあることから、まれに常位胎盤早期剥離を引き起こすことがあります。
- そうなると母子共に危険な状態にさらされてしまう危険性があり、最悪の場合は流産・死産になる可能性もあるので早急な治療が必要となります。
- 激しい痛みとともに大量の出血がみとめられた場合は、早急に受診が必要です。
普通分娩はできるのでしょうか?
- 内子宮口と胎盤の位置関係にもよりますが、緊急時に対応が可能な設備が整っている病院では、大量出血などへのリスクを説明した上で普通分娩を選択できる場合もあります。
- その際には、分娩後の大量出血に備えて自己血を貯血するなどの準備が必要です。
- ただし、分娩中に出血が多くなると緊急帝王切開に切り替えることもあります。
- 普通分娩と帝王切開のリスクを把握し理解したうえで、主治医としっかりと相談して分娩方法を選択してください。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- 低置胎盤だと診断されたとしても、胎児の発育に影響を及ぼすことはないのでその点においては安心してください。
- また、妊娠が進むと胎盤の位置が通常の高さまで上がり、問題なく出産に臨むことができるケースも多く存在します。
- 低置胎盤疑いがあると告げられたとしても、気長に様子を見てください。
- 。妊娠30週を過ぎても低置胎盤が治らないときは予定帝王切開を組むケースもありますが、状態によっては経腟での分娩も可能です。
- 診断が下りたからといっても過度に心配することなく、妊娠期間中は極力安静に穏やかに過ごすことに努めてください。
- ただし、性器からの出血が見られた場合は速やかに受診してください。
編集部まとめ

低置胎盤は、内子宮口とそれに最も近い胎盤の位置が2センチ未満の場合に診断されます。
ただし妊娠30週未満の場合は週数とともに胎盤の位置が上がり、症状が解消されることが多いことも特徴のひとつです。
胎児の成長に影響を及ぼす症状ではありませんので、もし診断されても心配し過ぎず安静にして過ごすように努めてください。
安静期間は不安な気持ちになりやすいと思いますが、なるべくリラックスして穏やかに過ごしましょう。
症状によっては経腟での分娩も可能です。経腟分娩を希望している場合は出血などのリスクを充分に考慮して、主治医とよく相談のうえ分娩方法を決定してください。
参考文献