「多発性筋炎」の5つの自覚症状とは?原因についても解説!【医師監修】
公開日:2025/06/23

多発性筋炎とは、筋肉に炎症がおこる病気で国が指定する難病の1つです。筋肉に炎症が起きるだけでなく、力が入らなくなるなどの症状が生じます。
自己免疫疾患の1つであり、乳幼児から老人まで幅広い年代で発症の可能性がある恐ろしい病気です。
本記事では、多発性筋炎とはどのような病気なのかご紹介します。具体的な症状や原因・自覚症状・診断方法などを解説するので参考にしてください。
※この記事はMedical DOCにて『「多発性筋炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
原因と診断方法
多発性筋炎の原因は何でしょうか?
- 多発性筋炎の原因は、自己免疫疾患に伴って免疫機能が正常に機能しないことで発症します。
- 通常、免疫機能や体内に入ってきた病原微生物に対して身を守るために機能する防御システムが存在しますが、膠原病に含まれる多発性筋炎の場合には、体内で筋肉や皮膚に対する抗体が作られているため、自己免疫反応として筋肉や皮膚組織を標的として攻撃してしまうのです。
- しかし、膠原病に含まれる多発性筋炎の場合、体内で筋肉や皮膚に対する抗体が作られてしまっています。そのため、自己免疫機能が筋肉や皮膚を、標的として攻撃してしまっているのです。
- なぜ、免疫機能が体内の組織を攻撃対象にしてしまうのか、その原因はいまだはっきりわかっていません。
- 遺伝的な体質の問題やウイルス・細菌などの感染によって起きているのではないかと考えられています。
初期段階での自覚症状はありますか?
- 初期症状としては、筋炎の場合は痛みや筋力の低下を自覚するところから始まります。日常生活において、次のような症状を感じるケースが多いようです。
- 腕を上げづらい
- 階段の上り下りが大変
- 立ち上がりにくい
- 会話がしにくい
- 食べるとむせやすい
- 主に胴体に近い部分の筋肉や首を曲げる際に、違和感をおぼえる自覚症状が多いです。筋肉痛を自覚しないこともありますが、圧痛を感じることがあります。
- また、関節痛・食欲不振・体重減少などが生じることもあるでしょう。皮膚炎の場合、自覚症状としては各部のかゆみが発生するケースがあります。
- しかし、発症者の全員が筋炎の症状やかゆみなどをおぼえるわけではありません。患者ごとに症状の有無や度合いは異なります。
- 筋炎の自覚症状はほとんどなく皮膚炎のかゆみが発生するケースがあれば、筋炎だけの症状しか現れないケースもあります。
多発性筋炎の診断方法を教えてください。
- 多発性筋炎の主な診断・検査方法は、次のような内容です。
- 筋力検査
- 血液検査
- CT検査
- MRI検査
- 筋力検査では、どの程度筋力が衰えているかを確認します。具体的な内容としては、次のような内容です。
- 身体機能検査
- 徒手筋力検査
- 身体機能検査は日常生活で必要不可欠な食事・移動・排泄などの基本動作を容易に行えるかを確認します。
- 徒手筋力検査は、器具を使わず患者に対してあえて抵抗を与えて筋力を調べる方法です。
- 血液検査では、まず筋組織内にある酵素を確認します。筋炎が起きている場合、組織が破壊されているため、血中の酵素の量が増えています。
- また、筋組織特有のタンパク質や血中のたんぱく質の計測、筋炎特異自己抗体と呼ばれる特定の抗体を計測するなどの方法でも筋炎の有無を確認するのです。
- CT・MRI検査では画像を用いて、各部症状を確認します。多発性筋炎を発症した場合、間質性肺炎を合併しやすいため、胸部や腹部をCT撮影し合併症の有無を確認します。MRIは、磁気を使って広範囲の筋組織の炎症の有無を調べる方法です。
編集部まとめ
多発性筋炎とは、筋肉に炎症がおき、倦怠感や誤嚥など日常生活に大きく影響を与えるほど恐ろしい病気です。
しかし、ステロイド剤や免疫抑制剤など適切な投薬や治療を行うことで、良好な状態にすることは可能です。
合併症などの危険もあるため、治療中・治療後も注意が必要ですが、普段の生活と変わらない状態に戻ることも不可能ではありません。
多発性筋炎の症状や治療方法など正しい情報を把握して、万が一症状があった場合には、医師に相談のもと治療を進めましょう。