「痔瘻(じろう)」は何の症状が出たら疑った方が良い?治療法についても解説!【医師監修】
公開日:2025/06/17

お尻のお悩みは、なかなか人に相談できないものです。専門の医院に行くのも気が引けてしまうという方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな「痔」のお悩みの中でも症状の重い「痔瘻」について、診断・治療・手術などをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
痔瘻は市販薬などでは治癒が難しいとされています。ここで正しい知識を身につけ、きちんと専門医にかかるようにするとよいでしょう。
※この記事はMedical DOCにて『「痔瘻(じろう)」とは?症状・原因・手術についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
痔瘻の治療方法
痔瘻と疑った場合の受診の目安が知りたいです。
- 痔瘻は、痔に分類される病気の中でも分かりやすく症状が出る病気です。肛門の周囲が腫れて熱感がある・痛む等の症状に加え、38℃を超える発熱や膿の排出がみられたら、早急に医療機関を受診するようにしましょう。
- 直腸から外側の皮膚にトンネルが貫通し膿が排出される痔瘻はもちろん、その前段階である肛門周囲膿瘍(肛門付近の皮膚の下に膿がたまっている状態)も、市販薬での治療は行えません。膿の排出がみられれば確実ですが、肛門付近の痛みや腫れのみであっても医療機関を受診するのがおすすめです。
痔瘻の診断方法を教えてください。
- 前述の通り、痔瘻ではかなり特徴的な症状が出るため診断は容易です。肛門付近の皮膚から膿が排出されていれば、ほぼ確実に痔瘻と診断されるでしょう。ただし痔瘻はそのトンネルの形状により「浅部痔瘻」と「深部痔瘻」の2種類に分けられます。
- 浅部痔瘻はその名の通り浅い部分に膿のトンネルができる痔瘻で、痔瘻の6割ほどを占めます。直腸からほとんどまっすぐに穴が開き、ごく軽いものであれば処方薬による治療が可能です。
- 対して深部痔瘻は皮膚から遠い部分にトンネルが通っている痔瘻で、外側に排出口が開かないものや肛門括約筋を通過してしまうものなどがあります。特に肛門括約筋よりも上部(頭側)にある肛門拳筋の上を通過するようなものは、発症はごく稀ですが人工肛門などが必要になる場合もあり、慎重な判断が必要です。
軽度な痔瘻の治療方法が知りたいです。
- 膿の量が少なく、また自然に排出され切った場合の初期の痔瘻であれば抗菌薬の服用で様子をみる場合があります。ただし膿の排出に血が混じり、ただの出血と勘違いして放置してしまう場合もあるため、投薬治療で完治できるほど初期の発見は難しいです。痔瘻は基本的に、軽度であっても手術が必要になってくる病気であり、患部を切開して膿を排出する手術処置が必要になる場合もあります。その後に痔瘻のトンネル自体に処置を行います。
痔瘻の手術について教えてください。
- 痔瘻の手術は主に2種類あり、ひとつは切開開放法と呼ばれる手法です。膿のトンネルにそって切開し、外側の皮膚や皮下軟部組織をすべて切除してから肉芽を盛る形で肛門を整えます。痔瘻の原因である肛門内のくぼみごとトンネルを取り去ってしまえるため、確実で比較的難しくない手術です。ただし痔瘻の深さやトンネルの通っているルートによっては切除範囲が大きくなり、肛門機能や見た目などに不備の出る場合もあります。
- もうひとつの手法は括約筋温存手術と呼ばれ、痔瘻のトンネルが通る肛門括約筋を削らないように行う手術です。トンネル部分をくりぬいて行うため比較的難しく入院が必須になりますが、肛門機能障害などが残りにくくなります。また上記以外の手法にシートン法と呼ばれるものがあります。痔瘻のトンネルにゴムひもを通して徐々にトンネルのみを切開・開放していく方法です。肛門の変形は少なく済みますが、治療時間が長くかかります。
編集部まとめ
今回は痔瘻という病気について、その特徴や治療方法などをまとめてきました。人に相談しづらい病気だからこそ、放置して悪化させてしまうこともあるかもしれません。
特に痔瘻は、自然治癒や市販薬での治療ができない病気です。気になることがあれば放置せず、きちんと専門の医療機関を受診してくださいね。