「口唇口蓋裂」とは?特徴について解説!【医師監修】
公開日:2025/05/10

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は、赤ちゃんの上くちびるや上あごがふさがっていなかったり、割れがあったりする先天的な病気です。
古くは大人になってもその症状が残っていることが多かったですが、最近は手術やリハビリによって治療が可能となりました。
適切な治療を受ければ、治療跡も目立つことなく、口や鼻の機能も健康な人と変わらないくらいで回復することができるようになっています。
今回は口唇口蓋裂の特徴を解説いたします。
※この記事はMedical DOCにて『「口唇口蓋裂」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
口唇口蓋裂の特徴
口唇口蓋裂はどのような病気ですか?
- 上くちびるや上あごに割れが見られる先天的な異常を指します。
- 上くちびるに割れがあることを口唇裂、上あごに割れがあることを口蓋裂としていますが、実際の割れや症状の範囲は個人差が激しく、両方の症状を併発していることも多いです。
- 日本人では約500人に1人がこの病気とされています。
口唇口蓋裂の原因を教えてください。
- 妊娠後、赤ちゃんがお腹の中で発育していくなかで、上くちびるや上あごの形成に異常が起こることが原因です。
- 異常の原因の大半は多因子遺伝と考えられており、ひとつの遺伝子ではなく、複数の遺伝子や、お母さんの生活習慣など環境要因が関係していると見られています。しかし多くの場合、はっきりとした原因はわかっていません。
- もし身内に同じ症状の人がいる場合は症状の遺伝の可能性も指摘されていますので、次のお子さんをお考えの方は主治医と相談されるといいかもしれません。また次のお子さんを妊娠した際は、再発を防ぐために葉酸の摂取をすすめられることがあります。
どのような症状がみられますか?
- 口唇口蓋裂は、上くちびるに割れが見られる口唇裂と、上あごに割れが見られる口蓋裂の両方を指します。
- 口唇裂は、両方の鼻の穴の下に位置するくちびるが割れている両側性、片側だけの片側性、また割れが鼻にまで達しているかどうかで、完全性・不完全性に分けられています。
- また口蓋裂も、裂が軟口蓋のみのもの・硬口蓋に及んでいるもの・くちびるや歯ぐきにまで達しているものなど、色々なタイプがあります。
口唇口蓋裂にもいくつかの種類があるのですね。
- この病気でよく見られるのは、以下の4タイプです。
- 上くちびるが鼻にかけて割れている口唇裂
- 上くちびると歯ぐきの両方が割れている口唇顎裂
- 上くちびると上あごから口蓋垂まで割れている口唇口蓋裂
- 上あごのみが割れている口蓋裂
- それぞれ症状が現れる箇所や範囲が異なりますので、それに合わせて治療方法や手術回数が決められます。症状によっては形成外科だけでなく、歯科や耳鼻咽喉科と協力して治療を進めていくことになります。
編集部まとめ
口唇口蓋裂は妊娠中のエコー検査か、生まれてすぐに発覚する先天性の病気で、上くちびるや上あごに割れが見られることが特徴です。
上くちびるに裂があることを口唇裂、上あごに裂があることを口蓋裂と呼び、裂の範囲や症状は大きく個人差があります。
場合によっては顔貌障害のほか、耳の聞こえや言語障害、歯並び・咬合不全にまで症状が及ぶケースがありますので、複数の診療科で長期的な手術・リハビリを行うことが必要です。
ただ現在の医療では、適切な治療を受ければ、見た目や各機能はしっかりと回復することができます。
この病気の手術は生まれてすぐに開始され、青年期に渡って数回実施されることがあります。
口唇口蓋裂を持つお子さんに対しては、生まれてすぐ診察を受け、発育に合わせて適切な治療を受けさせることが大切です。
参考文献