「水俣病」はどのように診断されるかご存じですか?【医師監修】

水俣病とは、熊本県水俣湾で昭和31年に初めて確認された公害病です。
水俣湾周辺の化学工場から排出されたメチル水銀が、海産物を通して人体に入ることで神経系に障害をもたらす中毒系疾患で、長きに渡り原因不明の奇病として多くの人を苦しめました。
第二水俣病・四日市ぜんそく・イタイイタイ病とともに日本の四大公害病と呼ばれており、その被害に苦しむ人は令和になった今日でも存在し、この病気の認定を巡ってたくさんの訴訟が行われています。
今回は環境汚染の反省として、今でも注目されている水俣病が発生した原因から症状、予後とこの病気の現在について紹介していきます。
※この記事はMedical DOCにて『「水俣病」とは?症状・原因・対策についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
水俣病の診断と治療
水俣病はどのように診断されますか?
- この病気の診断には、まず熊本県・鹿児島県・新潟県のメチル水銀による公害が確認された地域で、魚介類を食べていたり、漁業に従事していたりしたなどの病歴の確認が必要です。
- また赤ちゃん筆やへその緒を用いて、幼少期に摂取したメチル水銀の量を測量する方法もあります。
- 診察としては一般的な神経診察を行い、必要によっては感覚障害の検査も行います。
「水俣病認定患者」について教えてください。
- 水俣病認定患者とは、国が水俣病の症状であると認定した患者のことで、「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づいた判断条件によって認定作業が行われます。
- 認定患者になると関連機関から慰謝料や医療費、その他様々な手当が受けられます。
水俣病には治療方法がないと聞きます…。
- メチル水銀による中枢神経系の障害は治療することができません。
- よって、治療としては神経機能の回復や、損傷を受けていない部分の機能を最大限発揮させるためのリハビリテーションが主となります。
- また患者が痛みを訴えている場合は、痛みの緩和のため鍼や灸を使った治療を行うこともあります。
編集部まとめ
水俣病は化学工場の排水に含まれるメチル水銀が海産物を通して人体に取り込まれ、中枢神経系に障害を及ぼす公害病です。
その症状は様々で、生まれた時からしびれや言語障害に苦しむ人もいれば、大人になってから転びやすくなったり、足がつりやすくなったりする人もいます。
また国から水俣病と認定されれば手当や医療費補助が受けられますが、認定基準はハードルが高く、認定されないまま症状に苦しんでいる方もいるのが現状です。
決して過去の病気であるとは思わず、現在も継続されている水俣病患者へのサポートや公害対策の取り組みに目を向けることが大事です。
水俣病への理解をきっかけに、公害の防止や環境汚染の対策へ目を向け、公害病発生を防ぎましょう。