「クッシング症候群」ホルモンの過剰分泌により体に不調をきたす病の検査とは?【医師監修】

クッシング症候群とは、副腎から分泌されるコルチゾールとよばれるホルモンが過剰に分泌されることにより、高血圧・耐糖能異常(糖尿病)・骨粗鬆症・月経異常・うつ傾向・体重増加などの臨床的な症状があらわれる病気です。
副腎から分泌されるホルモンの中で最も重要なのがコルチゾールといわれており、コルチゾールにはあらゆる生体機能をサポートする役割があります。コルチゾールは少なすぎても多すぎても人体に影響を及ぼすとても繊細なホルモンです。
今回はクッシング症候群について、症状や治療法を詳しくみていきましょう。
※この記事はMedical DOCにて『「クッシング症候群」ってどんな病気?症状についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
クッシング症候群の検査方法は?
クッシング症候群で行う検査方法は何ですか?
- まず最初に血液検査で血液内のコルチゾールやATCHといわれる副腎皮質刺激ホルモンの濃度を検査したり、場合によっては尿検査でコルチゾールの量を調べたり腹部CTなどの画像検査を行うこともあります。そしてコルチゾールの血中量をより詳しく調べられる検査が「デキサメタゾン抑制試験」です。
主な検査内容の詳細を教えてください。
- デキサメタゾン抑制試験とは、デキサメタゾン(デカドロン)という薬を内服し、コルチゾールとACTHの値の変化をみていく検査です。下垂体から分泌されるACTHから副腎へと指令が送られコルチゾールは作られるのですが、コルチゾールと同じ効果のあるデキサメタゾンを内服すると身体はコルチゾールの量が十分だと判断し、ACTHから副腎への指令が送られなくなります。通常であればデキサメタゾンを服用することでコルチゾールが生成されなくなり低下します。
- クッシング症候群の場合は違います。クッシング症候群では、大量のデキサメタゾン投与によって、血中のコルチゾール値が低下するものが、脳腫瘍などの原因(クッシング病)、副腎の腫瘍がある方は、デキサメタゾン服用後も副腎腫瘍からコルチゾールが生成されるため、ACTHの値は変化ないあるいは高値になりますがコルチゾールの値は高いままです。
- この検査をすることでクッシング症候群であるかどうかの確定診断ができます。
検査はどのくらい時間がかかりますか?
- 血液検査や尿検査のみの場合、検査にはそれほど時間がかからず、検査結果もすぐに出る場合が多いです。
- しかし、デキサメタゾン抑制試験を行う場合は前日の夜にデキサメタゾンを内服し、次の日に数回の血液検査をするため通常1~2日の時間が必要です。
- また、デキサメタゾン抑制試験は結果が出るまでに1週間程度の時間を要します。
編集部まとめ
クッシング症候群を早期発見するには、身体の状態に目を向け、満月様顔貌や野牛肩・中心性肥満などがないかを観察する必要があります。
クッシング症候群は、発症する主な原因が副腎腫瘍や下垂体腫瘍であるために予防が難しい病気で、予防に努めるよりも早期発見・早期治療をすることが大切です。
コルチゾールの過剰分泌を放置すると、免疫力の低下・感染症の併発・脳卒中や虚血性の心疾患にかかりやすくなり、命の危険もあります。
「最近顔が丸くなった」「血圧・血糖のコントロールがうまくいかない」「手足が細くなっているのに体幹には脂肪がついている」「年齢の割に骨密度が低い」「手や足に力が入らなくなってきた」などの身体的症状がみられる場合は、早めに医師に相談しましょう。
参考文献