日本人が罹りやすい「ナルコレプシー」とは?治療法について解説!【医師監修】
公開日:2025/06/29

ナルコレプシーとは睡眠障害の1種です。日中いきなり居眠りを繰り返す、一見怠けているようにも見える病気です。
学業や仕事にも差し障り、なによりも周りの理解が得られないことが大きな苦痛になります。
自分ではコントロールができない眠気のため、仕事や日常生活にも制限がかかります。
そのため、会社勤めの場合は退職を余儀なくされることも少なくありません。ここでは、ナルコレプシーという病気を解説します。
また、ナルコレプシーの患者さんが日常生活を送るためのポイントも解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「ナルコレプシー」とは?原因についても詳しく解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
工藤 孝文(工藤内科)
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みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
目次 -INDEX-
ナルコレプシーは周囲の理解を得るのが難しい
どのくらいの人がナルコレプシーに悩んでいるのですか?
- 日本においてナルコレプシーの発症は、約600人に1人(約0.16%)と報告されています。
- 全ての人種に発病しますが、世界中で1番有病率の高いのが日本です。欧米での発症率は4,000人に1人(約0,025%)のため、日本人の有病率が高いことが判ります。
- 発症年齢は10代が多く、ピークは14~15歳です。
- 男女関係なく発病すると考えられていますが、医療機関で実際に治療を受けているのは男性が多くなっています。これは、男性が会社などで、居眠りをして指摘を受けることが要因です。
「居眠り病」と聞くと、あまり良いイメージがありません…
- 睡眠発作は退屈な会議や授業、長距離の運転中など単調な時間に起こりやすくなります。そのため「居眠り病」と呼ばれます。
- 「なまけもの」などのレッテルを貼られ、社会的に誤解や偏見にさらされやすい病気です。また、本人も病気と自覚していない方も少なくありません。
- 医療機関を受診しても、睡眠障害の専門医でなければ「眠れないのは問題があるが、眠れるのなら大丈夫だろう」というような無理解な診断をされることもあります。
- 正しい処置をすれば怖い病気ではないため、専門医にかかることがおすすめです。
本人も病気と気づくのは難しそうですね。
- 発症ピークは14〜15歳です。本人が病気と自覚していないことが多く、発症から診断までの期間が平均15年と報告されています。
- つまり、中学生のときに発症して、30歳頃に初めて受診するということです。学生時代に「よく居眠りをする」といわれ、社会人になって「病気ではないのか」と指摘をされて受診するといったケースが多いと推察されます。
- ナルコレプシーは約600人に1人(0.16%程度)と珍しい病気ではありません。認知度向上のため、日本ナルコレプシー協会は全国の中等学校・高等学校に向けてパンフレットを配布しています。
- 病気との自覚がないまま社会人になり、運転中に睡眠発作を起こすなどのリスクを防ぐ必要があります。
治療法はあるのですか?
- ナルコレプシーは、原因が解明されていない病気です。そのため、根本的な治療法はありません。
- 一般的な治療法は規則正しい生活をして、薬で眠気をコントロールするというものです。
- ナルコレプシーは昼に居眠りをする反面、夜はよく眠れないという病気です。そのため、夜には睡眠誘導剤を、昼には入眠幻覚などを抑える薬を処方します。
- 症状が軽い場合は、薬を用いずに規則正しい生活と昼寝することで、症状の改善が可能です。軽症の方なら、日中に1〜2回の昼寝をするだけで、格段に楽になることもあります。
- 理解のある職場では、30分程の短時間の昼寝を許可してもらっているケースもあります。逆にいうと、理解のない職場でナルコレプシーの患者さんが働くのは困難です。
編集部まとめ
ナルコレプシーは命に別状はなく、「眠れるのだから問題ない」という医師もいるほどです。しかし、患者さん本人には特有の悩みや苦しみがあります。
さらに「居眠りでしょ」という、周りの理解の無さが追い打ちをかけます。完治する可能性は低く、発症から10年20年と治療が続くケースが多いのも苦痛です。
しかし、きちんと専門医にかかり、通院を続けていると上手に病気と付き合っていくことも可能です。
また、10年も治療を続けると半分近くの患者さんが、薬がいらない程度に改善すると報告されています。
まずは信頼できる睡眠障害の専門医に相談をしましょう。