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「お酒」は薬か毒か? 健康的な飲酒との正しい距離感と適量飲酒を医師に聞く

 公開日:2025/06/27
お酒の適正量

「1日20gまでなら大丈夫」厚生労働省の飲酒ガイドラインでも触れられるこの数値、実は統計上の見かけの結果にすぎない可能性があります。飲酒ゼロの人の中には、すでに病気でお酒を断たれている人も含まれているため、統計が本来の意味を歪めてしまっているのです。では、本当に体にいいお酒の量とは? 飲酒と健康リスクの本質について、山本先生に解説していただきました。

山本 久文

監修医師
山本 久文(山本医院)

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杏林大学医学部卒業。杏林大学医学部付属病院第三内科研修後、朝日生命成人病研究所附属病院にて臨床経験を重ねる。1992年、東京都荒川区の山本医院を継承。2007年には医療法人社団久悠眞会へ法人化。「患者さんのために」というモットーを、医院の随所へ反映させている。医学博士。日本内科学会認定医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医の資格を有する。

編集部編集部

厚労省の1日平均20g説に根拠はあるのですか?

山本先生山本先生

たしかに、「男性の場合、1日平均20gほどの飲酒者による死亡リスクが最も低かった」という研究はあります。飲酒量ゼロの方のほうが“見た目上”、死亡に結びついているのです。しかし、飲酒量ゼロの方の中には、すでに重大なアルコール性肝障害が起きていて、強制的にお酒を禁じられている症例も含まれます。このグループが死亡リスクを押し上げていると見るべきで、結論としては、「飲酒そのものが害」といえるでしょう。

編集部編集部

つまり、統計上のトリックであると?

山本先生山本先生

言い方はお任せしますが、少なくとも「飲酒量ゼロが最もいい」に決まっています。ただし、リラックスできるとか会話が弾むなど、アルコールならではの効能もありますよね。そこで、「許容量」という概念が生じているのではないでしょうか。

編集部編集部

お酒が「百薬の長」といわれるのも、わかる気がします。

山本先生山本先生

ただし、それを「飲む口実」にされては困りますよ。飲むか飲まないかで言えば、飲まないほうが確実にいい。ただし、アルコールが好きな方にとって、飲酒ゼロというのもいかがなものか。ストレスや生活の質という意味では、少しくらい目こぼしする隙があってもやむなしと考えています。

編集部編集部

それは困りました。お酒は薬なのでしょうか、害なのでしょうか?

山本先生山本先生

血液検査をしても肝障害が診られない、世間に迷惑をかけない。それが「適量」の意味するところです。そして適量は、人によって異なります。アルコールが好きな方は、いくらでも理由を付けるんですよね。「付き合いだから仕方ない」とか「飲みニケーションが必要だ」とか。「百薬の長」もその類いで、適量を超えたら「害」であることは間違いありません。

編集部編集部

しかし、お酒には血管を広げる働きがあると聞いたことがあります。

山本先生山本先生

それこそ、典型的な「理由付け」です。たしかにアルコールを取ると、一時的に血管が広がります。かといって、アルコールで血管を広げる必要性は、どこにもないわけです。お薬でも広げられますからね。それに、アルコールが切れたら、血管は再び縮まります。血管を広げるために1日中飲んでいるなんてナンセンス。とにかく「理由付け」のワナにはまらないことが重要でしょう。

※この記事はメディカルドックにて【「休肝日」をつくれば、お酒をいっぱい飲んでも大丈夫?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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