「お酒」は薬か毒か? 健康的な飲酒との正しい距離感と適量飲酒を医師に聞く

「1日20gまでなら大丈夫」厚生労働省の飲酒ガイドラインでも触れられるこの数値、実は統計上の見かけの結果にすぎない可能性があります。飲酒ゼロの人の中には、すでに病気でお酒を断たれている人も含まれているため、統計が本来の意味を歪めてしまっているのです。では、本当に体にいいお酒の量とは? 飲酒と健康リスクの本質について、山本先生に解説していただきました。

監修医師:
山本 久文(山本医院)
編集部
厚労省の1日平均20g説に根拠はあるのですか?
山本先生
たしかに、「男性の場合、1日平均20gほどの飲酒者による死亡リスクが最も低かった」という研究はあります。飲酒量ゼロの方のほうが“見た目上”、死亡に結びついているのです。しかし、飲酒量ゼロの方の中には、すでに重大なアルコール性肝障害が起きていて、強制的にお酒を禁じられている症例も含まれます。このグループが死亡リスクを押し上げていると見るべきで、結論としては、「飲酒そのものが害」といえるでしょう。
編集部
つまり、統計上のトリックであると?
山本先生
言い方はお任せしますが、少なくとも「飲酒量ゼロが最もいい」に決まっています。ただし、リラックスできるとか会話が弾むなど、アルコールならではの効能もありますよね。そこで、「許容量」という概念が生じているのではないでしょうか。
編集部
お酒が「百薬の長」といわれるのも、わかる気がします。
山本先生
ただし、それを「飲む口実」にされては困りますよ。飲むか飲まないかで言えば、飲まないほうが確実にいい。ただし、アルコールが好きな方にとって、飲酒ゼロというのもいかがなものか。ストレスや生活の質という意味では、少しくらい目こぼしする隙があってもやむなしと考えています。
編集部
それは困りました。お酒は薬なのでしょうか、害なのでしょうか?
山本先生
血液検査をしても肝障害が診られない、世間に迷惑をかけない。それが「適量」の意味するところです。そして適量は、人によって異なります。アルコールが好きな方は、いくらでも理由を付けるんですよね。「付き合いだから仕方ない」とか「飲みニケーションが必要だ」とか。「百薬の長」もその類いで、適量を超えたら「害」であることは間違いありません。
編集部
しかし、お酒には血管を広げる働きがあると聞いたことがあります。
山本先生
それこそ、典型的な「理由付け」です。たしかにアルコールを取ると、一時的に血管が広がります。かといって、アルコールで血管を広げる必要性は、どこにもないわけです。お薬でも広げられますからね。それに、アルコールが切れたら、血管は再び縮まります。血管を広げるために1日中飲んでいるなんてナンセンス。とにかく「理由付け」のワナにはまらないことが重要でしょう。
※この記事はメディカルドックにて【「休肝日」をつくれば、お酒をいっぱい飲んでも大丈夫?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。