原因不明の胸の痛みの正体はストレス「心臓神経症」の検査と治療法とは【医師解説】

緊張やストレスで心臓が痛くなることは、経験がある人も多いのではないでしょうか。少し経てば自然と症状が消えるため、あまり気にしないと思いますが、じつは疾患のサインかもしれません。今回は、緊張やストレスによる心臓の痛みに対する検査方法や治療法などについて、「KENカルディオクリニック柏」の中村先生に解説していただきました。

監修医師:
中村 賢(KENカルディオクリニック柏)
編集部
心臓神経症が疑われるときには、どのような検査がおこなわれるのですか?
中村先生
問診のほか、胸部レントゲン検査、心電図検査、負荷心電図検査、心臓部エコー検査などで異常がないか調べます。発作が頻繁に起きる場合は、ホルター心電図検査という24時間、心電図を記録する検査を推奨します。
編集部
治療法はあるのですか?
中村先生
自律神経が原因となっているため、まずは緊張を抑えることが必要です。そのため、私が治療をおこなう際には主に漢方薬を使用し、交感神経による心臓の緊張を落ち着かせます。具体的には、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」や「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」などの漢方薬を使用します。即効性はそれほどありませんが、2週間くらい服用すると効果が出てきて、その後も効き目が持続する特徴があります。
編集部
西洋薬を使うケースもあるのでしょうか?
中村先生
あります。漢方薬であまり効果がみられない場合、あるいは即効性を期待したい場合には、交感神経の働きを抑えて心臓を少し休める「β遮断薬」や、不安感などを軽減する「抗うつ薬」などを用いることもあります。
編集部
投薬以外にも治療法はありますか?
中村先生
必要に応じて、精神科医やカウンセラーによるカウンセリングをおこなうこともあります。ただし、まずは心臓に異常がないかどうか的確に診断することが大切です。緊張したときやストレスが強いときなどに胸が激しく痛むという場合は、できるだけ早く循環器内科や心臓血管外科を受診しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中村先生
心臓神経症は決して珍しい疾患ではなく、比較的若年層に多くみられます。「現代病」と言っても過言ではありません。とくに新卒の社会人などは生活環境がガラッと変わる時期で、ストレスを感じやすいので要注意です。また、最近ではコロナ禍でリモートワークをしていた人が会社に出勤するようになったことでストレスを感じ、心臓神経症を発症する人も少なくありません。「そのうち治る」と考えて放置されることも多いのですが、もしかしたらほかの疾患が隠れているかもしれません。「胸が痛い」「締めつけられる」などの症状を自覚した場合には、必ず医療機関を受診しましょう。
※この記事はメディカルドックにて<「心臓が痛い」のは緊張やストレスが原因? 対処法や診断基準を医師が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。