ぐっすり眠れてますか? 医師がすすめる睡眠の質を高める生活習慣とリラックス法

私たちは、1日のおよそ3分の1を眠って過ごしています。これほどまで長い睡眠時間が必要なのは、睡眠には健康を維持する重要な役割があるからです。しかし、「寝たいけれど思うように眠れない」「深く眠れたなという感じがしない」「日中の眠気がひどい」など、睡眠に関する悩みを持っている人は多いのではないでしょうか。現在、「一般成人の30%程度が不眠に関する悩みを持っている」と言われています。体内時計のリズムの乱れ、持病の影響、ストレスや悩みごとなど、不眠の原因は人によって異なります。この記事では、睡眠の質を高める方法、睡眠不足・寝すぎの解決法などについて、医師の村上先生に解説していただきました。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
編集部
睡眠の質を高めるコツがあれば教えてください。
村上先生
まずは、生活習慣の見直しから始めましょう。生活習慣が乱れてしまい、就寝時間が大きくズレると、体内時計のリズムにも影響を及ぼします。夜型生活が習慣化してしまうと、夜に寝つけず朝も起きることが難しくなります。これは「概日リズム睡眠・覚醒障害」という病的な状態であり、治療が必要になります。このような場合には、朝の決まった時間に光を浴びましょう。太陽光を浴びることで体内時計の周期を保つことができます。
編集部
生活習慣ということは、食事や運動も睡眠の質と関係しているということですか?
村上先生
もちろんです。体内時計のリズムを整えるためには、1日3回の食事をできるだけ決まった時間にとることも必要です。夕食は就寝前の3時間以上前に済ませることで、消化酵素の分泌が増えて消化が良くなり、眠りやすくなります。また、日中に適度な運動をおこなうことも深い眠りを促す効果があるためおすすめです。夜間の激しい運動は交感神経が優位になって眠りづらくなるため、昼から夕方にかけて運動するのがいいでしょう。加えて、就寝の1~2時間前にぬるめ(39~40度)のお湯に入浴することも試してみましょう。お湯に浸かることで深部体温が上昇しますが、それが下がってくるタイミングで寝床にいると、スムーズに寝つきやすくなります。
編集部
「カフェインやアルコールは睡眠の質を下げる」と聞いたことがあります。こちらについてはいかがでしょうか?
村上先生
まず、カフェインは夕食以降に多くとらないようにしましょう。コーヒーや緑茶、コーラ、チョコレートなどには、覚醒作用や利尿作用のあるカフェインが含まれています。夜遅くに飲んだり食べたりすると、眠りにくくなるだけでなく、夜間に尿意で起きて目が覚めてしまうこともあります。また、眠るためにアルコールを摂取するということも控えましょう。アルコールには睡眠の後半に眠りが浅くなってしまう効果があることや、利尿作用があるので夜間のトイレのために起きてしまうこともあります。
編集部
ほかにも、睡眠の質を高めるために取り入れたいことはありますか?
村上先生
自分なりのリラックス法や寝る前のルーティンを身につけましょう。「なんとなく眠れなく日が続く」ということがあると思います。そんなときには、就寝の2時間程度までに入浴を済ませて、好みの音楽を聴いたりアロマを焚いたりして、ゆっくり過ごすことで緊張感がほぐれやすくなります。布団に入ってから考えごとをすると不安や緊張が強くなるかもしれないので、考えごとはリビングでして、布団の中では気分を入れ替えてみてください。また、ちょっとした物音や明るさが気になる場合には、耳栓やアイマスクを使ってみるのもいいかもしれません。色々と試行錯誤してみて、自分なりのリラックス法や寝る前のルーティンを見つけて、実践してみてくださいね。
編集部
医療機関に受診する目安はありますか?
村上先生
病気によって睡眠障害がある場合には、その治療を検討しましょう。例えば、夜間に咳き込む喘息発作や、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。また、アトピー性皮膚炎では、かゆみがひどくて眠りが浅くなることもあります。このように睡眠障害を引き起こす病気はたくさんあるため、症状を自覚している場合は医療機関に相談することをおすすめします。また、上記のような気づきやすい症状がなくても「1週間のうち3日間以上の不眠症状があり、それによって日中の心身の不調がある状態が3カ月以上続く」という場合は、慢性不眠障害が疑われるため受診が必要です。3カ月未満であっても、「昼間に眠気やだるさがある」「意欲や集中力が低下している」「気分が落ち込んでいる」などの症状があれば、早めに治療をおこなう必要があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
村上先生
なんらかの病気の治療で通院している場合には、不眠の原因が内科的な病気による影響も考えられるため、まずはかかりつけ医に相談してもらうのがいいでしょう。「いびきがひどい」「睡眠中に足がバタバタと動く」「悪夢にうなされることがある」などの症状がある場合には、睡眠の専門医を受診して相談することをおすすめします。ひどい歯ぎしりがある場合には、歯科医院に相談するのもいいでしょう。
※この記事はメディカルドックにて<医師が教える「理想の睡眠時間」あなたは寝不足? それとも寝すぎ? 1日8時間説の真実>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。