「鉄欠乏性貧血」の薬の副作用とは? 治療する際の注意点も医師が解説!

貧血に悩む方はとても多いようです。 そこで今回は貧血の中でも特に多い「鉄欠乏性貧血」の治療薬の注意点を渡邉 健先生(ハレノテラスすこやか内科クリニック 院長)にMedical DOC編集部が伺いました。

監修医師:
渡邉 健(ハレノテラスすこやか内科クリニック)
編集部
鉄欠乏性貧血の薬の副作用について教えてください。
渡邉先生
内服薬の場合は、10~20%くらいの患者さんに吐き気や便秘、腹痛、下痢などの消化器症状が生じます。最大で70%に副作用が生じるという報告もあるほどです。一方、新薬の「リオナ®」は下痢の発現頻度は変わらないものの悪心、嘔吐が約3分の1に減少しており患者さんの負担が大幅に減っています。もし副作用がみられた場合は、内服時間や回数の変更(2日に1回の内服)、インクレミンシロップ🄬などで少量投与する、などの対応が考えられます。
編集部
注射剤はどうですか?
渡邉先生
静脈注射では内服薬では起きない「鉄過剰症」を起こし肝臓、腎臓、心臓、すい臓などの機能が落ちることがあるため注意が必要です。慢性腎臓病の患者さんでは「フェインジェクト®」といった大量鉄製剤は合併症や感染症のリスクを増加させる、という報告もあります。また、「フェジン®」「フェインジェクト®」には低リン血症、「モノヴァー®」には注射後反応(発熱やじんま疹)という独特な副作用もあるため患者さんにあった治療を選択することが重要です。
編集部
ほかに、治療の際、注意することなどはありますか?
渡邉先生
鉄分の補充は、貧血が回復した後も続ける必要があります。鉄欠乏性貧血の治療は、血液内の鉄を回復させるだけでは不十分で、血清鉄、さらに貯蔵鉄(フェリチン)が回復するまで行うのが大事です。鉄欠乏性貧血は鉄の借金をしている状態ですので、貧血から回復し、貯金ができるまで治療を続けないと簡単に借金生活に戻ってしまいます。体調が良くなっても粘り強く治療を続けましょう。
編集部
あらためて、どのように鉄欠乏性貧血と向き合えばいいですか?
渡邉先生
鉄欠乏性貧血で一番大事なことは原因の評価です。何も原因のないところから鉄欠乏にはなりません。がんなど重大な疾患が隠れていないかしっかりと評価することが重要です。なお、何か月にもわたって鉄を処方されている貧血の患者さんについては本当にその診断が正しいのか、血液内科に相談することをおすすめします。
※この記事はMedical DOCにて<【血液内科医に聞く】『鉄欠乏性貧血』原因は? 治療方法や最新薬についても解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。