「前立腺がん」の放射線療法は完治する? 効果・治療後の転移や再発リスクを医師が解説!

社会の高齢化とともに増加し続けている前立腺がん患者数。近年では前立腺がんに対する治療法も進化しており、早期に発見すれば治ることも多いとされています。今回は前立腺がんの放射線療法の効果・治療後の転移や再発の可能性についてあらい泌尿器科の新井先生にMedical DOC編集部が聞きました。

監修医師:
新井 学(あらい泌尿器科)
編集部
放射線療法の効果はどれくらい期待できるのですか?
新井先生
放射線療法の効果は手術と同じくらいと考えられており、根治を目指すことが可能です。
編集部
合併症のリスクはありますか?
新井先生
外照射療法の場合には、前立腺だけでなく周辺組織にも放射線が当たるため、直腸粘膜の潰瘍や出血、排便回数の増加、下痢、血尿、頻尿、排尿時痛などの副作用が生じることがあります。一方、内照射療法は外照射療法と異なり、周辺の臓器に照射するのをかなり抑えることができるので合併症が少ないとされていますが、前立腺部の尿道に放射線が当たるため、排尿時痛や頻尿などのいわゆる尿道刺激症状が起きることがあります。
編集部
放射線療法を受けたあとはどうなるのですか?
新井先生
放射線治療が終了した後も定期的にPSAの数値を測定します。照射後にPSA値が「治療後の最低値+2ng/ml」以上、上昇した場合には再発が疑われ、その場合にはホルモン療法が推奨されています。ただし、再発までの期間が長く、転移が見られない場合などは経過観察が選択されることもあります。
編集部
再発しても経過観察することがあるのですね。
新井先生
はい、前立腺がんの進行は非常に緩徐であり、再発してもその後のペースはゆっくりであることが少なくありません。そのため、特にご高齢の方にはあえて治療を行わないこともあります。最終的にはケースバイケースで判断しますが、患者さんのQOLを優先して対応を検討します。
編集部
あらためて、どのように前立腺がんと向き合えばいいですか?
新井先生
近年、前立腺がんの手術では手術支援ロボットを使用することも増えており、体に負担の少ない低侵襲手術が普及し始めています。その一方、放射線治療も手術と治療成績がまったく変わらないことが科学的に立証されています。放射線療法もロボット手術同様、体に影響が少ないため、どちらの治療法を選択されても良いと思いますが、放射線治療を選択する場合に気をつけたいのは、「その医療機関がどんな治療機器を所持しているか?」ということです。放射線治療は確かに優れた治療法ですが、実際は、どの機器を使うかによって治療効果に差が出ます。たとえば、三次元原体照射治療(3D-CRT)と定位放射線治療では治療成績が異なりますし、ほかの治療法もそれぞれに特徴があり、治療成績に違いが出ます。放射線治療を検討する際には、その医療機関がどの治療機器を所持しているのか確認し、それらの治療成績などを比較しながら選択すると良いでしょう。
※この記事はMedical DOCにて<「前立腺がん」の放射線治療にリスクはない? 手術とどっちが良い?【医師解説】>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。