「白内障手術」のリスクはご存じですか? 手術の流れや術後の注意点も眼科医が解説!

「白内障」は、加齢を代表とするさまざまな原因で発症し、視力が低下する・目がかすむなどの症状が起こる病気です。年齢を重ねると大半の方が「白内障」を発症するようですが、手術での治療が可能です。そこで今回は、白内障の手術について眼科医の長谷川 裕基先生(はせがわ眼科院長)に伺いました。

監修医師:
長谷川 裕基(はせがわ眼科)
編集部
白内障手術について詳しく教えてください。
長谷川先生
事前に眼内レンズの度数を決めるための検査などをおこない、手術3日前から術後感染予防のための抗生剤を点眼していただきます。手術は、多くの場合は麻酔後、角膜わきに2~3mmの小さな切れ込みを入れ、濁った水晶体を超音波装置で乳化・吸引、人工の眼内レンズを入れて固定します。特別なことがなければだいたい10分程度ですべて完了します。硬い白内障では、超音波装置を使用せずに一塊で水晶体ごと取り除くこともあります。
編集部
術後についても教えてください。
長谷川先生
手術後は眼帯をして、必要な方は帰宅前にリカバリールームで休んでいただくこともできます。翌日再診していただき、眼帯を外して目の状態を確認し、その後は間隔をあけて定期的な診察を行います。必須ではありませんが、目を触ってしまう心配がある方、ホコリっぽい環境にいることの多い方などにはご希望に応じて保護用のメガネを使用頂くことができます。
編集部
手術の際、注意する点などはありますか?
長谷川先生
手術では、緊張されてしまう方が多いので、リラックスして頂くことが大事です。目を開く器具は使用しますが、なるべく目を閉じない、目を動かさないようにすることが重要です。痛みを強く感じる手術ではありませんが、もし何かあった場合も急に目を動かすことはせず、挙手や声で教えていただくようお願いしています。また、術後は、感染を防いで炎症を改善させるために数種類の点眼をしてもらいます。そして状態の観察のためのこまめな診察も重要です。
編集部
手術のリスクなども気になります。
長谷川先生
合併症として最も怖いのは「術後眼内炎」です。手術中もしくは手術後に菌が目の中に入り感染してしまう状態です。この場合、いち早く目の中を洗う手術をすることが重要です。ほかには、目の中の血管に何らかの圧力がかかり生じる「駆逐性出血」が起こることもあります。そして「後発白内障」はよく起こり得るもので、YAGレーザーを用いて後嚢(こうのう)を切開することで改善します。ごく稀に、手術で水晶体嚢が破れ水晶体が落下する「水晶体落下」や、「眼内レンズ偏位」などが起こることもあり再手術が必要なこともあります。
編集部
ほかに気をつけることはありますか?
長谷川先生
白内障手術を受けると、目の症状が大方改善するのではと考える方もたまにいらっしゃいます。ですが、白内障の手術は先ほど述べたように、濁った水晶体を取り除いて人工の眼内レンズへ置換するだけです。飛蚊症などが治るわけでもありませんし、異物感やドライアイなどの症状が改善するわけではありません。むしろそれらの症状が悪化してしまうこともあります。
編集部
そうなのですね。
長谷川先生
また、白内障手術をすると遠くも近くも眼鏡なしで全て見やすくなると考えていらっしゃる方がいます。ですが、単焦点レンズを使用した場合は、ピントが合いにくい場所には眼鏡を必要とします。多焦点レンズなども発展し眼鏡の依存度を低くすることはできるようになってきましたが、いまだに全ての領域を絶対に不快感なく見えるレンズはありません。
※この記事はMedical DOCにて<【眼科医に聞く】白内障手術はどこで受ける? レンズにも種類がある?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。