「バセドウ病」の3つの治療法を医師が解説! 治療期間や副作用、日常生活での注意点もご紹介
「バセドウ病」の治療法は、大きく3つにわけられるのだそうです。今回は、バセドウ病のそれぞれの治療法のメリット・デメリットや日常での注意点について「とき内科クリニック座間駅前」の土岐先生に解説していただきました。
監修医師:
土岐 卓也(とき内科クリニック座間駅前)
編集部
バセドウ病の治療方法にはどんなものがありますか?
土岐先生
大きく分けて、「薬物療法」「放射線治療」「外科的治療」の3つの治療法があります。
編集部
薬物療法について教えてください。
土岐先生
初期治療では、甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑制する「抗甲状腺薬」(メルカゾール、チウラジールなど)と「ヨウ化カリウム」を併用することが多いです。抗甲状腺薬は、投与量が多いと副作用が懸念される側面があります。また、ヨウ化カリウムは即効性があるものの、数週間で効果が減弱する傾向にあります。そのため、発症初期は抗甲状腺薬を必要以上には投与せず、ヨウ化カリウムと併用して開始し、亢進している甲状腺機能を抑えることを目的に治療を行います。
編集部
薬物療法では、どのくらいで症状が改善するのでしょうか?
土岐先生
服用を開始してから1〜3ヶ月後には甲状腺ホルモン濃度は正常範囲まで低下し、症状も改善します。その後は少しずつ服用する量を減らしていき、最終的には1日1〜2錠の抗甲状腺剤を維持して服用し、TRAbが陰性になることなど、状況を鑑みて服用を中止します。治療は年単位の服用が必要になりますが、2年以上の服用が必要な場合には、放射線治療などほかの治療法を選択します。
編集部
薬物療法の副作用はありますか?
土岐先生
副作用として皮疹(ひしん)や肝機能障害、重篤なものとして無顆粒球症などのリスクがあるものがあるほか、チウラジールを長期内服する場合には、「ANCA関連血管炎」という腎炎のリスクがあります。薬物療法では、このような副作用の出現に注意しながら、治療を進めていきます。
編集部
放射線治療についても教えてください。
土岐先生
放射線を出す「ヨード」を服用する方法です。ヨードは甲状腺に取り込まれ、その放射線によって甲状腺組織を破壊して、甲状腺ホルモンの分泌量を減らすことができます。
編集部
放射線療法のデメリットはありますか?
土岐先生
デメリットとして、甲状腺の機能が安定するまでに半年程度の期間を要すること、服用後に甲状腺機能が低下してしまうことがあるほか、副作用として目の症状が出現することが挙げられます。また、妊娠中の方はこの薬を内服することができません。
編集部
外科的治療についても教えてください。
土岐先生
甲状腺を摘出する外科的治療になります。通常、1週間程度の入院が必要です。手術は、最も早く確実に治療効果が得られます。
編集部
外科的治療のデメリットは何でしょうか?
土岐先生
デメリットとして、外科的治療の痕が残ってしまうことや、合併症(出血、反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症など)が生じるリスクが挙げられます。また、再発がないように全摘除術を行うと、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になることも、そう言えるかもしれません。
編集部
治療のほかに、日常生活での注意点などがあれば教えてください。
土岐先生
バセドウ病は、ストレスによって症状が悪化することがあるので、極力ストレスを避け、規則正しい生活を送ることを心がけましょう。また、甲状腺ホルモンの数値が高い時期に激しい運動をしたり重い荷物を持ったりすることで、症状が悪化する恐れがあります。仕事や運動の再開時期に関しては、主治医と相談の上検討してください。また、喫煙している場合には薬の効きが悪くなったり、眼の症状が悪化したりしやすいので、禁煙を心がけましょう。このほか、ヨードを摂り過ぎてしまうと甲状腺機能の不安定化に繋がります。ヨードは一部のうがい薬などに含まれますので、うがい薬を使用する際は使用可能な薬か主治医に確認をして下さい。
編集部
あらためて、どのように甲状腺の病気と向き合えばいいですか?
土岐先生
多くの患者さんを診察するなか、甲状腺の病気はまだまだ認知度が低いような印象を受けます。しかし、甲状腺の病気は放置することで重症化するリスクもあるため、早期発見が大変重要です。体重がどんどん減ってしまったり動悸がしたりするなど、気がかりな症状がある場合には、早めに医療機関で検査を受けましょう。