「善玉コレステロール」が高い人のメリット・デメリットはご存知ですか?医師が解説!
血液中の善玉コレステロール(HDL)とは?Medical DOC監修医が基準値や気を付けるべき生活習慣や病気のリスク・対処法などを詳しく解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「善玉コレステロール」を増やす食べ物はご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
血液中の善玉コレステロールとは?(HDLコレステロール)
コレステロールは、血液に馴染みやすいようにアポタンパクと結合してリポタンパクという粒子になります。粒子に含まれる脂肪とたんぱく質の量によって比重が異なる5種類のリポタンパク質があり、それぞれ役割が異なります。このうちの1つが善玉コレステロール(HDL)です。HDLとは「High Density Lipoprotein」の頭文字で、高比重リポ蛋白質のことです。血液中のHDLは、余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあります。善玉コレステロールには動脈硬化や心臓病のリスクを低下させる効果があるとされています。
本記事では善玉コレステロールの役割と効果、悪玉コレステロールとの違い、そのメリットやデメリットについて順に解説していきます。
善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)の違い
善玉コレステロールは、血管壁にこびりついたコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあります。このため、動脈硬化や心臓病のリスクを低下させる効果から「善玉」と呼ばれています。
対して悪玉コレステロールには、肝臓でつくられたコレステロールを全身に運ぶ働きがあります。
悪玉という響きから有害物質のように見られがちですが、コレステロール自体は細胞膜や胆汁酸、各種ホルモンの生成に欠かせない、身体にとって必要な物質です。しかし、この悪玉コレステロールは増えすぎると血管壁に蓄積され、それが活性酸素と結びついて酸化が進むことで、血管に傷が付いたり動脈硬化の原因になります。その結果、心筋梗塞や脳梗塞、狭心症の発症リスクが高まります。
血液中の善玉コレステロールの値はどんな検査で調べるの?
血液中の善玉コレステロールの値は血液検査で調べることができます。血液検査ではHDLコレステロールという項目があります。
血液検査の善玉コレステロール(HDL)の基準値・正常値は?
血液検査で表示されるHDLコレステロールの基準値・正常値は40㎎/dl以上とされています。しかし、100mg/dlを超えると高HDLコレステロール血症とされ、動脈硬化のリスクがあるほか、肝臓がHDLからコレステロールを回収できないコレステロールエステル転送蛋白(CETP)欠損症の疑いもあり、注意が必要です。
HDL基準値(単位:mg/dl) | 40以上 |
善玉コレステロール(HDL)が高い人のメリット
善玉コレステロールが高い人のメリットとしては、血管壁にコレステロールがこびりつくことを防ぎ、動脈硬化や心臓病のリスクを低下させる効果があるほか、血管の内皮細胞の機能を改善し、血管の弾力性や拡張性を高めることもできます。
これにより、血圧や血流の調節がスムーズになり、血栓の形成や動脈瘤の発生を予防することができます。
また、善玉コレステロールは抗炎症作用や抗酸化作用も持っていることから、血管の炎症や酸化ストレスを抑え、動脈硬化の進行を遅らせることができるとされています。
善玉コレステロール(HDL)が高い人のデメリット
善玉コレステロールは、以前は高くても問題ないと考えられていましたが、近年の研究で善玉の中には悪玉コレステロールを運ぶ働きをしないものも含まれていることがわかっています。
このため、いかに善玉とは言え、値が基準を超えて高い場合、動脈硬化や心臓病のリスクが高まると考えられています。
また、善玉コレステロールが高い人は、遺伝的に酵素たんぱくが欠けているCETP欠損症であることも多く、心疾患や脳卒中のリスクが高まる可能性もあります。
「善玉コレステロール」についてよくある質問
ここまで善玉コレステロールについて紹介しました。ここでは「善玉コレステロール」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
悪玉コレステロールと善玉コレステロールの違いは何ですか?
伊藤 陽子(医師)
悪玉コレステロールとは、LDLコレステロールとも呼ばれるもので、肝臓から全身にコレステロールを運ぶ働きがあります。しかし、悪玉コレステロールが多すぎると、血管壁にコレステロールがこびりついて動脈硬化や心臓病のリスクを高めます。
善玉コレステロールとは、HDLコレステロールとも呼ばれるもので、全身から余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあります。善玉コレステロールは、動脈硬化や心臓病のリスクを低下させる効果があるとされています。
コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料として必要なものですが、適切なバランスを保つことが重要です。
悪玉コレステロールは少なく、善玉コレステロールは適度に多い状態であることが望ましいです。
善玉コレステロール(HDL)が少ないとどんな健康リスクがありますか?
伊藤 陽子(医師)
善玉コレステロール(HDL)が少ないことで考えられる健康リスクとしては、血管が硬くなる、狭くなることによる動脈硬化や心臓病、脳卒中などが挙げられます。
また、糖尿病の方は脂質異常症になりやすいため、善玉コレステロールが下がり、負の相乗効果となりますので、生活習慣を見直すようにしてください。
血液検査で善玉コレステロール(HDL)が高いのは女性に多い現象ですか?
伊藤 陽子(医師)
40才代までの女性は、ホルモンの作用により男性よりも善玉コレステロール値がおよそ10mg/dlほど高い傾向にあります。
善玉コレステロールが多いと長生きできますか?
伊藤 陽子(医師)
善玉コレステロールが多いと長生きできるかどうかは、一概には言えません。善玉コレステロールは、血管壁にこびりついたコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあり、動脈硬化や心臓病のリスクを低下させる効果があるとされています。しかし、善玉コレステロールが高すぎると、逆に心疾患やがんのリスクが上昇する可能性もあるという研究もあります。また、善玉コレステロールが高い人は、遺伝的な要因や飲酒の影響などが考えられます。
したがって、善玉コレステロールが多いだけでは、長生きできるとは限りません。
ヨーグルトを毎日食べると善玉コレステロールは増えますか?
伊藤 陽子(医師)
ヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸内の善玉菌のバランスを整えることで、中性脂肪の代謝の促進やコレステロールの数値を正常化する働きが期待できる点はあります。
ただし、ヨーグルトに含まれる糖分や添加物がかえって脂質異常症を悪化させる可能性もあります。
ヨーグルトだけで善玉コレステロールが増えるとは言い難いため、召し上がる場合は無糖かつ低脂肪または無脂肪のものを選び、他の食品とのバランスを考えて摂取するようにしてください。
善玉コレステロール(HDL)の数値が高すぎても危険なのはなぜですか?
伊藤 陽子(医師)
善玉コレステロールのすべてが悪玉コレステロールの運び屋ではないため、善玉コレステロールが多すぎても逆に動脈硬化が進む恐れがあります。他にも善玉コレステロール値が高すぎると心疾患やがんになる人が増えるとも考えられています。
まとめ 善玉コレステロールを正しく知って健康管理
コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)がありますが、適正な範囲であればそのどちらも私たちの身体にとって無くてはならないものです。
生活習慣や食習慣などによって善玉と悪玉のバランスが崩れてしまうと、血管が傷んで恐ろしい病気を招くこともあります。
健康的な生活を送るために、日頃からの定期的な健康診断で身体の状態をチェックし、適度な運動とバランスの良い食事で身体を整えていきましょう。
「善玉コレステロール」の異常で考えられる病気
「善玉コレステロール」の異常から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳血管系の病気
- 虚血性脳血管障害
腎泌尿器系の病気
内分泌代謝系の病気
- 糖尿病
- 甲状腺機能障害
消化器系の病気
悪玉(LDL)コレステロールが高いと血管が傷み、さまざまな病気を招きます。一方で善玉(HDL)コレステロールが高すぎてもまた病気のリスクが高まります。善玉を適正な範囲で高め、悪玉を減らすように生活習慣を整えていきましょう。