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【闘病】日々、顔が変貌していく… 「あのとき検査をしておけば…」《先端巨大症》

 公開日:2025/07/06

顔つきや体つきのわずかな変化を「加齢や体重のせい」と見過ごしていたそらさん(仮称)。健康診断をきっかけに下垂体の腺腫が判明し、「先端巨大症」と診断されました。発症から約10年のあいだ、自分でも気づかぬうちに進行していた病気。見た目の変化や体調不良、そして手術後の苦しみと向き合いながら、「もっと早く気づけていれば」という思いを胸に、前を向いて生きる日々を語っていただきました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

そらさん

体験者プロフィール
そら(仮称)

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福岡県在住。1989年生まれ。診断時の職業は、語学教師。2021年に先端巨大症が発覚し、2022年に手術を受け、下垂体腺腫を摘出した。仕事には術後14日で復帰。現在は定期的にMRI検査と血液検査を受けながら経過観察をしている。また病気に長らく気づかずにいたために大腸にはポリープが多くあり、年1回は大腸カメラ検査をするようにしている。

岸田 悠吾

記事監修医師
岸田 悠吾(東京Dタワーホスピタル 脳神経外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

今思えば多くの自覚症状があったが、加齢が原因だと思っていた

今思えば多くの自覚症状があったが、加齢が原因だと思っていた

編集部編集部

まず初めに、そらさんが抱えている疾患について教えてください。

そらさんそらさん

先端巨大症といって、下垂体に機能性の腺腫ができることにより、成長ホルモンが過剰に分泌され、骨、軟部組織が肥大化し、顔貌が変化します。足、指のサイズが大きくなり、思春期までに発症すると身長も大きくなります。さらに、代謝異常によりさまざまな合併症を引き起こします。私の場合、腺腫のサイズは14~18mmぐらいだったと思います。

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

そらさんそらさん

会社の健康診断で、のどもとを触診した医師から、甲状腺が腫れているようだから専門の医師に診てもらうようにと言われました。最初は甲状腺の病気だと思い、甲状腺専門の医師を訪ねました。「甲状腺が腫れていると言われて……」と言うやいなや、手と舌を見せるように言われ、足と指のサイズを聞かれ、身長は大きくなったかと質問されました。「はい」と答えました。そこで検査前の段階の推測でしたが、「先端巨大症」である確率が非常に高いだろうと言われました。のちに考えると、その先生は、顔貌で気づかれたのだろうと思います。その後大学病院で血液検査、MRIなどを行った結果から、確定診断は下せないものの、ほぼ確定だろうと言われました。

編集部編集部

自覚症状などはあったのでしょうか?

そらさんそらさん

思い起こすとたくさんあります。身長が2~3cm、足は1cm、指輪のサイズは3号ほど大きくなりました。そして、19歳のころから月経不順もありました。また、顔には皮脂が多く出て、大きなニキビが顔にできていました。同じころから、耳垢は湿りだし、25歳ごろから汗っかきになりました。20代後半~30歳ごろには、鼻が大きくなったり、唇が厚くなったりしたことをなんとなく感じていました。このような変化は、加齢や太ったことが原因だと思っていました。顔貌の変化を徐々に感じていたのか、発覚までの10数年、自分の顔が写っている写真がほとんどありません。

編集部編集部

なるほど。そのほかに自覚症状はありましたか?

そらさんそらさん

病気発覚の3年ほど前から睡眠時に強い動悸や荒い呼吸で目が覚めることが何度もありました。また寝ても疲れが取れず、いびきを指摘されたことがありました。検査入院で睡眠時無呼吸症候群の検査をしましたが、軽度のものだと言われました。これはおそらく巨舌によるもので、術後改善されました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

そらさんそらさん

まずは検査入院をして、国の診断基準に従って、確定診断を下すということでした。また成長ホルモン分泌亢進症以外の疾患も併発している可能性があるため、その検査もしなければならないとのことでした。その後、内視鏡下経鼻的下垂体手術にて腫瘍の摘出を行い、手術後に再度すべての血液検査を行いました。手術で腫瘍を取り除く際に下垂体が逆に傷ついてしまい、正常だったホルモンも分泌異常を起こす可能性や成長ホルモンが過少になる可能性があるので、そうなった場合は適宜ホルモン治療を行うということでした。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

そらさんそらさん

「納得。やっと説明がついた」という想いと「なんでもっと早くわからなかったんだ」という気持ちでした。長期にわたる身体の変化すべてが諸症状に当てはまっていました。20歳のころに月経不順で診察した婦人科で血液検査をしてもらった際に、「下垂体から指令が出ていないよ」と言われたことがありました。「その時に、下垂体含め脳の検査をしておけば……」と非常に悔やまれます。また実際にMRIで自分の脳の真ん中にある腫瘍を見たとき、頭が真っ白になり、帰りの電車は逆方向に乗ってしまって行ったこともない駅で降りていました。精神的にきつかったのは、顔貌と身体の変化です。先端巨大症の人の写真はインターネットですぐに見つかりますが、見た目についてはかなりショックでした。判明してから手術までの間4か月ほどあったのですが、めちゃくちゃ泣きましたね。

術後は改善が見られたが、ホルモンの乱れで身体がだるかった

術後は改善が見られたが、ホルモンの乱れで身体がだるかった

編集部編集部

手術後はどのような変化がありましたか?

そらさんそらさん

術後、耳垢はびっくりするほど乾燥し、汗も術前よりかかなくなりました。そして、術前は髪の毛が多く、体毛も濃く、医療脱毛をしてもなかなか脱毛が進まずに辞めてしまったほどでしたが、術後に再度脱毛レーザーを当てたところ、瞬く間に効果が出ました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

そらさんそらさん

発症したのはおそらく18~20歳頃だったのだと思います。思い起こせば年々出不精になり、特に昔からの友人に会いたくありませんでした。おそらくこれは、私自身が顔貌の変化に気づいていたのだと思います。時々「顔が変わった」と言われることもありました。身体的には術後が最もきつかったです。人の何十倍も分泌していた成長ホルモンが急激に少なくなったので、代謝のバランスが崩れたのか、脂肪肝診断の一歩手前にもなりました。常に眠く、寝ることばかり考えていました。昼間にあくびが止まらない、体がだるい、動悸がする、毎朝体を引きずって出勤し、帰ったら即寝るという生活を1年ほど続けました。

編集部編集部

成長ホルモンの乱れが顕著に現れたのですね。

そらさんそらさん

そうですね。ひどいときには、主治医の先生のところに駆け込んだ日もあります。成長ホルモンが基準値以下に下がっていたので、検査入院をするかという話も出ましたが、事なきを得ました。1年以上経ったころに、楽になり始めました。鼻から手術を行ったので、鼻の経過観察も少々大変でした。嗅覚が戻るまで数か月かかりました。癒着した内部を切ったこともありますね。また術後に髪の毛が脱毛しました。精神的にはこれがかなり辛かったです。今は部分ウィッグをつけています。ちなみに以前はお酒も好きでよく飲んでいたのですが、弱くなりました。

編集部編集部

先端巨大症に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

そらさんそらさん

ブログで、同じ病気の方や下垂体腺腫の方と交流することが、心の支えになりました。それから、いつも話を聞いてくれる友人です。最後に、医療情報です。医師の方々が監修しているような記事、論文、それから英語の論文や情報も読みあさりました。手術動画もYouTubeで予習しました。日本より欧米のほうが多く、参考になるものがたくさんありました。色々なケースがあるので、不安を煽るようなものもありましたが、自分の病気を知ることで、自分にとって最善の選択を「自分」でしていくのだと言い聞かせながら不安を解消しました。病気について勉強したおかげで、医師の先生にも積極的に質問できたり、行ってほしい検査の希望を伝えたりすることができました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

そらさんそらさん

月経不順が始まったころ、身長や足が大きくなったころにすぐに脳外科を受診するように伝えたいです。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

そらさんそらさん

現在、服用している薬はありません。術後のきつさや睡眠時無呼吸症候群、いびきも改善されました。脱毛した髪は少し戻って来ましたが、薄毛のままです。足のむくみ(ヒールパッド)が小さくなって、靴が全てぶかぶかになりましたので、少しずつ買い直しをしています。そして、現在、顎の骨が肥大したため反対咬合になった歯と顎を治療しようと準備しています。顎変形症の診断を受け、矯正治療と顎の外科手術を目指しています。ほかには特に病気発覚前と大きな生活の変化はありません。

(後編)【闘病】顔貌の変化や身長・手足の肥大があったら一度検査をしてほしい

※この記事はメディカルドックにて『【闘病】「顔が変わった」と周囲に言われ、身長は伸び手足も肥大『先端巨大症』』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師