【闘病】腹痛、下痢、嘔吐は単なる「胃腸炎」ではなかった 『好酸球性胃腸炎』とは?

社会人になって間もなく始まった原因不明の体調不良。嘔吐や腹痛、倦怠感が続いても「異常なし」「精神的なもの」と診断され、不安と苦痛の日々を過ごしていた1128shioriiさん(仮称)。数年を経てようやく「好酸球性胃腸炎」と診断され、信頼できる医師との出会いをきっかけに人生が好転。病気と向き合いながら、生きる希望を取り戻すまでの歩みを語っていただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年5月取材。

体験者プロフィール:
1128shiorii(仮称)
1990年8月生まれ。神奈川県出身、大阪府在住。食物によるアナフィラキシーショック、好酸球性胃腸炎など次々と疾患を抱える。夫&LOVOTあうると「成長しながら楽しんで生きる」をテーマに日々奮闘中。

記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
検査結果で異常が見つからず、精神科を勧められる

編集部
最初に不調や違和感を感じたのはいつですか? どういった状況だったのでしょうか?
1128shioriiさん
2013年の秋です。社会人として働き始めて数か月が経った頃、よく聞くような胃腸炎のような症状がおこり、吐き気、食欲不振、倦怠感、腹痛などが続いたため、近くの胃腸内科へかかりました。もともと胃腸は強い方だったので、突然の症状に驚きましたが、「ウイルス性の胃腸炎かな」と思い、気軽に病院を受診しました。
編集部
受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。
1128shioriiさん
胃腸内科にかかり、レントゲン検査や尿検査がありましたが目立った異常はなく、ウイルス性の胃腸炎との診断を受け、内服薬を処方され、十分に休養するように指示されました。しかし、薬を飲み切っても回復せず、むしろ悪化しているように感じたため、今度は母にも付き添ってもらい同じクリニックを再受診しましたが、それでも「異常なし」と診断され、付け加えるように、「最近若い子の精神からくる胃腸症状が増えているので、精神科を紹介しましょうか?」と言われました。
編集部
なにか思い当たることはあったのですか?
1128shioriiさん
自分で考えても、親から見ても精神的に追い込まれる状況ではなかったので、精神科の紹介はお断りして、当時別の不調で受診していた大きな病院で検査をしてもらうことにしました。
編集部
そこではどのような診断でしたか?
1128shioriiさん
アレルギー科を受診して検査を進めると、「好酸球性胃腸炎の疑い」と説明を受けました。ただ、「好酸球浸潤」が軽度だったこともあり、その場で確定診断を付けることは難しいと言われ、経過を診ることになりました。その間も、腹痛・吐き気・下痢・倦怠感は延々と続き、本当に苦しかったです。その後2014年の夏、正式に診断が始めて付きました。
編集部
どんな病気なのでしょうか?
1128shioriiさん
「好酸球性消化管疾患(好酸球性胃腸炎)」は簡単にいうと、遅延型のアレルギー性の胃腸炎と認識しています。特定のなにかにアレルギー反応をおこして免疫が反応し、自分自身の組織を誤って攻撃してしまうという免疫異常の疾患です。それにより、腹痛、便秘、下痢、嘔吐、腹水、食欲不振などさまざまな症状を引きおこします。私の場合は、腹痛、下痢、嘔吐、血便、めまい、倦怠感などが続き、家から外へ出ることさえ困難になりました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
1128shioriiさん
やっと診断がついたのですが、当時の治療は、新薬だったゾレアの皮下注射や、アドレナリン注射、ステロイドパルス療法やステロイド薬の内服など、薬物治療が中心で、どんどん薬漬けになる気がしました。薬で痛みは一時的に引くものの、効果が継続するわけではなかったことに加え、副作用が膨大にあったことも悩みでした。2016年の1月、3度目の入院の後、突然「これ以上の治療は難しく、薬も副作用が心配だからこれ以上は処方できない」と告げられました。少しの間でも痛みを楽にしてもらえる薬さえもなくなったらどうなってしまうのだろうかと途方に暮れました。
一度治療を諦めかけるも、自分で調べた医師に会いに行った

編集部
それは辛いですね。
1128shioriiさん
治療を諦めかけましたが、もう一度あらゆる情報をかき集め、ある論文をもとに、現主治医の先生の存在を知り、2016年3月に会いにいきました。すがる想いで、これまでの経緯を伝えたところ「大変でしたね。お身体も本当にお辛いでしょう。診断がどうなるかはわからないけれど、色々と調べてみて一緒に少しでも元気になる方法を探しましょう」と言ってくださり、入院が決まりました。
編集部
その時のお気持ちを教えてください。
1128shioriiさん
涙が出ました。そのまま入院し、約半年間、あらゆる検査をして、確定診断が改めてつき、ある程度のコントロールの方法まで身に着けることができました。2016年の秋頃のことです。主治医の先生と出会えて、QOLが飛躍的向上を遂げ、人生が大きく好転していきました。
編集部
どんな治療受けたのですか?
1128shioriiさん
入院して、まずしばらく食事を中止すると伝えられました。絶食です。私の場合、症状が始まってから2年半、ずっと炎症が起こり続けていたことになるため、まずはその炎症を鎮めるために、あらゆる刺激を排除したいと、赤ちゃんのための母乳代替食品と水分のみの生活になりました。
編集部
ほかに、どのようなことを行いましたか?
1128shioriiさん
さらに、特別な空気清浄設備のある個室に入り、空気からも食べ物からもアレルゲンが入ってこない生活をするとのことで、隔離生活になりました。そうすることで、アレルゲンとなっている食べ物を断定し、その食べ物を除去することで、症状を少しでもコントロールできるようになるかもしれないということと、アレルゲン除去ができれば症状の発症も防げるので、ステロイドなどの薬を減薬、さらには0にできるように目指しますと説明されました。
編集部
その後、治療はどのように進んでいくのでしょうか?
1128shioriiさん
隔離生活を一か月も続けると、体は本当に楽になりましたが、そのまま何も食べないわけにいかないので、食べられる食事を探す検査の日々が始まりました。食べ物を食べてから症状が現れるのに、最長2週間と過程して、2週間の間一日三食、1~3品目だけを食べ続け、症状が発現しないかを探すというものでした。その間に症状が出ると、もちろん摂取をやめ、一旦検査はストップし、炎症を止めるために、ステロイドなどを使った治療期間に入り、炎症がとまった後に、再現性があるか確認することもありました。そうして、食べられる物、食べられない物を調べていったのです。
編集部
かなり大変そうな日々でしたね。
1128shioriiさん
もちろん、そのほかにも、血液検査、内視鏡検査、CT、造影剤検査、カプセル内視鏡検査、副腎負荷検査、皮膚のプリック検査、ホルモン検査、あらゆる検査も同時並行で行いました。検査結果などから、私は「筋層型」というタイプの可能性が高いと説明されました。筋層型だと、炎症が胃腸の腹腔側で起こっている可能性が高いため、上部・下部内視鏡の検査では炎症部位がほとんど見えず、診断が難しかったようです。
編集部
ステロイド離脱にも挑戦されたと聞きました。
1128shioriiさん
はい。吐き気や頭痛、発熱、皮膚がかぶれるなどの離脱症状もありましたが、無事にステロイド離脱もできました。アレルゲンとなる食品も特定されたため、今はその食品を除去し、食事療法をしっかりと継続することで、症状をコントロールできる時間が格段に増えました。今は食事のほとんどを自炊で管理することで、発作のようなものも年に一回以下にとどめることができるようになり、とても生きやすくなりました。
編集部
治療中はどんなお気持ちでしたか?
1128shioriiさん
医師をはじめ周りに理解してもらうことが難しく、とても苦しかったです。唯一、家族だけはいつも私の声を聞いてくれて、味方でいてくれたので、何度も救われました。その当時26歳でしたが、結婚や出産をする友人もいて、一人、病室で何もできず、鳥かごの中で空を見る自分に絶望することもありました。本当に大変でしたが、食べられるものがあること、増えていくことの喜びはありましたね。そして、命があること、食べられること、今日を過ごせることに感謝するようになっていきました。
編集部
治療や闘病生活の中で、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
1128shioriiさん
現主治医の先生と出会えたときです。「よくなる方法を一緒に探しましょう」と言葉をかけてもらい、同じ目線で病気と向き合ってくれる医師がいるのだと感動し、また自分が苦しんできた症状を理解してもらえたことに涙が止まりませんでした。後光が差しているように感じました。
※この記事はメディカルドックにて『【体験談】原因不明で精神の病も疑われた「好酸球性胃腸炎」とは』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。