【闘病】手荒れから始まった体の異変は「皮膚筋炎」だった 受診が遅ければ大変なことに…

2018年、手の皮がめくれるほどの手荒れから始まった異変。皮膚科で処方された薬でも改善せず、やがて全身のむくみや発熱、筋力低下などが現れ、ついには自力で起き上がることも困難に。精密検査の末、「皮膚筋炎」と診断されたみゆきさん(仮称)。入院や治療、そして育児への影響………。生活が大きく変わる中でも、家族や医療者の支えを受けながら、前向きに病気と向き合う日々について伺いました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。

体験者プロフィール:
みゆき(仮称)
夫、娘1人の3人家族。病前は保育士をしていた。2018年の夏に皮膚筋炎を発症。入院後はステロイドパルス療法、免疫グロブリン療法などを実施。現在は重いものが持てない、身体のだるさがあるなど、完治してはいないものの、家事や子どもの習いごとの送迎など、ほかの主婦と同じように過ごせている。

記事監修医師:
楯 直晃(リアラクリニック 院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
皮膚筋炎と気づくまで

編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
みゆきさん
2018年の夏頃から手荒れがひどくなり、両手全体の皮がめくれるようになったんです。保湿クリームをつけても改善せず、皮膚科を受診しました。その際「掌蹠膿疱症」(しょうせきのうほうしょう)と診断され、ステロイド剤を処方してもらいました。しかし、それでも改善せず、全ての爪が根本から剥がれてしまったのです。
編集部
とくに改善することはなかったのですか?
みゆきさん
そうでしたね。3か月ほど皮膚科に通いましたが、悪化する一方でした。その後全身に蕁麻疹(じんましん)が見られ、足は浮腫(ふしゅ)で靴が入らなくなるほどむくみました。
編集部
その後はすぐに皮膚科以外の病院へ行きましたか?
みゆきさん
いいえ、足に浮腫ができたころから痛みもあったのですが、「筋肉痛かな」と思い、1か月ほど放置してしまったんです。しかし痛みは治まらず、夕方になると毎日熱も出るように。次第にドライヤーや包丁を持つのも辛くなり、階段も上がれなくなりました。その後自分でも起き上がれなくなっていました。さらに、箸をうまく持てず、食べ物が喉に詰まるようになり、「さすがにおかしいな」と。そこでようやく整形外科に行きました。受診したときに「もう少し遅ければ歩けなくなっていたかもしれない」と言われました。
編集部
それは、ただごとではないですね。
みゆきさん
整形外科でレントゲンを撮り、血液検査をすることになりました。すると、直ちに大きな病院に行くよう勧められ、そこで再度血液検査をした結果、すぐに入院することになりました。筋炎かもしれないとのことで筋電図の検査をした結果、ゴットロン丘疹(手指関節の外側にできる、かさかさした表面で盛り上がった紅斑)もみられ、皮膚筋炎と診断されました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
みゆきさん
さまざまな原因がわかってひとまずホッとしました。しかし、その後に生存率や長期ステロイドによる副作用を調べ、不安になりました。そして何より「ステロイドで骨が弱るから」と2歳だった娘を抱っこできなかったこと、2か月間も入院しなければいけなかったことがとても辛かったです。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
みゆきさん
ステロイドと免疫抑制剤で治療をしていくと説明を受けました。はじめはステロイドを飲み、その後入院中にステロイドパルス療法(ステロイドを3〜5日間点滴で投与する治療法)、免疫グロブリン療法(血液[血漿]中に含まれる免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質を点滴で投与する治療法)などを受けました。また、がんの合併症の可能性があるので、乳がん、子宮がんの検査も受けました。医師から「ステロイド治療によって骨粗しょう症になりやすくなる」と言われ、骨密度の検査も受けました。ほかにも、アレンドロン(骨粗しょう症の治療薬)を飲むにあたり、抜歯などができなくなると言われ、歯科での検査も行いましたね。
皮膚筋炎で変わってしまった日常生活

編集部
皮膚筋炎の発症後は生活にどのような変化がありましたか?
みゆきさん
運動が出来なくなり、自転車にも乗れず、娘の抱っこすら出来なくなりました。手指にはレイノー現象(冷たいものに触れると、指が白くなったり、紫になってしまったりする症状)が出現するようになったので、体を暖め、冷たいものを摂取しないようにしています。また、免疫抑制剤を飲んでいるため、入浴場や海水浴場、プールなど感染する可能性がある場所は控えるようにしました。
編集部
大きく変わってしまったのですね。
みゆきさん
ほかにも、もともと保育士をしていたのですが、感染のリスクと運動ができないという点から再就職も諦めることにしました。紫外線に当たるのもダメなので、外では肌を露出しないようにしています。また、2人目の妊娠を希望していましたが、症状の再燃や薬が原因で保留しています。しかし、どうしても諦めきれないので、もう少し薬が減ることを切に願っています。
編集部
現在の体調や生活などの様子について伺ってもよろしいでしょうか。
みゆきさん
これまでは週1回通院をしていましたが、ここ数か月は4週間に1回に減りました。とはいえステロイドが減ると熱が出てしまい、だるさがあります。それでも家事、子どもの習い事の送迎などは、ほかの主婦の方々と同じようにできています。買い物のときは重いものが持てないので、主人がいる土日に行くようにしていますね。またステロイド治療の影響で、食欲が増え以前より8kgほど増えてしまいました。今はダイエットに励んでいます。
編集部
薬の副作用などはありますか? ある場合、その薬名も教えてください。
みゆきさん
免疫抑制剤の「プログラフ」による手の震え、ステロイドによる不眠や食欲増進、「リウマトレックス」(抗リウマチ薬)による肝機能障害がありました。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
みゆきさん
やはり家族の存在ですね。娘から入院中もらった手紙はずっと飾っていました。なんでも相談に乗ってくれる薬剤師の方と話す時間も、とても励みになりました。
編集部
皮膚筋炎の症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
みゆきさん
皮膚筋炎になってから冷えに弱くなり、手の指がつったり変色したりするので、シャワーではなく浴槽に入るようにしています。また夏場でもモコモコのスリッパを履き、身体を温めることを意識していますね。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
みゆきさん
いいえ、医療従事者の方々には感謝しかありません。入院した病院では、医師2人が主治医になってくれて、とても知識もある良い先生でしたので、セカンドオピニオンを考えることもありませんでした。
※この記事はメディカルドックにて『【闘病】筋肉痛だと思っていたら皮膚筋炎だった。身体に力が入らなくなる病とは』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。