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【闘病】なんで私が…? ナゾの太ももの痛みから始まった「多発性筋炎」

 公開日:2025/06/22

多発性筋炎は、全身の筋肉に炎症が生じることで、筋力の低下や痛み、日常動作の困難を引き起こす指定難病です。完治が難しく、治療にはステロイドや免疫抑制剤が用いられますが、その副作用によって外見や体調にも大きな影響が及ぶことがあります。今回は、フラダンス教室の講師として多忙な日々を送っていたまゆさん(仮称)が、突然の発症から治療、再び教室に戻るまでの歩みを語ってくれました。病気との向き合い方、心の支え、そして「Noと言える勇気」の大切さを感じさせてくれる体験談です。

まゆさん

体験者プロフィール
まゆさん(仮称)

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北関東出身。フラダンスを学ぶためハワイに留学。ハワイインターンシップを経て現在は北関東の地元にてフラダンス教室「ハラウ・フラ・ナー・ワヒネ・オ・リコレフア」を主宰。2018年、指定難病の多発性筋炎を発症。入院、治療、リハビリの日々を乗り越え現在は通院治療を行いながらフラダンス教室に復帰。SNSなどを通じて難病患者の日常やヘルプマークを広める活動などを行っている。

今村 英利

記事監修医師
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

完治しない病気…なんで私が?

完治しない病気…なんで私が?

編集部編集部

多発性筋炎が判明した経緯について教えてください。

まゆさんまゆさん

最初の症状は太ももの痛みでした。あまり気にせず生活していたのですが、徐々に全身が筋肉痛のひどい時のような感じになり、腕が上がらない、字が書けない、自力で服が脱げない、しゃがんだら自力で立ち上がれない、食べ物が飲み込みにくいなどの症状が出てきました。さすがに不安になってかかりつけ医を受診しました。

編集部編集部

そこで診断を受けたのですか?

まゆさんまゆさん

いいえ。その病院では膠原病(こうげんびょう)疑いと言われ、大学病院を紹介されました。大学病院に入院し、様々な検査をした結果、多発性筋炎(膠原病に含まれている一つ)と診断されました。

編集部編集部

どんな病気で、どのように医師から説明がありましたか?

まゆさんまゆさん

あちこちの筋肉に炎症が生じることで筋肉が破壊される病気で、動かすと痛かったり、力が入りにくくなったりします。完治しない病気であることと、がんを併発しやすい病気のため、まずは全身のがん検査をし、異常がないと確認した上で、ステロイドなどの投薬で治療を行うという説明でした。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

まゆさんまゆさん

正直に言うとショックを受けたり、落ち込んだりすることはさほどありませんでした。おそらくまだ自分が難病になったという実感がなく、感情がそれに追いついていなかったのだと思います。むしろ、病気になったことをなぜかとても前向きに捉えていて「これが神様が与えた試練ならば、その試練は絶対に乗り越える」と、周囲にはかなり強気な宣言をしていました( 笑)。

編集部編集部

そうだったんですね。

まゆさんまゆさん

ただ、私は元々アクティブな方で、毎年フルマラソンを完走したり、フラダンス教室の講師をしたりしていたので、「この先もうマラソンは無理なのかな、フラ教室は続けていけるのだろうか」と現実的な部分ではかなり不安でした。健康だけが取り柄で大きな病気もしたことがなかったので、「なんで私が?」という気持ちも大きかったと思います。

人生で初めて「セーブする」ことを覚えた

人生で初めて「セーブする」ことを覚えた

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

まゆさんまゆさん

膠原病はステロイドや免疫抑制剤など大量の薬を用いて治療を行うので、その副作用がひどく、かなり生活に影響が出ました。ステロイドの副作用が特に辛く、ムーンフェイス(まるくむくんだ顔)、体重増加、筋力低下、免疫力低下、視力低下、脱毛など副作用のデパート状態です。体重は半年で16kgも増加し、スーツは3回買い替えました。

編集部編集部

副作用にも色々あるんですね。

まゆさんまゆさん

私の場合、ムーンフェイスが特にひどく、久しぶりに会う人は、誰も私だと気付かないほど見た目が変わってしまいました。私はメンタルは強い方ですが、さすがにこの見た目の変化は精神的に辛く、鏡を見るのも嫌、オシャレをするのも楽しくない、そんな時期がありました。

編集部編集部

身体的なところではいかがでしょう?

まゆさんまゆさん

気温の変化や季節の変わり目などは体調を崩しやすく、倦怠感や関節痛がひどくなるので常に体調を気にしながらの生活になり、無理や無茶ばかりしていた私が人生で初めて「セーブする」という事を覚えました。

編集部編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

まゆさんまゆさん

一番はフラダンスの生徒さん達です。入院中はレッスンをすべてお休みにしていたのですが、生徒さん達が自主的に集まって練習をしている動画をよく送ってくれていました。その場で指導できない不甲斐なさを感じながらも「退院した時、先生がびっくりするぐらい上達しておきます」という心強いメッセージと共に送られてくる動画は闘病中の私の何よりも大きな支えになっていました。病院のベッドでその動画を何度も何度も見返しては、生徒さん達の成長していく姿に励まされました。

編集部編集部

素敵な生徒さんたちですね。

まゆさんまゆさん

こんなに誇らしい生徒を持って私はなんと幸せな指導者なんだろうと、そしてその生徒さん達のためにもなんとしてもこの病気を乗り越えて教室に復帰してやろうと強く誓いました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

まゆさんまゆさん

「Noと言える人間になれ」。この一言だと思います。私はとにかく忙しい人間で、フラダンス教室の運営のほかにも日中はアパレルの仕事やマナー講師の仕事などをしていて、休みは1ヶ月に1日あるかないかの生活でした。頼まれた仕事はすべて引き受ける、多少の体調不良では仕事に穴は空けない、そんな風に突っ走っていました。当然体は悲鳴をあげていたはずですが、昔の自分はそんな事にも気付かず、気付くどころかNoと言う事は格好悪い事だと思い込んでいたんです。なので、Noと言える勇気、時には休む勇気を持ちなさいと昔の自分に教えてあげたいです。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

まゆさんまゆさん

投薬治療の効果がとてもよく現れて、現在はフラダンス教室にも復帰し、レッスンもこなせるようになりました。お休みの日はウォーキングなどで体を動かすようにしたおかげで筋力もずいぶん回復し、ウォーキングイベントで20km完歩することもできました。しかし、様々な薬の副作用で別の病気にかかる事も増え、救急搬送や入院も何度か経験しました。自分では良くなったと思っていても、常に注意が必要だということを忘れず、自分の体調と向き合いながら生活をしています。

(後編)【闘病】目指すは健康優良難病患者!

※この記事はメディカルドックにて《【闘病】「難病でも楽しく生きられる」フラダンス講師の向き合い方《多発性筋炎》》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修医師