【闘病】まさか自分が難病に… 「腕の上げにくさ」の正体は『重症筋無力症』

「シャンプーで腕が上がらない」「物が二重に見える」。日常の中の些細な異変が、やがて難病「重症筋無力症」につながっていくとは……。看護師として働くシルシルさん(仮称)は、自身の不調に悩まされながらも、病気の確定診断までに2年以上を要しました。診断後は入退院を繰り返す日々。それでも支えてくれる人々の言葉に励まされ、前を向いて治療と向き合っています。今回は、そんなシルシルさんの闘病体験をお聞きしました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年3月取材。

体験者プロフィール:
シル(仮称)
鹿児島県在住。20代女性。2018年頃から日常生活で腕の上がりづらさや動かしづらさ、複視などを自覚する。脳神経外科、脳神経内科で検査を行うも、明確な異常が見つからず、その後も違和感を抱えながら約2年間生活していた。SNSの情報をきっかけに重症筋無力症を疑い、精査したところ、重症筋無力症と確定診断を受けた。

記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「こんな若いうちに難病になるなんて…」不安を感じながらの日々

編集部
はじめに重症筋無力症について教えてもらえますか。
シルさん
重症筋無力症は名前にもある通り、筋肉の力が弱くなる病気です。難病に指定されていて、10万人当たり約13人が発症するとされています。症状は物が二重に見える複視のほか、食べ物の噛みにくさや飲み込みにくさを感じたり、持ったものを落としやすくなったりするようになります。症状が進むと立てない、歩けない、息がしにくいなど生活に大きな影響を及ぼす病気です。
編集部
シルさんの場合はどのような症状から始まったのでしょうか。
シルさん
私の場合は2018年頃から、シャンプーやメイクの時に腕が上がりにくい、動かしにくいと感じたり、物が二重に見えたりするようになりました。違和感を覚えながらも、検査結果は異常なしだったので、症状が改善しないまま2年以上を過ごしていました。
編集部
病気が判明した詳しい経緯を教えてもらえますか。
シルさん
2021年にたまたまインスタグラムの投稿を見ていた時、重症筋無力症に関するものを発見しました。私と似た症状が多く書かれていため、「私も重症筋無力症では?」と脳神経外科のクリニックを受診しました。採血で抗アセチルコリンレセプター抗体が陽性と判明し、詳細な検査の結果、重症筋無力症と確定診断されました。
編集部
病気が判明したときはどのような心境だったのでしょうか。
シルさん
自分でも「おかしいな」と思いながら2年間過ごしていたので、「やっとこの違和感に病名がついた」という少しの安心感と、同時に不安も覚えました。「これから私の人生はどうなるんだろう?ちゃんと今までみたいに働けるの?みんなと同じように過ごせるの?」という気持ち、「まさか自分がこの若さで難病になるなんて……」という気持ちが渦巻いていました。
治療で見た目が変わってしまう辛さを痛感

編集部
シルさんの治療はどのように進められたのでしょうか。
シルさん
ステロイドと免疫抑制剤の飲み薬から始めて、症状が悪化するなら免疫グロブリン療法、免疫吸着療法、ステロイドパルス治療を行うと説明がありました。それでも効き目が続かない場合は、ソリリスという点滴をするとのことでした。
編集部
現在も治療は続けているのでしょうか。
シルさん
結局、今はソリリスを点滴するために2週間に1度病院へ通っていて、おかげで病状は安定しています。今後は症状を見ながら、徐々にステロイドを減らしていくという治療計画です。
編集部
病気の症状や治療の副作用で困ったことはありますか。
シルさん
幸い重症筋無力症がかなり悪化する前に治療を始められたので、病気の症状で生活に起こった変化はそれほど多くありませんでした。ですが、治療でステロイドを飲み始めて、副作用のせいでかなり体重が増えてしまいました。見た目も変わったうえ、服もほぼ全部買い換えることになりました。
編集部
生活で苦労したこと、辛い思いをしたこともありましたか。
シルさん
なによりショックだったのが、私の事情を知らない人から「太ったね」と言われることです。体型や見た目が変わったことは自分自身が一番ショックでしたから、余計に辛くなりました。鏡で自分の姿を見るのが怖くて、4カ月以上美容室に行けず、写真も撮らなくなって、メイクもあまりしない日々でした。「自分の意に反して見た目が変わるのがこんなに辛いなんて……」と痛感しました。
編集部
治療中、心の支えになったことはなんですか。
シルさん
尊敬する上司から「元気になって返ってきてくれるだけでいいよ」という言葉をもらえたことです。私は診断がついた翌月から1年ほどの間で10回入院しました。退院しては症状が悪くなって、また入院を繰り返しました。職場への申し訳なさ、ゴールの見えない治療で苦しかったときに言葉を掛けていただいたので、救われた気持ちでした。
編集部
その言葉で看護師としても頑張れたのですね。
シルさん
治療が上手くいかず、薬の効果も続かず、マイナスな気持ちが強くなることもありました。ですが、看護師の仕事が好きですし、「私が元気になって帰ってくる場所を守って、待ってくれている人がいる」と思えば踏ん張れました。
→(後編)【闘病】「見た目ではわからない病気もある」多くの人に理解を広めてもらいたい
※この記事はメディカルドックにて『【闘病】治療で「見た目が変わる」のがこんなに辛いなんて…《重症筋無力症》』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。