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【闘病】我が子は生後すぐから”けいれん”や”不眠” 診断に2年かかった「アンジェルマン症候群」

 公開日:2025/06/16
~実録・闘病体験記~ 生後2年間も病名が確定しなかった、息子のアンジェルマン症候群
生まれた直後から続く違和感と、なかなか判明しなかった病名。約2年の葛藤を経て「アンジェルマン症候群」と診断されたアップルビーさんのお子さんリッキーくん(仮称)。病気と向き合いながらも、家族や周囲の支え、そしてリッキーくんの笑顔に励まされて前向きに歩む日々についてお話を伺いました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。

アップルビーさん

話者プロフィール:
アップルビーさん

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神奈川県在住。国際結婚で結ばれた夫、リッキーさん(闘病者)、長男、三男の5人家族。2016年にリッキーさんを出産。リッキーさんは生後すぐから吸啜(きゅうてつ)反射がなく、哺乳ができない、筋緊張が強い、ほとんど寝ない、泣き方がおかしい、呼吸音がおかしいなどの状況が続いた。その後複数の病院で検査入院をするも、原因不明の発達遅滞の診断のまま確定診断には至らず。遺伝子検査の結果、1歳11ヶ月時にようやくアンジェルマン症候群の診断が確定した。

菅谷 雅人

記事監修医師
菅谷 雅人(ふかしばこどもクリニック 院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

確定診断までの長い道のり

確定診断までの長い道のり

編集部編集部

アンジェルマン症候群とはどのような病気なのですか?

アップルビーさんアップルビーさん

最も特徴的な症状はよく笑うという点です。ほかに重度の知的障害、発達遅滞、言語障害、てんかん、睡眠障害、この他にも特徴的な顔つきを含め、症候群ですのでさまざまな症状があります。リッキーに現れたものとしては、発達遅滞、重度の知的障害、言語障害、摂食障害、便秘、てんかん、睡眠障害などでした。

編集部編集部

お子さんが生まれたとき、すぐに違和感を感じていたそうですね。

アップルビーさんアップルビーさん

生まれた直後からリッキーは普通の赤ちゃんと違っていました。生後すぐから吸啜(きゅうてつ)反射がなく哺乳をできない、筋緊張が強い、赤ちゃんなのにほとんど寝ない、泣き方がおかしい、呼吸音がおかしいという状況が続きました。なので、正確にはわかりませんでしたが、「必ず何かの病気があるはずだ」という想いだけはありました。

編集部編集部

そのほかにも症状はありましたか?

アップルビーさんアップルビーさん

生後2週間ごろから、噴水のような嘔吐と体重増加不良により、小児専門の総合病院への通院が始まりました。生後1ヶ月で発熱により入院し、けいれん群発も起こしました。生後3ヶ月ごろから筋緊張がとれ始め、常に泣いていたのが一変してご機嫌な赤ちゃんへと変わりました。ただクーイングも喃語(なんご/乳児の発声)も一切出ませんでした。笑い声も出さず、泣くのは2日に1回ぐらいで、しかも1秒くらい。1歳になってようやくお座りができるようになりました。

編集部編集部

診断確定まで2年間もかかったそうですね。

アップルビーさんアップルビーさん

セカンドオピニオンも行きましたが結局病名はわからず、「重度のダウン症と思って育ててみては?」とアドバイスをされることもありました。主人が染色体異常や遺伝子疾患などについてネットで調べていたとき、1つの記事を見つけて「同じ病気の子を見つけた。アンジェルマン・シンドローム(症候群)かもしれない」と言い出したんです。

編集部編集部

そこからどのようにして確定したのですか?

アップルビーさんアップルビーさん

担当医に「アンジェルマン症候群ではないですか」と伝えても、「そうではないだろう」と言われてしまいました。しかし病名が知りたかったため、遺伝子診断を希望したんです。すると、半年待ちで遺伝科の受診予約が取れました。そして半年後、診察室に入って3分ほどで、「申し上げにくいことですが、お子さんはアンジェルマン症候群だと思います」と医師から告げられました。病名確定のため遺伝子検査をお願いすると、やはり検査結果はアンジェルマン症候群でした。

編集部編集部

病名が確定したときはどのような心境でしたか?

アップルビーさんアップルビーさん

ずっと「なにかがおかしい」「決して『のんびり屋さん』なだけではないはず」という確信がありましたので、病気がわからないまま過ごした約2年間は本当に苦しいものでした。当初は(何かおかしいと思いつつも)ここまで重い障害だとは想像していなかったためショックでしたが、その一方で何かわからない病気があるという不安からやっと解放され、ホッとしたのを覚えています。

アンジェルマン症候群の治療

アンジェルマン症候群の治療

編集部編集部

アンジェルマン症候群はどのような治療になるのですか?

アップルビーさんアップルビーさん

この病気には原因療法がなく、対症療法になります。その中でも医療として注力してることは、てんかんのコントロールです。けいれん重積を繰り返していますので、てんかんをできるだけ抑えることが重要になってきます。

編集部編集部

治療で大変なことなどはありましたか?

アップルビーさんアップルビーさん

まずは睡眠薬で昼夜のリズムをつけることに、かなりの時間がかかりました。最初のうちは夜にまとまって寝るのが3〜4時間、薬を使わないともっと短時間です。この治療は年単位でおこないました。

編集部編集部

生活で苦労することはありましたか?

アップルビーさんアップルビーさん

大変だったのは、保育園などに理解を得ることでした。この病気を知っている人はほぼいません。しかし保育園に預けないと私も仕事が出来ませんし、保育園側も預かるのが怖いところもあると思います。お互い何度も話し合い、たくさん理解していただいて、受け入れてもらえたことに今でも感謝してます。

編集部編集部

治療での心の支えとなったものは、何でしたか?

アップルビーさんアップルビーさん

どんなときもご機嫌でニコニコしているリッキーの笑顔に何度救われたかわかりません。この笑顔がなかったら、今まで乗り越えられなかったと思います。「親は子どもに無償の愛を注ぐ」とよく言われますが、わが家の場合はリッキーが私たちに無償の愛を注いでくれていると思っています。

編集部編集部

周囲の理解も心の支えとなったようですね。

アップルビーさんアップルビーさん

家族と友達の理解にも支えられました。私がこの病気について落ち込んでいると、主人がポジティブな言葉かけてくれて、その何気ない優しさにも救われました。家族や友達が、リッキーを当たり前の存在として受け入れ、色々協力してくれるのは本当にありがたいです。

(後編)【闘病】珍しい病気でも、周囲の理解があれば乗り越えられる

※この記事はメディカルドックにて『【闘病】「アンジェルマン症候群」 病名確定まで2年かかった母親の想い』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修医師