「歯周病」は完治しない? 重症化を防ぐためにできることを歯科医師に聞く

自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな歯周病は、重症化すると自身の歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があることが知られています。そこで、歯周病を重症化させないためにできること・気をつけることについて、広瀬通り歯科クリニックの遠藤先生に解説してもらいました。

監修歯科医師:
遠藤 義樹(広瀬通り歯科クリニック)
編集部
歯周病を重症化させないために、普段私たちはどのような点に注意したらよいでしょうか?
遠藤先生
慢性疾患である「歯周病(歯周炎)」は糖尿病と同じく、一度かかってしまうと完治することはなく、治療をしても再発する可能性がある病気です。そのため、まずは「歯周病にならないこと=予防」が重症化を防ぐうえでの最優先事項となります。予防では、日々のブラッシングなど口腔ケアをご自身で欠かさず実践し、さらに歯科医院で定期的に専門的なチェックとクリーニング(感染源の除去)を受けることが重要です。くわえて、歯周病は初期の「歯肉炎」の段階で発見できれば、早期治療によって完治(元の健康な状態に戻す)できます。したがって、定期チェックで初期の段階で発見し対処することが、重症化を防ぐ近道といえるでしょう。
編集部
歯周炎に進行すると、やはり完治は難しくなるのでしょうか?
遠藤先生
先述のように、歯周病でも初期の歯肉炎であれば、適切なブラッシングとプラークコントロールで完治できます。しかし、歯周炎へと進行して歯を支える骨が溶けてしまうと、健康な状態に完全に戻すのは非常に困難です。そのため、歯周炎においては「寛解(かんかい)」という状態を目指して治療を行うのが一般的です。
編集部
歯周炎の「寛解」とは、どのような状態を意味するのでしょうか?
遠藤先生
寛解とは「症状が消えている、あるいは落ち着いている状態」を意味します。しかし、病気自体が治ったわけではないので、治療が終わったあともしっかり管理を続けなければ、残念ながら再発して重症化してしまいます。そのため、歯周病は生涯にわたって自己管理と定期的なメンテナンスが不可欠です。そのような意味において、歯周病は「治す病気」というより「コントロールする病気」と言えるでしょう。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
遠藤先生
歯周病の重症度を正しく判定するうえでは、現在の病気の状態(病態)にくわえ、そこに至った原因(病因)を含めた臨床診断が必要であると考えます。なぜなら、深い歯周ポケットがあっても、進行する原因を除去して患者さん自身の治癒能力を高めることができれば、外科処置を行わず改善を図ることも可能だからです。適切な診断に基づき、患者さん自ら積極的に治療に参加していただければ、歯周病の寛解と進行抑制は十分可能です。本記事を参考に、信頼できる歯科医にぜひご相談ください。
※この記事はメディカルドックにて<【歯科医が解説】歯周病の「重症度」とは? 各ステージの判断基準や外科治療の要否も知りたい>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。