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「乳がんから転移した後の余命・治療法」はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/05/09

Medical DOC監修医が乳がんの進行スピード・転移後の余命・治療法を解説します。

※この記事はMedical DOCにて『「乳がんが転移」するとどんな症状が現れるかご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

「乳がん」とは?

乳がんとは乳腺に発生する悪性腫瘍です。がんの広がりが乳房や周囲のリンパ節のみであれば、手術で目に見えるがんを治療します。さらに、薬物治療や放射線治療によって再発を予防します。初期の段階から微小ながん細胞が身体のどこかに存在していることが乳がんの特徴です。微小ながん細胞が、治療をすり抜けて目に見える形で現れることを再発といいます。

乳がんの局所再発とは?

乳がんの局所再発とは治療後に手術した側の乳房、胸壁や皮膚に乳がんが発生することです。脇の下、鎖骨周囲、胸骨の横などの乳房周囲のリンパ節に乳癌が再発することを領域再発といいます。

乳がんの遠隔転移とは?

乳がんの遠隔転移とは乳房から離れた臓器や組織にがんが現れることです。乳がんは血液やリンパ液の流れに乗って、離れた場所に転移することがあります。乳がんが診断された時点で遠隔転移がある場合はステージ4です。

乳がんはどれくらいのスピードで転移する?

乳がんの転移・再発のスピードは乳がんの病期(ステージ)やサブタイプによってさまざまです。転移・再発する場合、手術から2、3年後もしくは5年後くらいに起こることが多いといわれています。10年後や20年後など、遅くに再発することもあります。

乳がんから転移した後の余命

乳がんの遠隔転移がある場合の5年生存率は39.3%と報告されています。

骨に転移した場合の余命

乳がんの骨転移そのものが直接命にかかわることは少なく、他の臓器の転移がない場合は余命が長い傾向があります。海外の研究ですが、骨転移の3年生存率は50.5%と報告されています。

肺に転移した場合の余命

肺に転移した場合の余命は乳がんの性質や転移の程度によってさまざまです。単発の肺転移であれば余命が長い可能性があります。海外の研究で、肺転移の3年生存率は37.5%と報告されています。

肝臓に転移した場合の余命

肝臓に転移した場合の余命は転移の状況によってさまざまあり、一概にいうことはできません。海外の研究ですが、肝転移の3年生存率は38.2%と報告されています。

乳がんから転移した後の治療法

乳がんが遠隔転移した場合は、完治が難しくなります。がんの進行を抑えて、症状をやわらげ、生活の質を保ちながら長期生存を目指す治療を行います。乳がんの性質や進行度、転移の状況や患者さんの状態によって治療を選択します。

薬物治療

遠隔転移した場合、画像検査で見えている病変以外にも目に見えないがん細胞が体内のどこかにあると考えられます。そのため、全身に効果が行き届く、薬物治療を中心に行います。腫瘍内科や乳腺科で治療を行います。薬物治療には大きく、内分泌治療、化学療法、分子標的薬、免疫治療があり、乳がんの性質によって使い分けます。ホルモン受容体陽性の場合は、内分泌治療±分子標的薬が有効です。効果がなくなった場合や命に係わる病状の場合は化学療法を行います。HER2陽性の場合は分子標的薬(抗HER2療法)を行います。トリプルネガティブ乳がんの場合は、化学療法が基本です。PD-L1陽性の場合は免疫療法を、BRCA遺伝子の病的バリアント陽性の場合はPARP阻害薬も使用されます。また、骨転移がある場合は骨吸収抑制薬を併用します。

放射線治療

痛みを伴う骨転移がある場合に放射線治療をすることで症状を和らげることができます。また、症状のある脳転移に対して、放射線治療を行うことがあります。脳転移が多発している場合は全脳照射を行います。他の臓器に転移がなく、脳転移が少数の場合、病巣にだけ照射を行う定位放射線照射を行うことがあります。治療は放射線治療科で行います。

手術

現在、基本的に遠隔転移に対しての手術はすすめられていません。生存期間を長くするための手術に関しては、研究段階です。肺にしこりがある場合、本当に乳がんの転移なのかを診断するために生検手術を行うことがあります。また、骨転移による骨折や神経症状を和らげるために整形外科で手術を行うことがあります。脳転移に対しても手術を行うことがあります。脳転移が数カ所のみで、全身状態が許せば、症状を和らげるために脳神経外科で手術を行うことがあります。

「乳がんの転移」についてよくある質問

ここまで乳がんの転移について紹介しました。ここでは「乳がんの転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんはどこの部位に転移しやすいですか?

山田 美紀山田 美紀 医師

乳がんは血液やリンパ液の流れに乗って転移します。転移しやすい部位として、リンパ節、骨、肺、肝臓、脳などがあげられます。

乳がんが転移した場合、手術はできないのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

遠隔転移がある場合、基本的に手術はすすめられません。全身にがん細胞が潜んでいる状況のため、全身に効果のある薬物治療がすすめられます。例外として、全身状態が良ければ、転移を診断するための手術や症状を和らげるための手術を行うことがあります。

編集部まとめ

乳がんの再発には局所再発と遠隔転移があり、治療の方針が大きく異なります。局所再発は治癒を目指しますが、遠隔転移は、完治は難しく、がんの進行を抑え、症状を和らながら長期生存を目指します。再発がどうやってわかるのか、どんな治療を行うのか、不安に感じられると思います。気になる症状がある場合は、担当医や医療スタッフに相談しましょう。

「乳がんの転移」と関連する病気

「乳がんの転移」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

整形外科の病気

脳神経科の病気

呼吸器科の病気

  • 肺腫瘍
  • 胸膜播種
  • 癌性胸水
  • 癌性リンパ管症

消化器科の病気

  • 肝腫瘍
  • 癌性腹水

病巣が単発である場合、乳がんの転移なのか、その部位から新たに発生した腫瘍なのかの区別が難しいことがあります。転移した部位の専門家と連携して検査や治療を行います。

「乳がんの転移」と関連する症状

「乳がんの転移」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房や皮下のしこり
  • 皮膚の赤み
  • リンパ節の腫れ
  • 骨の痛み
  • 息苦しさや長引く咳
  • お腹の張り
  • 頭痛やめまい

乳がんが再発や転移した場所によって起きる症状は様々です。症状がなかなか改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師

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