「大腸がんステージ3の余命」はご存知ですか?【医師監修】

大腸がんは結腸や直腸にできるがんで、良性のポリープががん化して発生するものと、正常の粘膜から発生するものがあります。
初期の段階ではほぼ自覚症状はありませんが、健康診断や人間ドックで早期発見できれば早期に治療も可能です。一方でがんのステージが進行してくると、血便や便秘など便通に不具合が生じたり、ほかの臓器への転移の可能性も考えられます。
がんと診断されると余命が気になる方も少なくないのではないでしょうか。この記事では統計学的に大腸がんステージ3の5年生存率を解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「大腸がんステージ3の余命」はご存知ですか?ステージ3の症状も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
大腸がんは結腸や直腸にできるがんです。大腸は小腸から続いてお腹のなかを大きく回って肛門へとつながる臓器です。
成人の場合1.5から2m程の長さがあり、結腸(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S字結腸)と直腸に分けられます。栄養の吸収はほぼ小腸で行うので、大腸は水分吸収を行い便を固形化することが大きな役割です。
大腸に発生するがんは2つの種類があり、1つは線種とよばれる良性のポリープががん化して発生するもの、もう1つが正常な粘膜から直接発生するものです。大腸の粘膜に発生したがんは、大腸の壁に深く侵入し壁の外にまで広がります。またリンパ液にのってリンパ節転移をしたり、血液にのって肝臓や肺など別の臓器へ転移します。
大腸がんの罹患率は男女合計で1位です。男性は1位前立腺・2位大腸・3位胃で、女性は1位乳房・2位大腸・3位肺となっています。
大腸がんステージIIIの余命・生存率は?
大腸がんステージIIIの5年生存率は約79%です。
残念ながら残りの約21%の方は5年生存できない可能性があります。これは再発や転移によって治療が困難になるからです。大腸の壁は内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜と5つの層があり、がんの進行によって次第に大腸の壁の粘膜から大腸の壁の外側へ向かって深く侵入していきます。
大腸がんのステージは以下のように0からIVの5段階で表記されています。
- ステージ0:がんが大腸粘膜内にとどまるもの
- ステージI:がんが固有筋層までにとどまるもの
- ステージII:がんが固有筋層を超えて浸潤するもの
- ステージIII:がんの深さに関わらず、リンパ節への転移を認めるもの
- ステージIV:がんの深さやリンパ節転移に関わらず、ほかの臓器への転移を認めるもの
ステージIIIまでの場合、がん化した部分や周辺のリンパ節を切除する外科手術が一般的です。一時的に軽減または見かけ上消滅した状態を寛解といいますが、ステージIIIまでのケースでは寛解する可能性も高く、5年の生存率が約79%あります。
ただし、ほかの臓器へ転移(ステージIV)では外科手術が困難になり、5年生存率は約21%に下がります。
大腸がんステージIIIの余命についてよくある質問
ここまで大腸がんステージIIIの症状や検査方法などを紹介しました。ここでは「大腸がんステージIIIの余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんの深達度とステージはどのように違うのですか?
中路 幸之助(医師)
深達度はどれだけ大腸の壁に入り込んでいるかを示すものです。がんの深さが粘膜下層までにとどまっているものを早期がん、粘膜下層よりも深いものを進行がんといいます。また、がんの進行の程度をステージ(病期)として分類し、0期からIV期までの5段階をローマ数字で表記するのが一般的です。0期とI期(ステージ0とI)は、がんが発生したばかりの時期や、粘膜や粘膜下層の浅いところにとどまっている状態です。さらにステージIは深達度によって軽度浸潤と高度浸潤に分類され、ステージIの高度浸潤よりも進んだがんを進行がんといいます。さらに固有筋層の外まで浸潤したものがステージIIです。深達度が進み漿膜下層まで深く達するとリンパ節や血管を通して転移の可能性が出てきます。実際にリンパ節に転移が認められるとIII期(ステージIII)、ほかの臓器への転移が認められるIV4期(ステージIV)となります。
大腸がんのステージIIIではどのような治療を行いますか?
中路 幸之助(医師)
大腸がんステージIIIでは手術で病変の切除を行う標準治療が推奨されます。標準治療とは科学的根拠に基づいた観点から一般的に推奨される治療方法です。ステージIの軽度浸潤までなら内視鏡治療も可能ですが、ステージIの高度浸潤・II・IIIまで進行した場合はすべて開腹手術や腹腔鏡手術を行い病変を切除します。標準治療が基本ではありますが、本人の希望や身体の状態などを総合的に検討して、担当医と話し合って決めていきます。
編集部まとめ
大腸がんと診断されると、後何年生きられるのかが気になります。
大腸がんは進行度合いによってステージ0からステージIVの5段階があります。ステージIIIの場合、5年後も生存している確率は約79%です。
これはあくまでも統計上の数字ですし、個人差はあるので前後することもあるでしょう。早期発見できれば治療も早く始められます。便潜血検査はがんの発見にとても有効です。反対に放置すると重篤な状態になってしまいます。
大腸がんと診断されると動揺するのも当然ですが、正しい知識を身に着けて、自分らしい向き合い方を探しましょう。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ご家族に大腸がんを患っている方はいませんか?家族性大腸腺腫症やリンチ症候群は遺伝性の病気なので注意が必要です。また潰瘍性大腸炎やクローン病の方は炎症から大腸がんに発展する可能性が高いといわれています。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
排便の様子を日々確認しましょう。便に血液が混じっていると痔を疑って放置するかもしれませんが、大腸がんの可能性も否定できません。早めに消化器科・胃腸科・肛門科などを受診しましょう。