「口腔がん」とはどんな病気かご存知ですか?医師が監修!

口腔がんは他のがんと比べて認知度の低さから発見が遅れることが多々あります。口の中にがんができること自体知らない方も少なくないでしょう。
実際、全てのがんの中で口腔がんの罹患割合は1〜2%程度と極めて少なく、日本では希少がんに分類されています。この記事では口腔がんについて解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「亜鉛の摂取量」はご存知ですか?過剰摂取すると現れる症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
若菜 康弘(医師)
目次 -INDEX-
口腔がんとは?
口腔がんは口の中全てに発生する悪性腫瘍の総称です。国内における口腔がんの好発年齢は60歳代といわれますが、近年は若年層の発症も増加傾向にあるため注意が必要です。
口腔がんの危険因子は飲酒・喫煙などの化学物質や、歯・舌側面の慢性的な物理接触との関連が指摘されています。口腔がんは発生部位により名称が異なり、口腔中で発生しやすいがんは以下の通りです。
- 舌がん
- 口腔底(口底)がん
- 頬粘膜がん
- 下歯肉(下顎歯肉)がん
- 上歯肉(上顎歯肉)がん
- 硬口蓋がん
口腔がんの種類についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
舌がん
舌がんは口腔がんの中で最も多く、口腔がん全体の約50%以上を占めるといわれています。舌がんは舌側縁部(舌の左右側面)に生じるケースが大半です。
舌がんは50歳以降の男性に生じるケースが多く、初期段階では舌の硬いしこり・ただれがあり、がんの進行に伴い痛み・出血・口腔内の悪臭などの症状を認めるようになります。
口腔底(口底)がん
口腔底とは、舌と下側の歯茎の間のくぼみを指し、そこにできたがんを口腔底がんといいます。口腔底がんの発症率は口腔がん全体の10%未満です。
しかし、口腔底は舌と隣接するため相互に浸潤するケースも多く、口腔機能に大きな障害を及ぼす可能性もあります。
口腔底がんの発症リスクを引き上げる因子には飲酒が指摘されており、男性の発症率が非常に高く女性の10倍に達するほどです。
頬粘膜がん
頬粘膜がんはその名の通り頬の内側の粘膜にできるがんです。頬粘膜は部位によって組織構造が異なり、特定の部位ごとの治療アプローチが必要になります。
頬粘膜がんの前がん病変としては白斑・ただれがあり、これらの病変は将来がんに進行する可能性があるため経過観察が重要です。
下歯肉(下顎歯肉)がん
下歯肉がんは下顎の歯肉(歯茎)にできるがんで、口腔がんの中で2番目に多いがんです。初期の好発症状として白斑・歯の違和感などが挙げられます。
下歯肉がんは下顎骨への浸潤スピードが早いため、下顎骨の一部を切除する外科的治療が一般的です。下顎骨の切除範囲によっては顔貌・咬合・摂食機能などに影響を及ぼすことがあります。
上歯肉(上顎歯肉)がん
上顎の歯肉(歯茎)にがんが発生するものを上歯肉がんといいます。下歯肉がん同様に早期から上顎骨に浸潤するため、治療には上顎骨の一部切除を伴うのが一般的です。
病変が大きい場合、上顎直上の鼻腔・副鼻腔の一部が露出するため、閉鎖措置を行います。下歯肉がんに比べ発生頻度が低く症例数も少ないですが、技術進歩により機能的・審美的に良好な治療結果が期待できるようになりました。
硬口蓋がん
硬口蓋とは口の硬い天井部分に相当する部位を指し、この部分に生じたがんを硬口蓋がんといいます。硬口蓋がんの好発年齢は60歳後半〜70歳代で、発生に男女の性差はほとんどないといわれています。
口腔がんの中で発生頻度が最も低い硬口蓋がんは、波及症例の多い上歯肉がんに基づき治療方針を検討する場合も少なくありません。
口腔がんの初期についてよくある質問
ここまで口腔がんの初期症状・治療法などを紹介しました。ここでは「口腔がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
口腔がんの初期症状はセルフチェックで発見できますか?
若菜 康弘(医師)
口腔がんの初期症状をセルフチェックで発見することは難しくありません。初期段階では痛みを伴わないことが多く、自覚症状には乏しいです。しかし、口の中をよく観察することで、ただれ・白斑・口内炎・しこりなどの異常を見つけることができます。セルフチェックで気になる症状があれば、早めに耳鼻咽喉科・歯科口腔外科を受診することをおすすめします。
症状が進行するとどのような症状が出ますか?
若菜 康弘(医師)
初期では違和感程度だったのが、がんの進行に伴い症状が強くなります。明らかな痛み・出血・口内潰瘍が現れ、開口障害・舌の運動障害により飲食に支障をきたすこともあります。頸部のリンパ節に転移がある場合、首周辺の腫れ・しこりなどに気づくかもしれません。どの症状も迅速な治療開始が必要な段階のため、早急に耳鼻咽喉科・歯科口腔外科などの医療機関を受診し、精密検査を受けてください。
編集部まとめ
口腔がんは、嚥下機能や構音機能と密接に関わる場所に発生します。早期に治療できれば、口腔機能にほとんど影響を受けることはありません。
喫煙・飲酒・不潔な口腔衛生状態などが発症リスクを上げ、特に60歳代から発生率が高まることが報告されています。
定期歯科検診や本記事で紹介したセルフチェックを参考に、口腔がんの前兆を見逃さないことが大切です。
口腔がんと関連する病気
「口腔がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 舌がん
- 口腔底(口底)がん
- 頬粘膜がん
- 下歯肉(下顎歯肉)がん
- 上歯肉(上顎歯肉)がん
- 硬口蓋がん
口腔がんの中では舌がんの発生頻度が最も多く、特に舌の側面(側縁部)にがんが発生しやすい部位といわれています。口内に異常を感じた場合、経過を注意深く観察することが重要です。
口腔がんと関連する症状
「口腔がん」と関連している、似ている症状は10個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
初期の口腔がんは痛みを伴わないため、自覚症状に乏しく見過ごされやすいです。しかし、明らかな痛み・出血など複数の症状が認められる場合、口腔がんの可能性が疑われます。これらの症状が長引く際は早めに医療機関を受診してください。