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急な腹痛や低血糖に注意! 糖尿病の「GLP-1受容体作動薬」の副作用とは

 公開日:2025/06/24
GLP-1の副作用と注意点とは

糖尿病の治療は生活習慣の改善だけではなく、薬による治療も必要です。糖尿病の薬といえば、ひと昔前はインスリン注射というイメージがありましたが、近年は新薬の開発が目覚ましく、重症化予防の段階から使える薬が増えてきました。その中でも、最近は「GLP-1受容体作動薬」という薬が注目されています。今回はGLP-1受容体作動薬の副作用と注意点について薬剤師の志田美春先生に解説していただきました。

志田 美春

監修薬剤師
志田 美春(COCO et al)

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神戸薬科大学で薬剤師免許、博士(薬学)号を取得。新卒で大手製薬会社に入社し、最先端の創薬研究に従事。転職先では培った技術を活かして、培養肉の基盤研究を推進。この研究活動が評価され、2023年度長井記念若手薬学研究者賞を受賞。その後、産学連携の事業開発を経て、2024年に研究コンサルタントとして独立。

編集部編集部

GLP-1受容体作動薬を使用することができない人はどのような人ですか?

志田 美春さん志田さん

治療効果が出るまでに数週間程度必要になるため、すぐに血糖コントロールが必要な糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡(こんすい)になっている人は使用できません。また、体調が急変する可能性がある重症感染症の人や手術などの緊急対応が必要になりそうな人は、急な体調の変化に合わせて厳格な血糖コントロールが必要なため、インスリン製剤を使用します。

編集部編集部

副作用についても教えてください。

志田 美春さん志田さん

特に注意する必要があるのは、胃腸障害低血糖膵炎の3つです。胃腸障害は薬の使い始めにGLP-1受容体作動薬の食欲を減らす効果が裏目に出てしまったことによるもので、下痢や便秘、吐き気・嘔吐などの症状が出ます。低血糖はほかの薬との併用や過度な食事制限・運動などによるもので、軽度では異常な空腹感や冷や汗、ふるえ、だるさなど、重度では錯乱やけいれんなどの症状が出ます。膵炎は薬と身体との相性の問題で、GLP-1受容体作動薬が膵臓で悪さをしてしまうことでまれに起こり、使用した後に我慢できないぐらいひどい腹痛と嘔吐などの症状が出ます。

編集部編集部

副作用が出た時の対処方法について教えてください。

志田 美春さん志田さん

副作用の対処法は症状の種類と程度に分けて考える必要があります。日常生活に支障がない程度の胃腸障害は、脱水にならないように水分補給をしながら、継続して使用していると徐々に落ち着きます。日常生活に支障がある場合は次の受診日を待たずに早めに受診してください。症状に応じて薬の量や製品の変更、それが難しい場合は中止してほかの治療に変更することになります。

編集部編集部

急に強い症状が出る場合もあるのでしょうか?

志田 美春さん志田さん

急に激しい腹痛がでて、特に背中の痛みや嘔吐も出るようでしたら、膵炎の可能性が高いですね。必要であれば救急車を利用して、すぐに受診してください。軽症の場合は1週間ほどで完治しますが、重症の場合は1か月以上の入院が必要になります。そのほか低血糖は軽度であれば、すぐにブドウ糖やブドウ糖を含む清涼飲料水をとり、安静にするとすぐにおさまります。重度の場合は自分で対処するのは困難ですので、できるだけ軽度の状態で対処することが大切です。

※この記事はメディカルドックにて<糖尿病の治療薬「GLP-1受容体作動薬」の効果・副作用を薬剤師が解説 ダイエット目的の服用は危険?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修薬剤師

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