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「ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査・治療法」はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/07/05

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査・治療法とは?Medical DOC監修医がALS(筋萎縮性側索硬化症)が解説します。

※この記事はMedical DOCにて『食べ物や水が原因で「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を発症することはある?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

神宮 隆臣

監修医師
神宮 隆臣(医師)

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熊本大学医学部卒業。熊本赤十字病院脳神経内科医員、熊本大学病院脳神経内科特任助教などを歴任後、2023年より済生会熊本病院脳神経内科医長。脳卒中診療を中心とした神経救急疾患をメインに診療。脳神経内科疾患の正しい理解を広げるべく活動中。診療科目は脳神経内科、整形外科、一般内科。日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、臨床研修指導医の資格を有す

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」とは?

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)とは、中年以降の方に発症し、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが障害を受ける病気です。
なお、上位運動ニューロンは脳から脊髄前角細胞に指示を伝える運動神経のことです。また、下位運動ニューロンはこの脊髄前角細胞から手足などの筋肉へ指示を伝える運動神経です。この運動ニューロンという神経が主に損なわれる結果、手足やのど、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が痩せていき、力がなくなってしまいます。一般的には、体の感覚や視力・聴力、内臓機能などは保たれます。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査法

ALSの診断は、上位・下位運動ニューロン障害があること、進行性に経過していること、そして他の病気が除外されることの3点によってなされます。そのために必要な検査について説明していきます。

神経診察

ALSは、体を動かす神経(運動ニューロン)がダメージを受ける病気です。運動ニューロンには「上位運動ニューロン」と「下位運動ニューロン」があり、これらの症状を調べることが診断に欠かせません。
診察では、脳や脊髄(首・胸・腰の部分)にどのような症状が出ているかを確認します。典型的な症状がそろっていれば、診察だけでほぼ診断できることもあります。
上位運動ニューロンの異常では、反射が強くなる「病的反射」や、やせた筋肉の腱反射が強まることが特徴です。下位運動ニューロンの異常では、筋肉がやせたり、筋力が低下したりしますが、中でも「線維束性収縮(筋肉がピクピク動く現象)」があるかどうかが特に重要視されます。
脳神経内科医が外来で診察を行います。

電気生理学的検査

ALSの診断には、主に針筋電図検査と神経伝導検査が行われます。
針筋電図検査は、症状が運動神経の異常によるものなのか、それとも筋肉自体の異常なのかを判断するための検査です。細い針を筋肉に刺し、電気的な活動を記録します。運動神経の異常がある場合は、それが急性のものか慢性のものかも評価できます。また、神経診察で特徴的な異常が見られない場合でも、針筋電図の結果が診断の手がかりとなることがあります。
神経伝導検査は、ALSを直接診断するためではなく、似たような症状を引き起こす「脱髄性ニューロパチー」などの病気を除外する目的で行われます。
これらの検査は、基本的に脳神経内科がある病院で受けることができます。

神経画像検査

核磁気共鳴画像(MRI)などの画像検査は、他の疾患を除外するために行われます。
頭部・脊髄のMRIでは、脳血管障害や前頭側頭型認知症、多発性硬化症などの脱髄性疾患、脊髄空洞症、脊髄症などを鑑別します。
近年ALSでも頭部MRI画像に異常があることがわかりました。T2強調画像・プロトン画像・FALIR画像での皮質脊髄路の信号変化や、T2*強調画像・susceptibility-weighted imaging(SWI)の運動野の低信号も変性を示唆する所見と言われています。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法

ALSに対しての根本的な治療法はまだありません。そこで、以下のように症状の進行を遅らせるような薬を使ったり、症状を和らげる方法である対症療法を行なったりしていきます。

リルゾール

リルゾールは、グルタミン酸放出阻害作用などを有し、神経保護作用を発揮する薬剤です。経口薬ですので、自宅での治療可能です。日本ではALSの治療・病気の進行の抑制に対して保険適用されています。
無力感や悪心、めまいなどが主な副作用です。重篤な肝機能障害がある場合には、内服は禁忌です。脳神経内科医が処方します。

エダラボン

エダラボンは抗酸化作用を持つ薬剤です。以前から脳梗塞の急性期に用いられていました。ALSの運動機能の進行抑制に対して2015年から保険適用になりました。エダラボンは、点滴投与する薬です。初回は14日間連続で点滴静注します。最近、内服薬も発売され、注射による負担が軽減されるようになりました。

リハビリテーション

ALSに伴い、筋肉や関節の痛みが生じることがあります。そうした症状に対して、早期からリハビリテーションを開始することが大切です。また、飲み込みや呼吸機能の保持のためにもリハビリテーションは重要です。しかし、過剰な運動負荷は筋力低下を悪化させる可能性があります。翌日に筋肉痛や疲労感、呼吸器症状が悪化することがないように行うことが大切です。

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因」についてよくある質問

ここまでALSの原因などを紹介しました。ここでは「ALSの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ALSになりやすい人の職業はありますか?

神宮 隆臣神宮 隆臣 医師

ALSの発症リスクとして、喫煙や鉛などの重金属への曝露、殺虫剤への曝露、頭部外傷、兵士としての参戦などについて研究がなされています。しかし、確実にリスクを高めると証明されたものは現時点ではありません。

ALSの予防法について教えてください。

神宮 隆臣神宮 隆臣 医師

現時点ではALSの確実な予防法はありません。しかし、ALSのリスクを高める要因として、喫煙があげられます。そのため、現在喫煙している方は禁煙することが、まだ喫煙していない方はタバコを吸わないということが予防につながる可能性はあります。

編集部まとめ

今回の記事では、ALSの発症の原因として考えられている要因について解説しました。まだ研究段階ではありますが、徐々にALSの病態が明らかになってきており、新たな治療法の開発にもつながる可能性はあります。今後の知見の集積に期待がもたれるところです。
今回の記事に挙げたような症状がみられる際には、早めに脳神経内科専門医を受診し、適切な検査を受けることが重要です。

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する病気

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する病気は20個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経内科の病気

  • 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
  • 多巣性運動ニューロパチー
  • 平山病
  • 球脊髄性萎縮症
  • 脊髄性筋萎縮症
  • 亜急性連合性脊髄症
  • 重症筋無力症
  • Lambert-Eaton筋無力症
  • 封入体筋炎
  • 皮膚筋炎

整形外科の病気

ALSに関連する病気はさまざまですが、まずは脳神経内科の受診をお勧めします。

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連する症状

「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 手足に力が入らない
  • 筋肉が痩せる
  • 筋肉がピクつく
  • ろれつが回らない
  • 喋りにくい
  • 声が続かない
  • 鼻声になった
  • 飲み込みにくい

上記の症状は、ALSまたはそれ以外の神経や筋肉の病気の初期症状の可能性があります。気になる症状があれば、医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師

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