「大腸がんの罹患率」が地域によって異なる理由はご存知ですか?【医師監修】

がんの罹患率には地域差があることをご存じでしょうか。特に大腸がん、胃がん、膵臓がんは都道府県ごとに傾向が異なります。この記事では、統計データをもとに、大腸がんの罹患率が地域によって異なる理由について解説します。予防や早期発見の参考にお役立てください。

監修医師:
日浦 悠斗(医師)
目次 -INDEX-
1. 大腸がんの現状と統計
1-1. 大腸がんは日本人に多いがんの代表格
厚生労働省や国立がん研究センターの統計によると、大腸がんは日本人のがん罹患数で上位を占めています。
2021年の最新データでは、男女合わせて年間約15万人以上が新たに大腸がんと診断されました。
男性:胃がん・肺がんに次いで3位
女性:乳がんに次いで2位
高齢者に多く、60歳以上での発症が全体の7割以上を占めています。
1-2. 罹患率とは?
「罹患率」とは、一定期間内に新たにがんと診断された人の割合を指します。
人口10万人あたりで算出され、「年齢調整罹患率」として年齢構成の影響を除いて比較されます。
これにより都道府県ごとの「実質的ながんのなりやすさ」が見えるのです。
3. 罹患率の地域差が生じる理由
3-1. 食生活の地域的傾向
大腸がんのリスク要因としてよく知られているのが「食生活」です。
特に以下の食習慣は、大腸がんの発症リスクを上昇させるとされています。
肉類(特に加工肉)の過剰摂取
食物繊維の不足
野菜・果物の摂取不足
アルコールの多飲
北陸・東北地方では、塩分や動物性脂肪の多い食事が根付いていることが多く、罹患率の高さに関与していると考えられます。
3-2. 検診率の違い
大腸がんは、早期発見すれば90%以上が完治可能ながんですが、そのためには定期的な検診が不可欠です。
ところが都道府県によって、がん検診(便潜血検査・内視鏡検査)を受ける割合に大きな差があります。
検診率が低い地域では早期発見の機会が減少し、死亡率が高くなる傾向があります。一方で、検診率が高い地域では、早期がんが多く発見されるため、一時的に罹患率が高くなる場合もあります。
3-3. 医療資源・アクセスの問題
都市部と地方では、消化器内視鏡医の数や検査機器の普及率にも違いがあります。
高齢化の進む地方では、受診のハードルが高く、潜在的ながんが見逃されやすいという側面も否定できません。