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インプラントオーバーデンチャーとは?メリットやデメリット・固定方法について解説

 公開日:2024/12/13

歯を多く失ってしまった場合の選択肢として、まず浮かぶのは入れ歯とインプラントでしょう。

入れ歯は誰でも簡単に代用歯を手に入れられる治療方法ですが、場合によっては装着した際に違和感や不安定な感覚を抱いてしまうことがあり、機能性に難点があります。

一方のインプラントは自然な歯とほとんど変わらない咀嚼力を手に入れられる反面、総入れ歯のようにインプラントにすると高額な費用がかかってしまう治療法です。

これらの治療法の中間的な立場になるのが、これからご紹介する「インプラントオーバーデンチャー」と呼ばれるものです。

インプラントオーバーデンチャーは、インプラントと入れ歯を組み合わせた治療法であり、インプラントほど費用をかけずに入れ歯の違和感を少なくできる魅力があります。

今回は、インプラントオーバーデンチャーのメリット・デメリットなどをこの記事で確認していきましょう。

この記事の監修歯科医師
山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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インプラントオーバーデンチャーとは?

歯の模型

インプラントオーバーデンチャーとは、入れ歯とインプラントを組み合わせた治療法のことです。

インプラント(人工歯根)を数本入れ、そこへ入れ歯を取り付けるため、全ての歯をインプラントにするよりも費用を抑えられます

また、インプラントオーバーデンチャーは、一般的な入れ歯より確実に噛み合わせを安定させることが可能であり、食事中でも入れ歯のことを気にせずにいられるようになります。

部分的でも全体的でも柔軟に対応できる治療法ですが、通常は残存歯が2本以下の患者様におすすめの治療法です。

入れ歯を長期間使用していたことが原因で、顎の骨が減少し、歯茎が痩せてしまっている方でもインプラントオーバーデンチャーは適用できます。

通常であれば、上記に該当するような方にはインプラントは向きません。なぜならその分人工歯の部分を長く設計する必要があり、縦に長い見た目になって審美性が高くないからです。

しかし、インプラントオーバーデンチャーであれば話は別です。インプラントの上に歯肉の部分も再現した入れ歯を固定させるため、審美的にも良い歯列を再現できるようになります。

インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯とインプラントの欠点をカバーした治療法といえるでしょう。

インプラントオーバーデンチャーのメリット

歯の画像

入れ歯とインプラントを組み合わせたインプラントオーバーデンチャーには、以下のようなメリットがあります。

  • 入れ歯よりも安定性に優れている
  • 違和感が少ない
  • 取り外して手入れができる
  • 従来のインプラントより費用が安い

それぞれ詳しく解説します。

入れ歯よりも安定性に優れている

インプラントオーバーデンチャーに取り付けられる入れ歯には、インプラント(人工歯根)が取り付けられます。

インプラントがしっかりと入れ歯を支えるため、通常の入れ歯よりも非常に安定性に優れているのが特徴です。

入れ歯は自然な歯と比べてほとんど咀嚼力を発揮できないとされていますが、しっかりと固定されるインプラントオーバーデンチャーであれば話は違います。

咀嚼時や会話時にもズレることがほとんどないため、気にせず食事や会話を楽しめるようになるでしょう。入れ歯だからと諦めていた食事も気にせず食べられるようになります。

違和感が少ない

歯の痛みを訴える女性

インプラントで入れ歯が固定されるインプラントオーバーデンチャーは、一般的に入れ歯よりも違和感が少なく、快適に使用できることが多いです。

一般的な入れ歯は歯茎に固定させているだけのため、グラつきや違和感を抱きやすい傾向にあります。

しかし、インプラントオーバーデンチャーは固定されているため、外れたりズレたりすることがほとんどありません。

また、力も上手く分散されて均等に力を入れられるようになるため、咀嚼や会話での違和感を最小限に抑えることが叶えられます。

ただ、初めての使用時には、やや違和感があるかもしれません。顎にインプラントが入った状態になるため、慣れるには時間がかかる可能性があります。

取り外して手入れができる

歯ブラシと歯の模型

インプラントオーバーデンチャーは、取り外して手入れが可能です。

インプラントと入れ歯を完全に固定させるAll-on-fourやAll-on-sixもありますが、マグネットタイプやボールタイプなど取り外しが可能なタイプもあります。

取り外し可能なタイプであれば、介護が必要になってもお手入れや口腔ケアをしやすいのが特徴です。

通常のインプラントは取り外すことはできないため、インプラント周辺のケアが疎かになってしまうことがあります。

インプラント周辺もしっかりケアできていないと、インプラント歯周炎を発症してしまうリスクがあるため、日々綺麗にお手入れするように心がけなければなりません。

人工歯が装着されたままの状態ではなかなか難しいですが、入れ歯の部分を取り外せるのであれば、インプラント部分も丁寧にケアできるようになります。

取り外しが可能なタイプのインプラントオーバーデンチャーであれば、インプラント歯周炎のリスクも下げられるでしょう。

従来のインプラントより費用が安い

歯の治療を受ける女性

一般的に、インプラントオーバーデンチャーは従来のインプラントよりも費用が安くなる傾向にあります。これは、インプラントを入れる本数が少ないことが要因です。

全ての歯をインプラントにしようとすると、片方の顎だけで10本程度のインプラントを入れなければなりません。

インプラント1本あたり30万円程度はかかるので、かなり費用が高額になることがわかります。

しかし、インプラントオーバーデンチャーであれば、入れるインプラントの本数は2〜6本程度です。

そのため、従来のインプラントよりも費用が安い傾向にあります。それだけでなく、手術の時間も軽減されることから、身体への負担を減らせるのも魅力です。

インプラントオーバーデンチャーのデメリット

歯の治療器具

入れ歯とインプラントの良い所どりのようなインプラントオーバーデンチャーですが、デメリットもあります。ここでご紹介するのは、以下のデメリットです。

  • 外科的な手術が必要
  • 従来のインプラントに比べると安定性に劣る
  • 保険が適用されない

それぞれ確認していきましょう。

外科的な手術が必要

これは従来のインプラントにもいえることですが、インプラントオーバーデンチャーは外科的な手術が必要な治療法です。

インプラントを埋め込むためには歯茎を切開し、指定の場所にインプラントを埋め込まなければなりません。

手術には麻酔を使うため痛みはありませんが、手術後には痛みや腫れといった症状が出る可能性があります。痛みが強いときは鎮痛薬を服用するなどして、対策が必要です。

ただ、インプラントオーバーデンチャーは従来のインプラントよりも本数が少なく、手術時間も短くなります。従来のインプラントの治療よりも、身体的な負担を減らせるでしょう。

インプラントオーバーデンチャーは顎の骨が少なくても治療できるケースが多いです。

しかし、あまりに骨量が少ない場合には治療できなかったり骨造成といった別の処置が必要になったりする可能性があります。

そうなると外科的手術の負担はより大きくなりやすいため、ご自身の事情と合わせて検討するようにしましょう。

従来のインプラントに比べると安定性に劣る

インプラントイメージ

従来のインプラントに比べ、インプラントオーバーデンチャーは安定性に劣るデメリットが指摘されます。

これは、インプラントオーバーデンチャーが従来のインプラントよりもインプラントの本数が少ないためです。

従来のインプラントであれば、人工歯1本につきインプラントも1本埋め込まれます。

しかし、インプラントオーバーデンチャーは人工歯5本程度に対してインプラントが1本埋め込まれるようなイメージです。

実際は入れ歯を2〜6本のインプラントで固定している形ですが、従来のインプラントより少ない本数で支えていることがわかります。

入れ歯よりも安定性が高いとはいえ、従来のインプラントには敵わないといえるでしょう。

保険が適用されない

インプラントオーバーデンチャーは、基本的に保険の適用対象外です。そのため、治療費用が高額になりやすい傾向にあります。

ただ、同じ保険適用外である従来のインプラントに比べると、費用がかなり安く抑えられるのも事実です。

全ての失った歯をインプラントにするとなると、10本近くのインプラントが必要になり、保険適用外であることも含まれて費用は高くなりやすい傾向にあります。

しかし、インプラントオーバーデンチャーであれば2〜6本のインプラントで入れ歯を固定するため、保険適用外でも従来のインプラントよりも費用を抑えることが叶います。

経済的に全ての歯をインプラントにするのは難しい方でも、比較的治療を検討しやすいのがインプラントオーバーデンチャーの特徴です。

インプラントオーバーデンチャーの固定方法

歯科医

インプラントオーバーデンチャーは、インプラントで入れ歯を固定する治療法です。その固定方法には4つの種類があります。

  • 磁石タイプ
  • ボールタイプ
  • バータイプ
  • ロケータータイプ

どの固定方法でも性能に差は生じませんが、口腔内の状態によって適切なタイプが異なります。ここでは、固定方法についての詳細を確認していきましょう。

磁石タイプ

磁石タイプは、インプラントと入れ歯の間に小さな磁石を埋め込んで固定するタイプです。それぞれのタイプの中で最も安定性が高く、インプラントの数を減らすことも叶います。

磁石で固定されているだけではありますが、ズレることはほとんどなく、取り外しも簡単にしやすいのが特徴です。

長期間使用したとしても磁力が弱まることはほとんどないため、入れ歯の調節が必要になっても磁石はメンテナンスだけで済みます。

ただ、MRI撮影に影響を及ぼしてしまうことがある点には注意が必要です。MRI撮影を受ける際には、事前に相談するようにしましょう。

ボールタイプ

ボールタイプは、主に下顎をインプラントオーバーデンチャーにする際に使用される固定方法です。

ボールを使ってインプラントと入れ歯を固定する方法で、取り外しが簡単なことやもし壊れても修復が簡単にできるのがメリットとして挙げられます。

他にも、顎の骨が吸収されるのを防ぐ効果も期待できます。ただ、安定性は磁石タイプに劣り、少しぐらつきを覚える可能性があるでしょう。

バータイプ

バータイプは、左右対称にインプラントを埋め込み、それを金属のバーで繋ぎ合わせて入れ歯を固定させる方法です。連結された上に入れ歯が固定されるため、安定性は抜群です。

また、顎の力が加わりやすいため、咀嚼のしやすさや顎の骨の吸収を抑える効果は高いといえるでしょう。

ただ磁石タイプ・バータイプに比べてインプラントの本数が多くなりやすく、その分手術の負担が大きくなるデメリットがあります。

ロケータータイプ

ロケータータイプは、インプラントオーバーデンチャーの中でも最も多く用いられている固定方法です。

ロケータータイプはインプラントにゴムをつけ、入れ歯側にボタンのようなものをつけることでインプラントと入れ歯を合体させます

操作性が良く、維持力も調節しやすいことから、治療できる歯科医院も多いのが特徴です。

装着している状態に違和感を抱くこともほとんどなく、快適に使用できます。他のタイプと同様に取り外しが可能です。

インプラントオーバーデンチャーの費用相場

おばあさんと孫

インプラントオーバーデンチャーの費用相場は、患者の口腔状態や治療内容によって異なります。

ただ一般的な相場としては、入れ歯代も含めると100〜200万円程度であることが多いです。

現在使用している入れ歯をそのままオーバーデンチャーへ使用しても良いと判断された場合には、入れ歯代が不要になるため40〜90万円程度です。

上下両方の顎を治療する場合や、骨量が少なくて骨造成などの別処置が必要になる場合は、費用総額はより高くなるため注意してください。

インプラントオーバーデンチャーは、保険適用外の自由診療になるため、保険が適用される入れ歯よりも費用は高くなりやすいことを覚えておきましょう。

しかし、医療費控除の対象にはなるため、翌年の3月15日までに確定申告で医療費控除を申請することをおすすめします。

まとめ

男性と女性

インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯とインプラントのそれぞれの良い面を取り入れたような治療法です。

従来のインプラントよりも治療費を抑えつつ入れ歯よりも快適性の高い口腔環境を実現できます

現在入れ歯による治療を受けている方でも、インプラントオーバーデンチャーに転換すれば現状の不満を解消できる可能性があります。

インプラントオーバーデンチャーの固定方法には4つの種類がありますが、最も頻度が高いのはロケータータイプです。

安定性が高く、食事中や会話中でも歯のことを気にせずにいられるようになります。

固定方法は口腔状態によっては選択肢が限られる可能性があるため、まずは歯科医院を受診し、ご自身の口腔状態について確認してもらいましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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