口腔粘膜疾患とは?口腔粘膜疾患の種類や治療法、予防するためにできることを解説
口腔粘膜疾患とは、お口のなかの粘膜に生じるさまざまな病変を指します。痛みや不快感を伴うことが多いとされ、日常生活に支障をきたすこともあります。
本記事では口腔粘膜疾患について以下の点を中心にご紹介します。
- 口腔粘膜疾患の種類
- 口腔粘膜疾患の治療法
- 口腔粘膜疾患を予防するためにできること
口腔粘膜疾患について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
口腔粘膜疾患とは
口腔粘膜疾患とは、口腔内の粘膜に異常が生じる疾患の総称で、さまざまな原因や症状が含まれます。
主な種類として、感染性疾患(ヘルペスウイルス感染やカンジダ症)、アレルギー性疾患(口腔内アレルギー反応による炎症)、自己免疫疾患(扁平苔癬や天疱瘡など)、および腫瘍性疾患(良性や悪性の腫瘍)が挙げられます。
さらに、栄養不足、ストレス、または全身疾患の一環として現れることもあります。
症状には、口内炎やびらん、潰瘍、色素沈着、口腔内の乾燥感などがあり、これらが痛みや違和感を伴い、食事や会話に影響を与えることもあります。
口腔粘膜疾患の適切な診断と治療のためには早期の受診が重要となるため、症状が長引いたり悪化したりする場合には、医師に相談することが大切です。
口腔粘膜疾患の種類
口腔粘膜疾患の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。以下に詳しく解説します。
再発性アフタ
再発性アフタとは、口腔内に繰り返し発生する浅い潰瘍(アフタ性潰瘍)のことを指します。成人や子どもを問わず広く見られ、痛みを伴い日常生活に支障をきたすことが多いといわれています。
なかでも、白っぽい潰瘍を持つ赤い縁取りの病変が特徴で、頬粘膜、舌、唇の内側など、口腔粘膜のやわらかい部分に生じます。
再発性アフタの発症原因は解明されていませんが、ストレス、栄養不足(鉄分やビタミンB群の欠乏)、アレルギー反応、免疫の異常などが関与していると考えられています。
ウイルス性口内炎
ウイルス性口内炎は、ウイルス感染が原因で口腔粘膜に炎症が生じる疾患です。
代表的なものに、単純ヘルペスウイルスが引き起こすヘルペス性口内炎や、コクサッキーウイルスによるヘルパンギーナがあります。
主に、口腔内に小さな水疱や潰瘍が現れることで、痛みや食事困難を伴うことが多いとされています。
また、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。
ウイルス性口内炎は、幼児や子どもに見られることが多いとされますが、成人にも発症する場合があるため、注意が必要です。
口腔カンジダ症
口腔カンジダ症は、真菌の一種であるカンジダ属(主にカンジダ・アルビカンス)が過剰に増殖することによって引き起こされる口腔粘膜の感染症です。
主な症状には、口腔内の白色の苔状物(擦ると赤くなることがある)、乾燥感、味覚異常、痛みなどがあります。なかでも、新生児や高齢者、免疫不全状態の患者さんに見られることが多いとされています。
口腔カンジダ症は、健康な方の口腔内にも常在している菌ですが、免疫力の低下や抗生物質の長期使用、糖尿病や義歯の使用などが発症のリスクを高めます。
白板症
白板症は、口腔粘膜に白色の斑点や斑状の病変が現れる疾患で、原因が特定できない場合に診断されることが多いといわれています。この病変は、擦っても剥がれないのが特徴で、頬粘膜や舌、歯肉などに発生します。
白板症発症の要因としては、喫煙や飲酒、義歯の不適合などの慢性的な刺激が挙げられますが、明確な原因は解明されていません。
また、良性の場合が多いとされますが、一部は悪性化(口腔癌への進展)するリスクがあるため、注意が必要です。
扁平苔癬
扁平苔癬は、慢性の炎症性疾患で、口腔粘膜や皮膚に白い網目状の病変や赤みを伴うびらんを形成することが特徴です。口腔内では頬粘膜や舌、歯肉に見られることが多いとされ、痛みや灼熱感を伴うことがあります。
扁平苔癬の原因は明確ではありませんが、自己免疫の異常やストレスが関与していると考えられています。
一部のケースでは慢性的に持続し、まれに悪性化(口腔癌のリスク)することがあるため、経過観察が重要です。
自己免疫性水疱症(天疱瘡・類天疱瘡)
自己免疫性水疱症は、免疫系が自身の皮膚や粘膜を攻撃することによって引き起こされる疾患で、代表的なものに天疱瘡と類天疱瘡があります。
天疱瘡では、口腔粘膜に水疱やびらんが生じ、痛みや出血を伴うことが多いといわれていますが、類天疱瘡は皮膚に発疹や水疱を形成することが多く、口腔内に症状が現れることもあります。
これらの自己免疫性水疱症は慢性で進行性であり、適切な治療を行わないと症状が悪化することがあるため注意が必要です。
口腔粘膜疾患の受診のタイミング
口腔粘膜疾患は、日常的な違和感や軽い症状から始まることが多いといわれ、受診のタイミングを見極めることが重要です。
受診のタイミングとして、口腔内に治らない潰瘍、白色や赤色の病変、水疱、びらん、痛みを伴う病変が2週間以上続く場合は、速やかに受診することを推奨します。
また、症状が繰り返し発生する場合や、食事や会話に支障をきたす場合も受診を検討すべきです。
なかでも、喫煙や飲酒の習慣がある方は、症状が口腔癌の初期徴候である可能性も考慮し、早期診断を受けることが大切です。
口腔粘膜疾患の診断方法
口腔粘膜疾患の診断には、視診、触診、問診を基礎とし、必要に応じて追加の検査が行われます。
視診では、粘膜の色調や形状、病変の広がりが観察され、触診では腫れや硬さなどの異常が確認されます。
問診では症状の経過や生活習慣、既往歴が詳しく聞かれ、さらに正確な診断のために、病変の一部を採取して顕微鏡で調べる病理組織検査が実施されることがあります。
加えて、血液検査や細菌・真菌培養検査、免疫蛍光法、画像診断(X線やCT)も必要に応じて行われます。
病変の原因や性質を明らかにするために、これらの方法を組み合わせて診断を行います。
口腔粘膜疾患の治療法
口腔粘膜疾患の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか、以下に詳しく解説します。
再発性アフタ
再発性アフタの治療は、症状を緩和し再発を抑えることを目的として行われます。
基本的な治療法として、局所的な治療を行い、消炎作用を持つうがい薬や、痛みを軽減する軟膏が使用されます。
また、重症例では、ステロイド剤を含む軟膏や貼付薬が処方されることがあり、一部の場合では、免疫調整剤が使用されることもあります。加えて、発症の引き金となる要因を取り除くことが重要です。
栄養不足が原因の場合、鉄分やビタミンB群などの補充が有効といわれ、ストレスが影響している場合は、生活リズムを整えリラクゼーションを心がけることが推奨されます。
再発予防には口腔内の清潔を保つことが基本であり、日々の口腔ケアが重要です。
ウイルス性口内炎
ウイルス性口内炎の治療は、症状の緩和と感染の拡大防止を目的として行われます。
軽症の場合は自然治癒することが多いとされ、主に対症療法が用いられます。痛みを和らげるために、鎮痛剤入りのうがい薬や軟膏が処方されることがあり、口腔内の清潔を保つために生理食塩水でのうがいが推奨されます。
重症例や症状が長引く場合は、抗ウイルス薬が使用されることがあり、単純ヘルペスウイルスが原因の場合、アシクロビルなどの薬剤が有効といわれています。
また、十分な休息を取り、免疫力を高めるための栄養バランスの取れた食事が推奨され、脱水症状を防ぐために水分補給も重要です。
口腔カンジダ症
口腔カンジダ症の治療は、真菌の過剰な増殖を抑え、症状を改善することを目的に行われます。
まず、抗真菌薬が主に使用され、代表的なものにはミコナゾールやナイスタチンなどがあります。これらは局所的に適用されることが多いとされ、症状が重い場合は内服薬が処方されることもあります。
加えて、義歯の適切な清掃や調整、口腔内の衛生管理が重要で、糖尿病や免疫不全など、基礎疾患が原因の場合は、その管理も並行して行う必要があります。
また、抗生物質の長期使用が誘因となる場合は、使用を見直すことが推奨され、生活習慣の改善や栄養バランスの取れた食事も再発予防に役立ちます。
治療中は、医師の指導を受けながら定期的な経過観察を行うことが重要です。
白板症
白板症の治療は、病変の原因を特定し、その除去や予防を行うことが基本となります。
まず、喫煙や飲酒などの慢性的な刺激を避けることが推奨されます。義歯の不適合が原因の場合は、その調整や修正が必要です。
軽度の病変では経過観察が行われることが多いとされ、定期的なチェックで悪性化の兆候を早期に発見することが重要です。
悪性化のリスクがある場合や疑わしい場合は、病変部分の組織を採取し病理検査を行い、必要に応じて外科的切除が検討されることもあります。
また、治療と併せて生活習慣の改善を図り、再発や進行を防ぐ努力が求められます。
白板症は、医師による適切な診断と治療が不可欠です。
扁平苔癬
扁平苔癬の治療は、症状の緩和と病変の悪化を防ぐことを目的に行われます。
まず、炎症を抑えるために局所ステロイド剤が使用されます。
また、痛みや不快感が強い場合には、うがい薬や鎮痛薬が補助的に処方されます。
病変が重度の場合やステロイド剤が効果を示さない場合には、免疫抑制剤や抗マラリア薬が使用されることもあります。
また、刺激を避けるために、喫煙や過度な飲酒、義歯の適合不良を改善することが推奨されます。
扁平苔癬は慢性的で再発が多いとされているため、定期的な経過観察が重要で、悪性化のリスクもあるため、疑わしい症状がある場合は速やかに受診しましょう。
自己免疫性水疱症(天疱瘡・類天疱瘡)
自己免疫性水疱症(天疱瘡・類天疱瘡)の治療は、免疫反応の抑制を目的とし、主にステロイド剤や免疫抑制剤を用います。
ステロイド剤は内服薬として全身的に投与され、炎症や免疫反応を抑制します。
重症例では、免疫抑制剤(シクロスポリンやアザチオプリンなど)が併用されることがあります。
また、免疫グロブリン療法や血漿交換療法が選択される場合もあります。
局所的な治療として、病変部の清潔を保つためのうがい薬や、痛みを和らげる軟膏が処方されます。
治療中は副作用の管理が重要であり、定期的な診察とモニタリングが必要です。
口腔粘膜疾患を予防するためにできること
口腔粘膜疾患を予防するためにできることは、以下のとおりです。
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- 適切な口腔ケアの実践
正しい歯磨きの習慣を身につけることが予防の基本です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを活用し、口腔内を清潔に保つよう努めましょう。
また、うがい薬を使用することで細菌の繁殖を防ぎ、さらなる衛生管理を強化できます。 - 生活習慣の見直し
過度の喫煙や飲酒は、粘膜にダメージを与え疾患のリスクを高めるため、これらの習慣を控えることが重要です。
なかでも、たばこの煙に含まれる有害物質は、口腔内の細胞に直接的な影響を与えるため注意が必要です。 - 栄養バランスの確保
バランスの取れた食生活を心がけ、ビタミンB群や鉄分、亜鉛などを積極的に摂取することが粘膜の健康を保つうえで役立ちます。
なかでも、緑黄色野菜やレバー、魚介類などを取り入れることで、口腔の粘膜を強化できます。 - ストレスの管理
過剰なストレスは免疫力を低下させ、口腔内にトラブルを引き起こしやすくなります。そのため、適度な運動や趣味を楽しむことでストレスを軽減し、心身の健康を保ちましょう。 - 定期的な歯科検診
早期発見と適切な治療のために、定期的な歯科検診を受けることが欠かせません。なかでも、口内に痛みや違和感がある場合は速やかに受診することで、疾患の進行を防ぎます。
上記の予防法を実践し、心身の健康を守りましょう。
- 適切な口腔ケアの実践
まとめ
ここまで口腔粘膜疾患についてお伝えしてきました。口腔粘膜疾患の要点をまとめると以下のとおりです。
- 口腔粘膜疾患の種類には、再発性アフタ、ウイルス性口内炎、口腔カンジダ症、白板症、扁平苔癬、自己免疫性水疱症(天疱瘡・類天疱瘡)が挙げられる
- 口腔粘膜疾患の治療は、症状の緩和と再発防止、原因の除去を目的に行われ、疾患ごとに治療法は異なり、消炎作用のあるうがい薬や軟膏、抗真菌薬、抗ウイルス薬、ステロイド剤、免疫抑制剤などが使用される
- 口腔粘膜疾患の予防には、正しい歯磨き習慣や口腔内の清潔維持、喫煙・飲酒の制限、栄養バランスのよい食事、ストレス管理が重要であり、定期的な歯科検診で早期発見と対処を心がけることも大切である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。