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打撲傷
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

打撲傷の概要

打撲とは打撃・衝突など直接受ける外力によって生じる、皮下組織の損傷です。皮膚の損傷はみられないものの、皮下組織の血管が損傷して出血するため、内出血が起こります。スポーツ中の接触や転倒によって生じることが多く、高齢者であれば血管がもろいためわずかな衝撃でも起こりやすいです。

打撲傷の主な症状は痛みで、出血による腫れや青あざも特徴的な症状です。重度であれば痛みにより打撲を受けた部位を動かせなくなることもあります。また、打撲傷に伴って皮膚の欠損を伴うものを、「打撲創」と呼び、傷のふちが不揃いなことが特徴です。

打撲傷が起きた後は患部を圧迫して内出血を抑えることが重要です。時間の経過とともに症状が軽快することが多いですが、皮下組織の出血が大きいとまれにコンパートメント症候群に移行することがあります。また、頭部の打撲傷では、じわじわとした頭蓋内での出血が続くことにより慢性硬膜下血腫が起こり、時間が経った後に症状が出る可能性があります。
その他、打撲傷の合併症として骨折や捻挫、外傷性骨化性筋炎などが起こることもあります。

打撲傷

打撲傷の原因

打撲傷は強い外力が身体に加わることが原因です。若年者であればラグビーのタックルやサッカー中の転倒などのスポーツ中の発症が多く、交通事故での接触も原因になります。高齢者の場合は歩行中の転倒による打撲傷が多くみられますが、血管がもろいため、軽い外力でも打撲傷が起きやすいです。

打撲傷の前兆や初期症状について

打撲傷は外力によって生じるケガのため、前兆はありません。打撲傷が起きると打撲した部位の痛みが生じ、外力の強さによって腫れや内出血がみられます。

一般的には打撲直後よりも、内出血の影響で数時間後に痛みが強くでるケースが多いですが、通常であれば数日で痛みは落ち着きます。内出血がひどい場合には、数日〜1ヶ月程度青あざが残ることもあります。

重症例では、受傷した部位にもよりますがまれに打撲傷からコンパートメント症候群に移行するケースがあります。また、頭部を打撲した場合には慢性硬膜下血腫を発症する可能性もあります。

打撲傷の検査・診断

打撲傷自体には特別な検査・診断は必要ありません。しかし、痛みが強い場合は、打撲傷に合併する病気を調べるために検査が必要になるケースがあります。

打撲をした箇所の痛み・腫れがひどく動かせない場合には、骨折の可能性があるためレントゲン検査が必要です。

また、打撲傷から時間が経っても痛みが引かず神経症状などの症状がある場合には、コンパートメント症候群や慢性硬膜下血腫の可能性があります。その場合は、脳や皮膚下組織の出血が確認できるCT検査やMRI検査が有効です。

打撲傷の治療

打撲傷の治療は安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の頭文字をとったRICE治療が有名ですが、近年ではPOLICE治療が浸透しています。POLICE治療は保護(Protection)、適切な負荷(Optimal Loading)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の頭文字をとった治療です。

POLICE治療はRICE治療とは適切な負荷を与えるという考え方が異なります。RICE治療のように安静治療を中心にすると、過度な安静によって症状が悪化する可能性もあるため、適切な負荷量で患部を動かす考え方が浸透してきました。

POLICE治療は松葉杖などを使って足に無理のない負荷をかけることなどが当てはまります。痛みの程度に応じて患部に負荷をかけることで、血流が促進され、組織の修復が早くなることが期待できます。

コンパートメント症候群や慢性硬膜下血腫に至った場合は、外科的な手術が必要になる可能性があります。コンパートメント症候群であれば整形外科、慢性硬膜外血腫であれば脳神経外科で患部を切開し、圧迫の原因になっている血腫などの除去が必要です。

打撲傷になりやすい人・予防の方法

打撲傷になりやすい人はラグビーやサッカーなどの接触が多いスポーツをしている人です。接触による外力が打撲傷につながる可能性があります。また、加齢によってバランス能力が低下している高齢者も転倒による外力が打撲傷を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

打撲傷を予防するためには、身体に過度な外力がかからないように注意しましょう。接触が多いスポーツであれば身を交わす術を身につけ、転倒の際に衝撃を吸収できるように受け身の練習をするなどの工夫が必要です。

高齢者で転倒リスクがある人であれば、転倒しないようなバランス練習が大切です。歩行の際はT字杖を使用するなど転倒しないような工夫をし、外力を最小限に抑えることで打撲傷を予防できます。


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