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STD
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

STDの概要

STD(性感染症)とは、性行為によって生じる感染症を指します。

STDにはさまざまな種類があり、代表的なものに「性器クラミジア感染症」「淋菌感染症」「梅毒」「尖圭コンジローマ」「性器ヘルペスウイルス感染症」「HIV感染症」「性器カンジダ症」「トリコモナス症」などがあります。

STDは原因となるウイルスなどによって性器のかゆみなどの不快な症状を認め、疾患によっては放置することで重症化したり不妊の原因になったりすることもあります。妊娠が可能な年齢の女性がSTDに罹患した場合は「母子感染」として新生児に感染させ、新生児に重篤な症状をきたす恐れもあるため、注意が必要です。

STDを予防するためには、不特定多数のセックスパートナーとの性行為を避け、性行為の際にコンドームを適切に使用することが重要です。

STDの多くは適切な治療によって治癒が期待できます。STDが疑われる場合には、速やかに医療機関を受診して早期治療を目指しましょう。

STD

STDの原因

STDは性行為によって発症します。STDの原因となる性行為には、性器を介した行為だけでなく、口腔を介したオーラルセックス、肛門を介したアナルセックスなども含まれます。

STDに罹患(りかん)している相手と何らかの形で性行為を行うと、性器や尿道口周囲に付着した病原体や、病原体が含まれる性液や唾液などが体内に侵入し、感染することがあります。

STDの原因となる主な病原体は以下のとおりです。

  • 性器クラミジア感染症…クラミジア・トラコマチス
  • 淋菌感染症…淋菌
  • 梅毒…梅毒トレポネーマ
  • 尖圭コンジローマ…ヒトパピローマウイルス
  • 性器ヘルペスウイルス感染症…単純ヘルペスウイルス
  • HIV感染症…HIVウイルス
  • 性器カンジダ…カンジダ・カンジダ属
  • トリコモナス症…トリコモナス原虫

STDの前兆や初期症状について

STDの症状は疾患によって異なります。

性器クラミジア感染症

男女ともに無症状もしくは軽症で経過します。男性の場合は、排尿時に軽い痛みを認めたり、尿道がかゆくなったりすることがあります。女性の場合は、おりものが少し増えたり月経痛のような痛みを伴ったりするほか、不正出血を認めることがあります。

淋菌感染症

男性の場合は、発症後すぐに熱っぽさや尿道のかゆみが現れ、尿道から黄色い膿が出ることがあります。女性は症状が現れにくい傾向があり、自覚症状が見られる場合は、尿道から膿が出たり黄緑色のおりものが出たりすることがあります。

梅毒

梅毒では、感染後時間の経過とともに症状が変化します。感染後の約1ヶ月間は、口腔や性器、肛門など梅毒トレポネーマが侵入した部位にしこりやできもの、ただれなどを認めますが数週間で消失します。

尖圭コンジローマ

外陰部や膣、肛門に小さく尖ったイボができ、複数できて集まると、カリフラワーのような見た目になることがあります。羅患してもイボができないケースもあります。通常、イボ以外の症状は見られにくいものの、性交痛や性器のかゆみなどを自覚することもあります。

性器ヘルペスウイルス感染症

性器ヘルペスウイルス感染症は、罹患後、免疫力の低下などを機に繰り返し症状が出現します。初めて感染した時が最も症状が重く、単純ヘルペスウイルスに感染後2日〜21日の潜伏期間を経て外陰部のかゆみや強い痛みが出現します。その後全身倦怠感や発熱、リンパ節の腫れなどを伴い、外陰部に小さな水疱が現れます。

HIV感染症

HIV感染症は感染後2〜4週間経過すると、筋肉痛や喉の痛み、発熱などのインフルエンザのような症状を認めることがありますが、無症状で経過するケースが多いです。その後、数年の潜伏期間を経て日和見感染などの症状が出現します。

性器カンジダ症

男性は無症状で経過することがありますが、なかには亀頭部に水疱ができたり赤くなったりすることもあります。女性は陰部に強いかゆみを認め、おりものがヨーグルト状になることがあり、性交痛や性器の熱感、痛みなどを伴うケースもあります。

トリコモナス症

男性は無症状で経過することが多く、症状を認める場合も排尿時の軽い痛みなどに留まります。女性は強い悪臭のする白色から黄色のおりものが大量に分泌されるほか、陰部の痛み、かゆみを認めることもあります。

STDの検査・診断

STDが疑われる場合には、性器の視診や血液検査、尿検査、膣分泌物を採取した検査などが行われます。

梅毒やHIV感染症、性器クラミジア感染症、淋菌感染症の検査は、保健所で受けることも可能です。検査できるSTDの種類は保健所によって異なるため問い合わせてみましょう。

STDの治療

STDの治療は疾患によって異なります。

性器クラミジア感染症

性器クラジミア感染症には「テトラサイクリン系」「マクロライド系」「ニューキノロン系」などの抗菌薬が用いられます。通常、内服薬で投与しますが、重症の場合には注射薬が用いられることもあります。

淋菌感染症

淋菌感染症は「セフトリアキソン」や「スペクチノマイシン」などの抗菌薬を使用し、内服や注射薬で治療します。

梅毒

梅毒には「ペニシリン」という抗菌薬が用いられ、内服のほか注射薬で投与することもあります。
ペニシリンのアレルギーがある場合には、「ドキシサイクリン」や「塩酸ミノマイシン」などが用いられます。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマの治療には、外用薬を用いた薬物療法のほかイボのレーザー治療、凍結療法などがあります。
薬物療法では「イミキモド5%クリーム」という外用薬が用いられます。レーザー治療では「ホルミニウムレーザー」を用いてイボを蒸散させます。凍結療法では、液体窒素を含ませた綿棒を患部に当て、イボを凍結して壊死させます。
いずれか単独の治療では再発するリスクがあるため、複数の治療を繰り返し行うこともあります。

性器ヘルペスウイルス感染症

単純ヘルペスウイルスを治癒させるための薬剤はなく、抗ウイルス薬を用いて症状を抑えるための治療が行われます。
抗ウイルス薬としては「アシクロビル」「バラシクロビル」「ファムシクロビル」などが用いられます。初発感染の場合にはいずれかの抗ウイルス薬を5〜10日間内服します。

HIV感染症

HIV感染症に対しては、複数の薬剤を用いた多剤併用療法が行われます。経過に応じて「ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)」「非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)」「プロテアーゼ阻害薬(PI)」のなかから3種類以上の薬剤を用いて治療が行われます。

性器カンジダ症

女性の場合は、膣錠、膣坐薬、外用薬、内服薬などのカンジダ属に有効な抗菌薬が用いられます。
女性は免疫力の低下などで性器カンジダ症を発症することがあるため、体を十分に休め、患部を清潔に保つことも重要です。
男性の場合は、一般的に外用薬によるガンジタ属に有効な抗菌薬が用いられます。

トリコモナス症

トリコモナス症は「メトロニダゾール」という原虫に有効な抗原虫薬を内服で投与します。女性で再発を認める場合や、なかなか改善しない場合は、内服薬と膣錠を併用することもあります。

STDになりやすい人・予防の方法

不特定多数のセックスパートナーがいる人や、コンドームを使用せずに性行為をする人はSTDになりやすくなります。
STDを予防するためには、不特定多数との性行為を避けてください。

コンドームを正しく使用することも、感染率を下げるために重要です。性器を介した性行為だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスの際にもコンドームを使用することでSTDの予防につながります。


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