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ビタミン欠乏症
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

ビタミン欠乏症の概要

ビタミン欠乏症は、体内で必要なビタミンが不足することで引き起こされる病気です。ビタミンは、体の機能を正常に保つために必要不可欠な栄養素です。食事のバランスが悪い場合や、消化器系に問題がある場合、特定の病気がある場合などが原因でビタミンが欠乏し、さまざまな健康問題が生じます。

ビタミン欠乏症は、不足しているビタミンに応じた症状が生じます。例えば、ビタミンAが不足すると夜盲症や乾燥肌、免疫機能の低下、ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B3、B6、B12、葉酸など)が不足すると、疲労感、貧血、神経障害、皮膚の問題などが引き起こされる可能性があります。
ビタミン欠乏症

ビタミン欠乏症の原因

ビタミン欠乏症の主な原因は食事です。現代の食生活は、加工食品やインスタント食品に頼ることが多くなっています。これらに含まれるビタミンの量は決して多くなく、ビタミンが不足することも多いです。また、大量飲酒によるビタミンの消費や極度なダイエットで必要分のビタミンが摂取できていないことも原因となり得ます。

他にも、消化器疾患が原因の場合があります。たとえば、胃腸の手術を受けた人は、食事から摂取したビタミンを効率的に吸収できません。このような場合、食事に問題がなくても、体内に吸収されるビタミンの量が不足する場合があります。

他の病気の治療で使われる薬の副作用で、ビタミン欠乏症が引き起こされる場合もあります。具体的には、抗てんかん薬や抗凝固薬、抗精神病などが挙げられます。

ビタミン欠乏症の前兆や初期症状について

ビタミン欠乏症の前兆や初期症状は、不足しているビタミンの種類によって異なります。いずれも初期症状は軽度なものであることが多いですが、放置すると重篤な症状を引き起こす場合もあるため、何らかの症状が見られた場合は早めの受診が必要です。

ビタミンA

ビタミンAは、網膜細胞の保護や、暗闇の中で弱い光の認識などを行う視細胞のはたらきに関わっています。ビタミンAが欠乏すると、視力低下が初期症状としてあらわれ、進行すると、暗い場所で視力が落ちる「夜盲症」や目の乾燥や角膜のダメージにつながる可能性があります。

ビタミンB群

ビタミンB群の欠乏症は、疲労感、食欲不信、口唇の端のひび割れなどが初期症状として現れることがあります。

ビタミンB群は8種類あり、種類ごとに初期症状や進行時の症状は異なります。たとえば、ビタミンB1が欠乏すると、エネルギーの産生機能が減少し、疲労感があらわれ、欠乏状態が続くと、手足のしびれやむくみなどが生じる「脚気」が引き起こされます。ビタミンB12欠乏症は、軽度の貧血や神経障害から始まり、認知症や歩行障害につながります。

ビタミンC

ビタミンCは、コラーゲンやタンパク質の基になるアミノ酸の産生などに関わっているため、欠乏すると、疲労感や気分の低下、皮膚の乾燥、風邪の引きやすさなどが初期症状として現れます。進行すると壊血病を引き起こし、血管や骨が脆くなるなどの深刻な症状が引き起こされる可能性があります。

ビタミンD

ビタミンDの機能は、腸管や肝臓で、骨や歯を作る成分である「カルシウム」と「リン」の吸収を促進することです。ビタミンDが欠乏すると、筋肉の痛みや骨の痛みとして現れることが多く、長引くと骨の強度が低下(骨粗しょう症)し、骨折のリスクが高まる可能性があります。子供の場合は、骨の成長障害を起こす「くる病」が見られます。

ビタミンE

ビタミンEは抗酸化作用が強く、細胞の酸化を防ぐ機能をもちます。細胞が酸化すると、変性し破壊されてしまうため、破壊された細胞に応じた障害が引き起こされます。具体的な初期症状は、神経の障害やそれに伴う筋力の低下が挙げられます。ビタミンEの欠乏が続くと、不妊や腎障害、筋ジストロフィーといった病気が生じる可能性があります。

ビタミンK

ビタミンEの機能は、血液を凝固する成分生成の補助です。出血を止めるには、プロトロンビンなどの血液凝固因子が必要になりますが、それを生成する際に、ビタミンKは補酵素としてはたらきます。しかしビタミンKが不足すると、血液凝固因子の生成が滞るため、出血が続きやすくなり、鼻血や皮下出血といった症状が見られるようになります。

ビタミン欠乏症の検査・診断

ビタミン欠乏症の検査・診断は、患者の病歴や症状、食事内容・食習慣、手術歴に関する問診から始まります。これらから、どのビタミンが不足している可能性があるかを推測します。問診後は必要に応じて血液検査や画像検査、内視鏡検査などが行われます。

血液検査

ビタミン欠乏症の診断を確定するために、特定のビタミンの血中濃度を測定します。栄養状態を確認するためにタンパク質や脂質などを調べる場合や、ビタミンB12や葉酸の欠乏が疑われる場合は、悪性貧血による赤血球の数や形状が変化している可能性があるため、合わせてチェックすることがあります。

画像検査

骨の状態や骨密度、脳を含めた各臓器の状態など、ビタミン欠乏症にて障害が考えられる箇所の画像検査を行う場合があります。

内視鏡検査

ビタミン欠乏症によっては、ビタミンの吸収障害が原因となっているものがあります。そのため、根本的な原因の可能性がある胃や腸管などの状態を内視鏡検査で確認します。

ビタミン欠乏症の治療

ビタミン欠乏症の治療は、欠乏しているビタミンの摂取が中心ですが、欠乏の程度や原因、患者の状況によって変わってきます。

一般的な治療法は、食事療法です。不足しているビタミンを豊富に含む食品を積極的に摂取します。たとえば、ビタミンCが不足している場合には、柑橘類やブロッコリー、青ピーマンなどを食事に取り入れることで、ビタミンCの補充が可能です。栄養士や医師の指導のもと、欠乏しているビタミンを含む食品を摂取していくことが大切です。

しかし、食事だけでは不十分な場合や、急激な補充が必要な場合は、サプリメントの投与を検討します。サプリメントは、特定のビタミンを摂取できるため、短期間での改善が期待できます。特に、ビタミンDやビタミンB12のように、食事から十分な量を摂取するのが難しいビタミンの場合は、サプリメントは大切な治療手段です。重症例では、点滴治療やビタミン製剤が用いられることもあります。

また、慢性的な病気や消化吸収障害が原因でビタミン欠乏症が生じている場合は、その根本的な原因に対する治療が並行して行われます。たとえば、慢性的な胃炎があるとビタミンB12が欠乏する場合があるため、慢性胃炎の治療により改善を図ります。

ビタミン欠乏症になりやすい人・予防の方法

妊娠中や授乳中の人、成長期の子ども、高齢者、極度のダイエットをしている人、消化管の手術経験者、消化器疾患をもつ人、飲酒・喫煙の習慣のある人などは、ビタミン欠乏症になりやすいです。

ビタミン欠乏症の予防法は、ビタミンを含む食材の摂取を心がけることが重要です。食事だけでは補いきれないビタミンに関しては、サプリメントも活用するとよいでしょう。ただし、ビタミンの過剰摂取も健康問題を引き起こす可能性があるため、サプリメントは医師の指導のもとで適切に使用することが推奨されます。


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