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りんご病
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

りんご病の概要

りんご病とは医学的には「伝染性紅斑」とよばれる病気で、ヒトパルボウイルス B19 というウイルスによる感染症の一つです。代表的な症状に「頬がりんごのように赤くなる」というものがあるため「りんご病」とよばれるようになりました。
頬が赤くなる症状が有名ですが、りんご病の臨床像は多種多様で、関節痛が前面にでて整形外科を始めに受診する人もいます。
発症は小児に多く、皆さんも幼稚園や保育園で流行る病気というイメージを持っているかもしれませんが、大人にも感染して症状が出ることがあります。
基本的には自然に治る病気ですが、妊婦やその他ハイリスク患者が感染すると重症化する恐れがあるため注意が必要です。

りんご病の原因

りんご病はヒトパルボウイルス B19 というウイルスによる感染症で、このウイルスは赤血球のもとになる細胞の中で増殖するとされています (参考文献 1)。
発疹が出る1週間ほど前に微熱などのいわゆる「風邪症状」が出る方が多く、この時期には飛沫感染や接触感染などの経路で人から人への感染が起こりやすい時期になっています (参考文献 1)。逆に有名な頬の赤みが出るようなときには他の人へ感染させてしまうような恐れはほぼないと言われています (参考文献 1, 2)。

幼稚園や保育園の年代や小学校低学年で発症する方が多く「幼稚園で流行る病気」というイメージがありますが、病院や職場内での大人の集団感染が起こることもあります (参考文献 1) 。

また、ヒトパルボウイルス B19 に感染すると終生免疫が得られるため、基本的には一度感染した後に再感染することはありません (参考文献 3)

りんご病の前兆や初期症状について

小児でのりんご病の典型的な経過は次の通りです (参考文献 1, 3)。発疹が出る前の風邪症状が前兆・初期症状と言えるでしょう。

  • 感染の後10-20日程度の潜伏期間がある
  • 発疹が出る一週間ほど前から微熱などのいわゆる風邪症状が出る
  • 頬に境界の分かりやすい赤い発疹が出る
  • 手や足にも発疹が現れる
  • 発疹は1週間程度で消失する

大人では発疹は出ないことが多く、頭痛や関節痛が代表的な症状とされています (参考文献 1, 3)。歩けなくなるくらいの関節痛が出る方もいて、他の関節疾患が疑われ整形外科に受診する患者さんもいます。関節炎や違う感染症だと思っていたら実はりんご病だった!ということがよくあります。また、大人では特に症状が出ないことも多いです (参考文献 1)。

りんご病を疑ったら、基本的には子どもは近くの小児科、大人であれば内科に受診するとよいでしょう。

りんご病は基本的に自然軽快する病気ですが、次のような方では重症化する場合があるので注意してください。

  • 溶結性貧血の患者:
    溶血性貧血とは、体の中で作られた赤血球が何らかの理由で破壊され、赤血球が足りなくなって貧血症状を起こす病気の総称です。ヒトパルボウイルス B19 は赤血球のもとになる細胞に感染するため、溶結性貧血の患者さんではパルボウイルス B19 への感染により貧血症状が悪化する場合があります (参考文献 1) 。
  • 妊娠中の患者:
    妊婦にヒトパルボウイルス B19 が感染することによって、胎児水腫という赤ちゃんにとっては命にかかわる病態へつながることがあります (参考文献 1)。万が一胎内感染が成立した場合には、約 10% が流産・死産となると言われています (参考文献 3) 。妊娠前半の感染が特に危険とされており、今までにりんご病にかかったことのない妊婦の方やこれから妊娠の予定が有る方は、予防に努めていただくことが大切です。
  • 免疫抑制状態の患者:
    他の疾患の治療でステロイドに代表されるような免疫の機能を抑える薬剤を使用している方や、病気の影響で免疫が十分に機能していない方がヒトパルボウイルス B19 に感染すると、通常は短期間で排除されるはずのウイルスの感染が持続し、骨髄の機能が落ちるなどの症状が出ることがあります (参考文献 3) 。

りんご病の検査・診断

りんご病は、病歴の問診と身体診察を中心とした診断がされますが、妊娠中や重症化リスクの高い方では血液検査で抗体価測定をすることがあります (参考文献 1, 3)。
血液検査では時間を空けて数回抗体価を測定し、その推移をみることでその人に最近ヒトパルボウイルス B19 の感染があったのか否かを確かめます (参考文献 1) 。

りんご病の治療

りんご病の治療は症状に対する対症療法が中心ですが、免疫不全の患者での持続感染や、溶結性貧血の患者での貧血増悪に対してはγグロブリン製剤の投与が検討されます (参考文献 1) 。

りんご病になりやすい人・予防の方法

小児での感染が多いため、一般的には幼稚園や保育園に通っているお子さんやその家族がなりやすいとされています。人から人への感染がおこりやすい時期には一般的な風邪症状と見分けがつかないので、「りんご病予防のためにはこれ!」という予防策がないのが実情です。りんご病予防用のワクチンも開発されていません (参考文献 1)。

また、他の人に移してしまうのではないか?という観点から出席停止のことを気にされる方もおられるかと思います。りんご病は先述の通り一般的な頬の赤みが出るようなときには他の人への感染力がほぼ失われていることから、お子さんの状態が良ければ登園、登校可能とされています (参考文献 2)。

先ほど紹介した発症すると重症化の恐れがある方は、ヒトパルボウイルス B19 やその他に感染症に対しても注意が必要な場合が多いので、風邪症状の方との接触を避けたり、人の多い場所に行く際にはマスクを着用するなどの、基本的な感染対策を徹底するのがよいでしょう (参考文献 1, 3)。

万が一妊娠中にヒトパルボウイルス B19 に感染した、またはその疑いがある場合には、担当の産婦人科医に相談して、胎児に症状が出ていないか注意深く観察してもらい、必要な対応をしてもらいましょう。


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