

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
症候性脱毛症の概要
症候性脱毛症とは、何らかの病気や体調不良が原因で起こる脱毛のことです。通常の加齢にともなう頭髪の脱毛とは異なり、全身の毛髪が短期間で抜け落ちることもあります。
他にも、栄養不足や栄養バランスの乱れ、ホルモンバランスの乱れ、薬の副作用など、さまざまな要因によって引き起こされます。
症候性脱毛症は単なる見た目の問題ではなく、身体の中で何らかの異常が生じているサインである場合が多いため、早期発見や早期治療が重要です。
原因となる病気や状態によっては治療方法や回復の見込みが異なるため、気になる症状がある場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。
症候性脱毛症の原因
症候性脱毛症を引き起こす要因は多岐にわたりますが、一例として自己免疫疾患や栄養不足、ホルモンバランスの乱れなどの原因が挙げられます。
自己免疫疾患
1つ目は自己免疫疾患による脱毛です。なかでも円形脱毛症は、自己の免疫系が毛根を誤って攻撃し円形状に脱毛することが特徴です。全身性エリテマトーデスでも同様の機序で脱毛することがあります。
栄養不足や栄養バランスの乱れ
2つ目は栄養不足や栄養バランスの乱れによる脱毛です。過度なダイエットや偏食によって、たんぱく質や鉄分亜鉛やビタミンなどの栄養素が不足すると、健康な髪の毛の成長が妨げられて脱毛を招くことがあります。
ホルモンバランスの乱れ
3つ目はホルモンバランスの乱れによる脱毛です。甲状腺機能低下症など、甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じると、脱毛の原因となることがあります。甲状腺ホルモンは全身の代謝に影響し、毛髪の成長サイクルにも関わっているため、甲状腺機能にトラブルが発生すると脱毛につながると考えられています。
その他、強いストレスや感染症、抗がん剤などの薬剤の副作用、放射線治療の影響なども症候性脱毛症を引き起こす要因です。
症候性脱毛症の前兆や初期症状について
症候性脱毛症の前兆や初期症状は、通常よりも多くの抜け毛が見られることが特徴です。
シャンプーする時や髪をとかす際に、普段より明らかに多くの髪の毛が抜け落ちることがあります。また、枕に残る髪の毛の量が増えたり、シャワーの排水口に髪の毛が詰まりやすくなったりすることもあります。
通常の加齢による脱毛とは原因が異なるため、頭髪だけでなく眉毛やまつげ、体毛など身体の他の部位の毛も抜ける場合があります。
自己免疫疾患などによる円形脱毛症では、頭部に突然円形や楕円形の脱毛斑が現特徴です。痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどなく、周囲の人に指摘されて初めて気づくことも少なくありません。
栄養不足による脱毛の場合は、髪の毛自体が細くコシやツヤを失い、全体的に髪の毛が薄くなることが特徴です。髪の毛が切れやすくなることもあります。
全身的に栄養が不足しているため、貧血による疲労感や息切れ、めまいなどの症状も現れることがあります。
甲状腺機能低下症による脱毛は、甲状腺機能低下症の症状を併発することが多く、倦怠感やむくみ、体重増加などの症状と一緒に現れることがあります。
症候性脱毛症の検査・診断
症候性脱毛症の診断は、脱毛の原因となっている病気の特定が重要です。脱毛のパターンや進行の速度、既往歴や服用中の薬剤などの情報を確認し、必要に応じて毛根の検査や血液検査などをおこないます。
円形脱毛症の診断は、視診によって特徴的な円形の脱毛斑の有無を確認することを中心におこないます。ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて毛根や毛包の状態を調べる場合もあります。
また、全身性エリテマトーデスのような自己免疫疾患の発症の有無を確認するため、自己抗体を調べるための血液検査をおこないます。栄養不足による脱毛の診断では、たんぱく質や鉄分、亜鉛やビタミンなどの栄養状態を評価します。
甲状腺機能低下症を調べるためには、甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの血中濃度測定が必要です。場合によっては甲状腺の超音波検査をおこなうこともあります。
脱毛の状態によっては、他の皮膚疾患との鑑別を要するため、頭皮の一部を採取して検査することもあります。
症候性脱毛症の治療
症候性脱毛症の治療は、原因疾患に対する治療が基本です。
自己免疫疾患が原因の場合は、ステロイド外用薬や免疫抑制剤などを用いて治療します。とくに円形脱毛症に対しては、頭皮への局所的なステロイド注射が有効であることが知られています。
甲状腺機能低下症による脱毛の場合は、甲状腺ホルモンのバランスを整える薬物療法をおこないます。
栄養不足が原因の場合は、不足している栄養素を補充するための食事療法をおこないます。なかでも、たんぱく質や鉄分、亜鉛やビタミンなどの補給が重要です。
いずれの場合も原因疾患の適切な治療で、脱毛が改善され毛髪の再生が期待できます。
症候性脱毛症になりやすい人・予防の方法
症候性脱毛症になりやすい人は、脱毛しやすい病気を患っている人です。具体的には、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、甲状腺機能低下症などが該当します。
また、過度なダイエットをしている人や菜食主義の人などは、毛髪の育成に必要な栄養素が不足し脱毛する可能性があります。
これらを踏まえた予防方法として、症候性脱毛症のきっかけとなる疾患の早期発見に努めることが大切です。
円形脱毛症や全身性エリテマトーデス、甲状腺機能低下症などは遺伝的要因が関与することもあります。
家族歴がある人は日頃から自身の体調の変化に気を付け、不安がある場合は医療機関に相談するようにしましょう。定期健康診断で甲状腺機能を調べることもおすすめです。
また、日常生活の面では過度なダイエットは避け、バランスの整った食事を摂るようにしましょう。
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