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柑皮症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

柑皮症の概要

柑皮症とは、カロテンを摂り過ぎることで皮膚が黄色くなる状態です。

みかんや野菜などに含まれるカロテンを過剰に摂取することでカロテンの黄色い色素が手のひらや足の裏、顔などに沈着して皮膚が黄色くなります。

カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚を乾燥から守ったり血管が硬くなる「動脈硬化」を防いだりするほか、暗いところでの視力を調整する作用などがあります。健康を維持する上で重要な成分である一方、摂り過ぎると皮膚が黄色くなってしまう可能性があります。

カロテンはみかんやほうれん草、にんじん、かぼちゃ、ブロッコリーなどさまざまな食品に含まれています。そのため、このような食材を過剰に摂取することが柑皮症の原因になることがあります。
決まった食材ばかりを食べるなど、偏食傾向にある人は注意が必要です。また、カロテンは脂に溶けやすい性質があるため、血液中の脂質の値が高い人も発症リスクが高まります。

柑皮症はカロテンの摂取量を減らすことで自然に軽快するため、特別な治療は必要ありません。

柑皮症の原因

柑皮症の原因はカロテンの過剰摂取です。

カロテンは野菜や果物に含まれる色素(カロテノイド)の一種で、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、リコピンなどがあります。食べ物からカロテンを摂取すると高い抗酸化作用のあるビタミンAに変わり、皮膚の健康を維持したり動脈硬化や夜盲症を予防したりする効果が期待できます。

このように健康を維持する上で重要な役割がある一方、過剰に摂取するとカロテンの色素が顔や手などの皮膚に沈着して黄色くなることがあります。

カロテンは、みかん、にんじん、ほうれん草、カボチャ、パセリ、オクラ、しそ、ブロッコリー、トマト、マンゴー、あんず、とうもろこし、スイカ、焼き海苔、ウニなどの食材に含まれています。また、野菜ジュースやサプリメントにもカロテンが含まれているものがあります。

そのため、このような食材を摂り過ぎることで柑皮症を発症しやすくなります。例として、ダイエット目的で偏食傾向にある人は、カロテンを摂り過ぎて柑皮症を発症する可能性があります。

また、「神経性食思不振症」では、体内でβ-カロテンを蓄える脂肪が減少することで発症リスクが高まると考えられています。

このほか、カロテンは脂溶性であるため、血液中の脂質の値が高い「脂質異常症」の人などは柑皮症を発症するリスクが高い傾向があります。また、「糖尿病」や「甲状腺機能低下症」の人も血液中のカロテンの濃度が高くなりやすいため注意が必要です。

柑皮症の前兆や初期症状について

柑皮症では、全身の皮膚が黄色く変色します。特に顔や手の平、足の裏などの色が変色しやすい傾向にあります。

同じように皮膚が黄色くなる疾患に「黄疸」があります。黄疸は血液中の黄色い色素である「ビリルビン」の濃度が異常に高くなった際に皮膚や眼球などが黄色くなる状態です。肝疾患がある人のほか、薬剤の影響によって生じることがあります。

柑皮症と黄疸を鑑別するうえで重要なポインとなるのが、眼球の白眼部分の変色があるかどうかです。柑皮症では皮膚のみが黄色くなるのに対し、黄疸では眼球まで変色がみられます。ま
た、肝疾患などで黄疸を生じている場合には、尿の色が濃くなったり便の色が薄くなったりするほか、出血しやすくなったり、腹水が溜まったりすることもあります。

また、授乳中の母親がカロテンを摂り過ぎると、母乳中のカロテン濃度が上昇し、赤ちゃんの皮膚が黄色くなるケースもあります。

赤ちゃんの場合には特に鼻周りが黄色くなることが多く、幼児期以降では顔や手の平、足の裏が変色することが多い傾向にあります。

なお、カロテンの過剰摂取によって肝臓などの臓器が障害されることはなく、あくまでも皮膚症状のみが見られることも特徴です。

柑皮症の検査・診断

柑皮症の診断では、問診や視診のほか、必要に応じた検査がおこなわれます。

医師はまず皮膚の色調を確認し、黄色く変色している部位や、眼球の変色がないかなどを確認します。

また、問診では、他に気になる症状がないか、発症している疾患がないか、食生活などについて確認します。

問診や視診のみで診断が困難な場合や、ほかの疾患と区別したり、背景に重篤な疾患が隠れていないかを確認したりするため、に血液検査や病理組織学的検査がおこなわれることもあります。

血液検査では、血球数や肝機能、腎機能、血液中の脂質の値など幅広い検査項目を確認します。

病理組織学的検査では、黄色く変色している皮膚を一部採取し、細胞の状態を顕微鏡で詳しく調べます。

柑皮症の治療

柑皮症では特別な治療は不要であり、原因となるカロテンの摂取量を減らして経過を観察することが一般的です。

一般的に、皮膚の変色はカロテンの摂取を控えることで1〜2ヶ月程度で自然に軽快します。

柑皮症になりやすい人・予防の方法

カロテンを含む食品を過剰に摂取する人や、脂質異常症、糖尿病、甲状腺機能低下症の人は柑皮症になりやすいといえます。また、ダイエット目的などで偏食傾向にある人も発症リスクがあります。

柑皮症を予防するには、バランスの取れた食生活を心がけることが重要です。みかんやにんじん、ほうれん草、カボチャなどカロテンを含む食材だけでなく、野菜ジュースやサプリメントの常用にも注意が必要です。サプリメントとしては、「クロレラ」などにカロテンが含まれています。

カロテンを含む特定の食材や野菜ジュース、サプリメントをたくさん摂ることは控え、バランスの取れた食生活を心がけましょう。

この他、脂質異常症などの基礎疾患がある場合には、医療機関で適切な治療を受けることも重要です。


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