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接触皮膚炎
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

接触皮膚炎の概要

接触皮膚炎は、皮膚が刺激物質や抗原(アレルゲン)に接触することにより生じる湿疹性の炎症反応で、一般的に「かぶれ」といわれています。
化粧品やシャンプーなどの日用品のほか、植物、アクセサリーなどの金属、医薬品など、あらゆるものが接触皮膚炎を引き起こす原因になります。

接触皮膚炎は、かゆみやヒリヒリ感をともない、紅斑(赤い湿疹)、丘疹(ぶつぶつした湿疹)、小水疱(水ぶくれ)などの皮膚症状がみられます。これらの皮膚症状が慢性化すると、厚く、ごわごわとした皮膚を形成することがあります。

接触皮膚炎は、主に「刺激性接触皮膚炎」と「アレルギー性接触皮膚炎」に大きく分類されます。加えて、光線が関与する「光接触皮膚炎」やそのほかの特殊な例である「全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群」が分類されることもあります。

接触皮膚炎の治療と予防では、原因を特定し、接触を避けることが重要です。症状に応じて、かゆみや湿疹の炎症を抑えるための抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬・内服薬などを使用した治療が行われます。

接触皮膚炎

接触皮膚炎の原因

接触皮膚炎の原因は、接触皮膚炎の種類により異なります。

刺激性接触皮膚炎

刺激性接触皮膚炎は、特定の物質に触れた際に、皮膚の角質が物理的に障害を受けることによって起こります。刺激性接触皮膚炎の原因となる物質には、日用品や化粧品、植物、食物などがあり、以下のようなものが挙げられます。

  • 日用品
    シャンプー、リンス、洗剤、衣類(ホルムアルデヒド)、ゴム手袋 など
  • 化粧品
    化粧水、乳液、ファンデーション、パック剤、日焼け止め、アイシャドウ、口紅、ジェルネイル など
  • 植物・食物
    ニンニク、パイナップル、キウイ、アロエ など
  • その他
    農薬、酸・アルカリ、セメント、灯油、過酸化水素 など

アレルギー性接触皮膚炎

アレルギー性接触皮膚炎は、微量のハプテンとよばれる低分子の抗原(アレルゲン)が原因で生じる皮膚炎です。アレルギー性接触皮膚炎の原因となる物質には、化粧品、植物、食物、金属、医薬品などがあり、以下のようなものが挙げられます。

  • 化粧品
    化粧水、乳液、ファンデーション、パック剤、日焼け止め、アイシャドウ、口紅、ジェルネイル など
  • 植物・食物
    ギンナン、セリ科(セロリ、パセリ)、アブラナ科、キク科、ウルシ科、柑橘類、健康食品(プロポリス、キチンキトサン)、サクラソウ など
  • 金属
    アクセサリー、時計、コイン、革製品、ステンレス、塗料 など
  • 医薬品
    抗菌薬、抗真菌薬、非ステロイド系消炎薬、ステロイド外用薬、点眼薬、消毒薬、保湿剤 など
  • その他
    レジン、ゴム、合成洗剤 など

光接触皮膚炎

光接触皮膚炎は、光が当たることによって生じる接触皮膚炎です。症状があらわれる場所は、原因となる物質が塗布された部分で、顔や首、胸、手の甲など、露出している部分に限局して皮膚症状がみられます。光接触皮膚炎の原因となる物質は、主に湿布薬などの医薬品が多く、以下のようなものが挙げられます。

  • 医薬品
    非ステロイド系消炎薬(ケトプロフェン、スプロフェン、プロキシカムなど)
  • 化粧品
    日焼け止め
  • 植物・食物
    セリ科(セロリ、パセリ)、柑橘類、クワ科

全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群

原因物質が経口、吸入、注射などにより体内に侵入することで、全身に皮膚症状があらわれる皮膚炎を全身性接触皮膚炎といいます。皮膚が原因物質に繰り返し触れることにより、触れた部分だけでなく全身に皮膚症状があらわれる場合を接触皮膚炎症候群といいます。これらを引き起こす原因となる物質には、以下のようなものが挙げられます。

  • 金属
    歯科金属(ニッケル、コバルト、クロムなど)
  • 食物
    チョコレート、ココア、豆類、香辛料、貝類 など
  • 医薬品
    座薬、膣剤

接触皮膚炎の前兆や初期症状について

原因となる物質が皮膚に接触した部分に、かゆみやヒリヒリ感、熱感を伴う赤い発疹、ぶつぶつとした発疹、水ぶくれなどの皮膚症状が生じます。刺激が強い場合には、痛みを感じることもあります。

アレルギー性接触皮膚炎の場合、じゅくじゅくとした発疹があらわれることもあります。皮膚症状が慢性的に続くと、厚く、ごわごわとした皮膚を形成するようになります。

接触皮膚炎の検査・診断

接触皮膚炎の診断には、原因を見つけるためのパッチテストが有用です。パッチテストでは、接触皮膚炎の原因として疑われる物質や試薬を皮膚に貼付し、48時間後に除去します。除去した後、15分〜30分後に1回目の判定を行い、皮膚反応を確認します。皮膚反応は遅れてあらわれることもあるため、パッチテストの判定は複数回実施することが推奨されており、72時間または96時間後、1週間後に判定を行います。

皮膚症状とパッチテストの結果の関連を確認し、接触皮膚炎を診断します。パッチテストにより原因物質を特定することは、接触皮膚炎の治療や予防にも重要です。

接触皮膚炎の治療

接触皮膚炎の治療は、原因となる物質を特定し、取り除くことが重要です。発症時期や部位、症状が悪化・緩和する状況や時期、過去の病歴や医薬品の使用歴、生活環境などを問診によって詳細に確認し、パッチテストの結果とあわせて、原因となる物質を突き止めます。

原因物質との接触を避けたうえで薬物治療を行い、皮膚症状の改善を確認します。薬物治療では、かゆみや湿疹の炎症を抑えるために抗ヒスタミン薬、ステロイド内服薬・外用薬、保湿剤が使用されます。

接触皮膚炎になりやすい人・予防の方法

接触皮膚炎はさまざまな物質が原因となって引き起こされるため、誰しもが接触皮膚炎になる可能性があります。特に20〜30歳代、50〜75歳代に多く報告されています。
(出典:日本皮膚科学会ガイドライン「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」

予防には、接触皮膚炎を引き起こす原因物質を避けることが重要です。過去にかぶれたことがある物質には、なるべく触れないようにしましょう。どのような状況で皮膚症状があらわれたのかなどを記録しておくと、原因の特定や予防に役立ちます。

バリアクリームや保湿剤の使用も接触皮膚炎の予防に有効です。手袋の着用も予防効果が期待できる場合があるので、必要に応じてゴム製手袋やコットン手袋などを使用することも検討しましょう。


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