監修医師:
高宮 新之介(医師)
できものの概要
できものとは
できものは、皮膚の下または上に形成される突起や腫れであり、炎症、感染、ブロックされた腺、または良性の腫瘍などが原因で発生することがあります。痛みを伴うものと、伴わないものがあり、また、触れると熱を持つこともあります。
男女におけるできものの発生率
男女間でできものの発生に顕著な差が存在するわけではありませんが、ホルモンの違いにより、その性質や発生する部位に差異が見られることがあります。たとえば、男性は皮脂の分泌量が多いため、顔や背中にできものができやすい傾向があります。一方、女性はホルモンバランスの変動が激しいため、月経周期によってできものの発生が影響を受けやすいとされています。
年代別の傾向
若年層では男女ともにホルモンの影響を受けやすく、特に青春期には多くの人が何らかの形でできものに悩まされます。成人後は、女性は化粧品の使用や妊娠、更年期といった生理的な変化が原因で、新たにできものが出やすくなることがあります。男性では、一般的には青春期を過ぎると徐々に減少しますが、ストレスや生活習慣の乱れによっても発生します。
一般的なできものの種類
ニキビ
毛穴が皮脂や死んだ皮膚細胞で詰まることで発生します。特に顔、背中、胸に多く見られます。
脂肪腫
皮膚の下に形成される非がん性の腫瘍で、脂肪細胞から成ります。ほとんどの場合、これは無害で、痛みを伴わないことが一般的です。
粉瘤
皮膚の下に発生する袋状のできもので、皮脂腺の塞がりによって起こります。これらはしばしば背中や首に形成されます。
疣贅(いぼ)
ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる皮膚の成長で、手足によく見られます。
できものの原因
1. 感染
感染はできものの最も一般的な原因の一つです。バクテリア、ウイルス、真菌が皮膚の内部に侵入することで、炎症反応が起こり、腫れや赤みができものとして現れます。例えば、ニキビは毛穴が塞がれた状態にバクテリアが感染することで発生します。
2. 皮膚の障害
摩擦や圧迫による皮膚の障害もできものの原因となります。靴がきついことによる足のあかぎれや、締め付ける衣服による皮膚の刺激は、できものや他の皮膚の問題を引き起こすことがあります。
3. アレルギー反応
アレルギー反応によってもできものが生じることがあります。これは、化粧品や洗剤など、皮膚が反応する物質に触れた結果として起こります。赤い発疹や小さなぶつぶつが出ることが一般的です。
4. 内分泌の変化
ホルモンの変動も皮膚の状態に大きく影響を及ぼすことがあります。特に思春期や妊娠、更年期など、体内のホルモンバランスが変化する時期には、ニキビや他の皮膚疾患が現れやすくなります。
5. 慢性的な疾患
特定の慢性疾患、例えば糖尿病や免疫不全の状態では、免疫機能が低下し、皮膚のバリア機能も弱まるため、皮膚感染が発生しやすくなります。 特に糖尿病患者では、高血糖が皮膚の修復を遅らせ、感染リスクを高めます。免疫不全の例としては、HIV感染や化学療法による免疫抑制が挙げられます。
できものの前兆や初期症状について
できものの前兆や初期症状は以下になります。
1. 赤み
できものが形成される過程では、しばしば皮膚の特定の部分が赤くなることがあります。これは、その部分の血流が増加しているサインです。例えば、ニキビの場合、赤みが現れた後に白い頭が形成されることがあります。
2. 腫れ
赤みに加えて、腫れや膨らみが感じられることもあります。これは炎症が原因であり、内部で免疫反応が活発になっている証拠です。腫れは触ると痛みを伴うことがあります。
3. 痛みまたは痒み
できものの初期段階で感じる痛みや痒みも、よくある症状の一つです。特に感染が関与する場合、痛みはより強くなりがちです。また、痒みは肌が反応しているサインとして現れることがあります。
4. ほてり
感染したり、炎症が起きたりすると、その部分の皮膚が熱を持つことがあります。これは体がその部分を治そうとしているために起こります。
5. 感触の変化
通常の肌と比べて、できものができる部分は硬くなることがあります。これは、下に蓄積された脂肪、膿、またはその他の物質によるものです。
これらの症状が現れた場合、できるだけ早く適切な治療を行うことが大切です。自己判断せず、皮膚科の専門医に相談することをおすすめします。早期発見、早期治療により、症状の悪化や長引くトラブルを未然に防ぐことができます。
できものの検査・診断
できものの検査と診断に関して以下が挙げられます。
1. 視診
まず最初に行われるのが視診です。医師が肉眼で皮膚の状態を確認し、できものの大きさ、形、色、数などの特徴を評価します。この段階で、一般的な皮膚の問題か、もしくはさらに詳細な検査が必要かの判断がなされます。
2. 触診
視診に加えて、触診を行い皮膚の質感や硬さ、痛みの有無を確認します。これにより、できものが固いか柔らかいか、内部に液体が含まれているかなどの情報が得られます。
3. 細胞診
特定のできものに対しては、針を使って少量の細胞を採取し、顕微鏡で細胞の形状や構造を詳しく調べる細胞診が行われることがあります。これにより良性か悪性かの判別が可能になります。
4. 生検
さらに詳しい調査が必要な場合、生検が行われることもあります。これは、できものの一部を切除して詳細な組織学的検査を行う方法です。生検により、皮膚の病理状態が詳細に分析され、最終的な診断に至ります。
5. 血液検査
場合によっては、血液検査が行われることもあります。特に感染症や全身性の疾患が疑われる場合に有効で、体内の炎症マーカーやホルモンレベルなどが調べられます。
できものの治療
具体的な治療法
薬物療法
抗生物質や抗炎症薬が処方されることが多いです。これは細菌感染が原因の場合や、炎症を抑える必要がある場合に用いられます。
外科的除去
できものが悪性の可能性があるか、慢性的な痛みや不快感を引き起こしている場合には、外科的に除去されることがあります。これは局所麻酔下で行われることが一般的です。
自然治癒の待機
すべてのできものが即座に治療を必要とするわけではありません。一部の脂肪腫や繊維腫などは、時間とともに自然に縮小または消失することがあります。
できものになりやすい人・予防の方法
できものになりやすい人の特徴
1.皮脂の分泌が多い人
特に若者やホルモンの影響を受けやすい方は、皮脂が過剰に分泌され、毛穴が詰まりやすくなります。
2.不規則な生活習慣を持つ人
睡眠不足や不健康な食生活は体の抵抗力を低下させ、皮膚トラブルを引き起こしやすくなります。
3.ストレスが多い人
ストレスはホルモンバランスを崩し、皮膚の状態に悪影響を与えることがあります。
予防方法
1.適切なスキンケア
毎日の洗顔で皮脂や汚れを丁寧に取り除き、肌を清潔に保つことが重要です。過剰な洗顔は皮脂を取り過ぎて肌を乾燥させるので、バランスを考えましょう。
2.健康的な生活習慣
良質な睡眠とバランスの取れた食事が肌の健康を支えます。特に、ビタミンやミネラルを豊富に含む食品を摂るようにしましょう。
3.ストレス管理
定期的な運動や趣味の時間を持つことで、ストレスを効果的に管理することができます。リラクゼーション技法を身につけるのもおすすめです。
できものの予防は、日々の小さな積み重ねが肌の健康を守る鍵となります。自分の肌に合ったスキンケア製品を選び、健康的な生活を心がけましょう。