監修医師:
井林雄太(田川市立病院)
びまん性脱毛症の概要
びまん性脱毛症は、頭皮全体にわたって均等に髪の毛が薄くなる状態を指します。この状態は、特定の部位に限定されず、頭全体の髪が薄くなるため、多くの方にとって見た目の変化が気になる傾向にあります。びまん性脱毛症は、特に女性に多く見られ、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。
びまん性脱毛症の原因
ホルモンバランスの変動
妊娠と出産
妊娠中や出産後には女性ホルモンの急激な変動が起こります。特に出産後は、ホルモンレベルの急速な低下が見られ、これが脱毛を引き起こすことがあります。
更年期
更年期に入るとエストロゲン(女性ホルモン)の減少が見られ、これが髪の成長サイクルに影響を与えることがあります。
栄養素の不足
鉄分不足
鉄分は赤血球の健康に不可欠であり、赤血球は全身の酸素供給に関与しています。鉄分が不足すると髪の毛の成長に必要な酸素が十分に供給されず、脱毛につながることがあります。
タンパク質不足
髪の主成分であるケラチンの生成にはタンパク質が必要です。不足すると髪の成長が阻害されます。
精神的・身体的ストレス
重大な生活の変化
職場の環境変化、家族の問題など、大きな精神的ストレスが脱毛を引き起こすことがあります。ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、髪の成長サイクルを乱す可能性があります。
疾患と薬剤
甲状腺機能障害
甲状腺ホルモンの異常は代謝に影響を及ぼし、脱毛の一因となることがあります。
薬剤の副作用
特定の薬剤による副作用として脱毛が報告されています。
びまん性脱毛症の初期症状について
初期症状の兆候
髪のボリュームの減少
髪をとかす際やシャンプー後に抜け毛が増えたと感じる場合、びまん性脱毛症の可能性があります。
髪の質感の変化
髪が細く、弱くなり、抜けやすくなることがあります。コシがなくなり、スタイリングが難しくなることも一つのサインです
頭皮が見えやすくなる
髪全体が薄くなるため、頭皮が透けて見えることがあります。
対応策と注意点
適切な診断を受ける
異常を感じたら、専門の医師に相談し、必要に応じて血液検査などを受けることが重要です。
生活習慣の見直し
栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は健康な髪の成長をサポートします。ストレス軽減も重要です。
優しいヘアケア
頭皮や髪に負担をかけないシャンプーやコンディショナーを使用し、濡れた髪は優しく扱いましょう。
びまん性脱毛症の検査・診断
基本的な診断プロセス
詳細な医療面接
医師は患者の健康状態、生活習慣、ストレスレベル、家族歴などを確認します。
物理的検査
頭皮の観察を行い、炎症やかゆみ、皮膚病変がないかをチェックします。
主な検査方法
血液検査
鉄分不足、甲状腺機能障害、ホルモンバランスの問題を確認します。
髪の毛の引っ張りテスト
小さな髪の束を軽く引っ張り、抜ける毛の数を数えます。
頭皮生検
必要に応じて頭皮のサンプルを採取し、顕微鏡で分析します。
診断後のカウンセリング
診断が確定した後、医師は患者に病状や原因、治療オプションについて説明し、症状や生活習慣に合わせた治療計画を立てます。
びまん性脱毛症の治療
生活習慣の改善
バランスの良い食事
鉄分、ビタミンB群、亜鉛、たんぱく質など髪の成長に必要な栄養素をしっかり摂取します。
適度な運動
血行促進とストレス解消に有効です。
十分な睡眠
7~8時間の良質な睡眠を確保しましょう。
薬物療法
フィナステリドなどの処方
男性型脱毛症用の治療薬ですが、女性にも処方されることがあります。使用前には医師の診断が必要です。
その他の治療
頭皮マッサージ
血流を改善し、毛根に栄養が行き渡りやすくなります。
ストレス管理
リラクゼーションや趣味の時間を持ち、ストレスを軽減することで脱毛を防ぎます。
びまん性脱毛症になりやすい人・予防の方法
びまん性脱毛症になりやすい人
ホルモンバランスの変化を経験している人
妊娠、出産後、更年期など。
ストレスが多い生活を送っている人
長期的なストレスは脱毛の原因になります。
栄養不足にある人
鉄分、亜鉛、ビタミンB群が不足すると髪の健康が損なわれます。
予防の方法
バランスの取れた食事
タンパク質、鉄分、ビタミンB群、亜鉛を含む食品を積極的に摂取しましょう。
ストレス管理
瞑想、ヨガ、運動などでストレスを適度に発散します。
適切なヘアケア
頭皮に優しいシャンプーやトリートメントを使用し、頭皮マッサージで血流を促進します。
定期的な医療チェック
甲状腺機能など、健康状態を定期的に確認し、異常を感じたら早めに医師に相談しましょう。