目次 -INDEX-

白斑
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

白斑の概要

白斑(はくはん)は、色素異常症の一種で、肌の色が部分的に白く抜けてしまう病気です。「白皮症(はくひしょう)」と呼ばれることもあります。皮膚の色を作り出すメラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で減少または消失することで起こります。

白斑は、出生時から現れる「先天性白斑」と、後天的に発生する「後天性白斑」の大きく2種類に分けられます。症状の現れ方で分類すると「非分節型」「分節型」「未分類型」の3つに分けられます。

先天性白斑は遺伝的要因が関与していることが多く、後天性白斑は自己免疫疾患や外部刺激など、さまざまな要因によって引き起こされていると考えられています。

白斑の中で最も多いのが、後天的に発症する「尋常性白斑」です。2009年に行われた日本皮膚科学会の全国262施設を対象とした調査では、全白斑患者のうち約60%が尋常性白斑だと報告されています。
出典:日本皮膚科学会「尋常性白斑診療ガイドライン」

白斑は見た目に影響を与えるため、顔や手などの目立つ部分に生じることで、心理的な負担を感じやすい病気だといえます。

白斑

白斑の原因

表皮の基底層や毛髪のつけ根に存在しているメラノサイト(色素細胞)が減少または消失することで、皮膚が白くなることがあります。

そもそもメラノサイトの役割は、紫外線から皮膚を守り、皮膚の老化やがんの発生を防ぐことです。そのために「メラニン」と呼ばれる黒色の色素を産生します。
メラノサイトが減少または消失することで、メラニンが産生されなくなり、皮膚の色素がなくなり白斑が生じます。

メラノサイトの減少または消失は、白斑の種類ごとに原因が異なるとされています。原因の解明には至っていませんが、現時点で次のような要因が影響していると考えられています。

自己免疫異常

人の体には、体内に入ってきた異物や病原体から体を守る「免疫」が備わっています。しかし、免疫が誤って自分のメラノサイトを攻撃し、破壊してしまうことがあります。免疫の攻撃により、メラノサイトが減少または消失し、皮膚に白い斑点が現れるというのが一つの説です。
自己免疫異常が原因で発症する白斑は、後天性白斑に多く見られます。

遺伝的要因

白斑は遺伝的要因が影響することもあり、家系内で白斑の発症経歴がある場合、発症するリスクが高まると考えられています。体内に侵入した病原体や異常化した自分の細胞を排除する仕組みである「自然免疫」に重要な遺伝子も要因の一つだとされています。
先天性白斑の場合、遺伝的要因が関与していることが多いです。

酸化ストレス

酸化ストレスも白斑が生じる原因の一つだと考えられています。酸化ストレスとは、酸化によって細胞が傷ついた状態のことです。
白斑が生じた箇所は、酸化ストレスを防ぐ抗酸化物質も低下していることがわかっています。

白斑の前兆や初期症状について

初期は小さな白斑が見られます。しかし、症状が進行する白斑の場合は、次第に数が増えたり拡大したりしていきます。頭皮で白斑が生じた場合は、髪の毛も白くなるのが特徴です。見た目に大きく影響するため、患者の精神的負担となりやすいです。

また、合併症として自己免疫性の甲状腺疾患を引き起こす場合があります。反対に、糖尿病やC型肝炎、悪性貧血といった病気が原因で白斑が引き起こされる場合もあり、これらの合併症の症状を伴うことがあります。

白斑の検査・診断

白斑の検査や診断では、白斑の状態確認と種類の鑑別(老人性白斑、原田病、尋常性白斑、サットン母斑など)が重要となります。

視診・問診

はじめに行われるのが視診・問診です。白斑の部位、広がり、形状、発症時期を確認し、皮膚の色素異常が別の病気によるものではないかを確認します。

合併症の有無を調べる検査

白斑では、自己免疫性の甲状腺疾患を合併する場合があります。視診や問診などで得られた情報から合併症が疑われる場合は、甲状腺機能の検査や血液検査など、必要な検査を行います。

ウッド灯検査

ウッド灯と呼ばれる紫外線を発するランプを使って、皮膚の状態を詳しく観察します。ウッド灯を当てると、微妙な色素異常による皮膚色の変化でも、はっきりと見えるため診断の補助になります。

白斑の治療

白斑の治療法は、白斑の症状や広がり、進行の程度にあわせて選択されます。

外用薬

白斑の治療でよく使われるのが、外用薬です。中でも、有効性が高いとされるステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬、タクロリムス軟膏がよく使われます。ステロイド外用薬は、体表面積の10~20%程度の白斑に対して使用されます。

ナローバンドUVB照射療法

ナローバンドUVB照射療法とは、幅広い波長がある紫外線の中でも、治療に有効な短い波長の紫外線を活用した治療法です。照射した部位の色素の再生が見られたという報告が多くあり、白斑の治療として推奨されています。
ただし紫外線治療に共通して生じる「発がん性の問題」がはっきりしていないため、照射の回数や照射量に留意する必要があります。

PUVA療法

PUVA療法では、ナローバンドUVB照射療法と同様に紫外線を使った治療法になります。異なるのは短い波長の紫外線を活用する点です。PUVA療法はすでに1996年時点でアメリカ合衆国皮膚科学会によって推奨されており、日本でも一般的に使われている治療法です。

外科的治療

広範囲の白斑や他の治療法で十分な効果が得られない場合、外科的治療が選択されることがあります。代表的な方法として、正常な皮膚を白斑が生じている皮膚に移植する方法があります。ただし、すべての外科的治療に共通して、1年以内に進行がないケースに対してのみ推奨されています。
出典:日本皮膚科学会「尋常性白斑診療ガイドライン」

白斑になりやすい人・予防の方法

白斑は、自己免疫疾患をもっている人や家族に白斑の患者がいる人は発症しやすいと考えられています。また、頻繁に紫外線を浴びる生活をしている人や物理的な刺激が加わりやすい部分に発症しやすい傾向があります。

そのため、予防として紫外線対策やスキンケア、皮膚に刺激を与えすぎないことが大切です。皮膚のバリア機能を維持しながら、紫外線や物理的な刺激を回避し、白斑のリスクをなるべく下げるようにしてください。
自律神経の乱れも原因の一つとして考えられているため、ストレス管理も合わせてしていくことが重要です。


関連する病気

この記事の監修医師