監修医師:
西田 陽登(医師)
目次 -INDEX-
あかぎれの概要
あかぎれは、皮膚の乾燥により指先や足先の水分や脂分が減少し、皮膚がカサカサになったり、亀裂が入ることでできる病変の総称です。
医学的には「裂創性皮膚炎」または「亀裂性皮膚炎」と呼ばれます。
この状態は、皮膚の乾燥や外的な刺激(寒冷、乾燥、摩擦など)により皮膚の表面が裂けることで起こります。
特に手や足の指先に見られ、皮膚が割れて痛みや出血を伴うことが特徴です。
あかぎれは、皮膚のバリア機能が低下することで発生しやすくなり、適切な保湿ケアや外的刺激の回避が予防や治療に重要です。
水周りの仕事をしている方に多く、寒い日や乾燥する日に発症することがあります。
あかぎれの原因
乾燥
低湿度の環境や冬の寒い季節には空気が乾燥し、これが皮膚の水分を奪うことであかぎれが起こりやすくなります。
頻繁な手洗い
手を洗うことは衛生的ですが、頻繁に行うと皮膚の自然な皮脂成分が洗い流され、乾燥とひび割れを引き起こすことがあります。
外的要因
化学物質や洗剤に頻繁に触れることも皮膚を刺激し、あかぎれを悪化させる可能性があります。
あかぎれの前兆や初期症状について
皮膚の乾燥と硬化
あかぎれの最も初期の兆候は、皮膚の乾燥です。
特に手の指、指の間、足の指などが硬くなり、触るとザラザラしている感じがします。
この状態が長く続くと、皮膚が引っ張られるような不快感を覚えることがあります。
細かいひび割れ
乾燥が進むと、皮膚に細かいひびが入り始めます。
これは見た目にも小さな線として確認できることが多く、ひびの部分が白く浮き出ることがあります。
ひび割れた部分は敏感であり、この段階で痛みを感じる人もいます。
赤みと軽い炎症
ひび割れが進行すると、影響を受けた皮膚が赤くなり、触ると熱を持っているように感じることがあります。
かゆみ
ひびが深くなるにつれて、かゆみを伴うことがあります。
初期症状に気づいたらどうするか
保湿
日常的に保湿クリームやハンドクリームを使用し、特に洗い物をした後や外から帰ったときは、保湿を心がけてください。
保護
外出時には手袋を着用することで、寒さや風から皮膚を守ります。
また、化学物質や洗剤を使う際にはゴム手袋を使用して皮膚への直接的な刺激を避けましょう。
水分補給
体内からの水分補給も重要です。
十分な水分を取ることで、体内からも皮膚の乾燥を防ぐ手助けをします。
自分では判断がつかないようであれば皮膚科への受診を推奨します。
薬物療法など専門医が説明と対応をしてくれます。
あかぎれの検査・診断
あかぎれに対する診断では、特定の検査というものはありませんが、主に臨床診断が中心となります。
医師は患者さんの症状や皮膚の外観を基に診断を行いますが、以下のようなアプローチが一般的です。
- 症状の評価
医師が患者さんの皮膚の状態を観察し、痛み、赤み、ひび割れの程度を評価します。
この初期評価は、あかぎれの重症度を判断するために重要です。 - 患者の生活習慣と環境の聴取
患者さんの日常生活や職業、最近の気候の変化などについて質問します。
これにより、あかぎれが発生した原因を特定しやすくなります。
例えば、頻繁に水に触れる作業をしている場合や、屋外での冷たい環境に長時間さらされている場合などがあげられます。 - 細菌培養検査
もし、あかぎれ部分に感染している疑いがある場合、皮膚からサンプルを採取して、細菌培養検査を行うことがあります。
これにより、適切な抗生物質の選択が可能になります。 - ほかの皮膚疾患の除外
似たような症状を示すほかの皮膚疾患を除外するために、必要に応じて追加の検査を行うことがあります。
これにはアレルギー反応や感染症、その他の皮膚病が含まれることがあります。
あかぎれの治療
保湿剤の使用、保護手袋の着用、十分な水分摂取などが一般的な治療法です。
また、症状が悪化する場合や改善が見られない場合には、さらに専門的な治療が必要となることがあります。
保湿
あかぎれの最も基本的な治療は保湿です。
保湿クリームや軟膏を定期的に塗ることで、皮膚が柔らかく保たれ、ひび割れが防げます。
特に、無香料で刺激の少ない製品を選ぶことが重要です。
就寝前に厚めに塗り、綿の手袋や靴下を着用すると、一晩中しっかりと保湿が行えます。
環境の調整
室内の湿度を適度に保つために加湿器を使用すると、皮膚の乾燥を防ぐのに役立ちます。
特に暖房を多用する冬場は、加湿器が有効です。
保護措置
冷たい外気や水仕事から手を守るために、保護手袋を着用しましょう。
特に洗剤を使用する際は、ゴム手袋を使用して、直接的な化学物質の接触を避けることが肝心です。
適切な栄養
皮膚の健康を支えるビタミン類をしっかり摂ることも大切です。
ビタミンCやEを豊富に含む食品を摂取すると、皮膚の修復を助けることができます。
重症の場合の対応
あかぎれが重症化し、深いひび割れや出血が見られる場合は、皮膚科医の診察を受けることが推奨されます。
使用する薬剤
1.保湿クリーム/軟膏
- 尿素クリーム:尿素含有クリーム(例:ウレパール)を使用すると、角質を柔らかくし、保湿をサポートします。
- ヒルドイド軟膏:保湿とともに血行を促進し、皮膚の再生を助けます。
2.保護バリアクリーム
特に夜間、就寝前に塗ると効果的です。
3.外用ステロイド薬
炎症が強い場合、医師の処方に基づいて軽度のステロイド軟膏(例:プレドニゾロン軟膏)を使用することがあります。
これにより、炎症やかゆみを抑えることができます。
あかぎれになりやすい人・予防の方法
あかぎれになりやすい人
- 頻繁に手を洗う人:家事(食器洗いや掃除など)をよくする人、医療従事者や料理人など、頻繁に手を洗う人は、皮膚が乾燥しやすく、あかぎれになりやすいです。
- 寒冷な環境にいる人:寒い地域に住んでいる方や、屋外での作業が多い人は、低温での外気が直接皮膚に触れるため、あかぎれを発症しやすくなります。
- 乾燥肌の人:本来乾燥肌の方は、皮膚のバリア機能が弱く、小さな刺激にも敏感です。このため、あかぎれを発症しやすい傾向にあります。
あかぎれの予防の方法
適切な保湿・保温
手足の保湿はあかぎれを予防する最も基本的な方法です。特に洗手後や入浴後は、保湿クリームやハンドクリームでしっかりと保湿を行いましょう。
冬場に気温が下がると湿度も低下し、この乾燥した環境が皮膚の水分を奪います。手足の露出部分は特に影響を受けやすいため、保湿クリームをこまめに使用し、手袋や靴下で保護することが効果的です。
室内の湿度調整
室内の湿度を適切に保つことも大切です。特に暖房を使う冬場は、加湿器を活用して室内の空気を乾燥から保護しましょう。
手袋の着用
寒い日には外出時に手袋を着用し、手を保護することが重要です。また、洗剤を使用する際はゴム手袋を着用し、化学物質から皮膚を守りましょう。
頻繁な手洗いや消毒を避ける
衛生を保つために重要な手洗いですが、過度に行うと皮膚の自然な油分が失われ、あかぎれを引き起こす原因となります。
アルコール消毒も同様に皮膚を乾燥させるため、使用後は必ず保湿を心がけましょう。
化学物質への露出を避ける
洗剤やクリーナーなど、強い化学物質に普段から触れていると、それが皮膚を刺激し、あかぎれの原因となります。作業時は保護手袋を着用する、自然由来の優しい洗剤を選ぶなどの対策をお勧めします。
保護手袋も肌に合ったタイプのものを選択すると良いでしょう。
栄養バランスの良い食事
皮膚の健康を維持するためには、ビタミンやミネラルが豊富な食事を心掛けることが効果的です。特にビタミンCやEは皮膚の修復に役立ちます。
健康状態を整える
身体の内部からの影響も無視できません。例えば、ビタミン不足や脱水症状は皮膚の健康に直接影響を及ぼし、あかぎれを促進させることがあります。
バランスの取れた食事と十分な水分摂取が重要です。
参考文献
- 手湿疹診療ガイドライン
- 皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020