監修医師:
井林雄太(田川市立病院)
しみの概要
しみは、肌に現れる茶色や黒っぽい斑点で、顔や手の甲、腕など日光にさらされやすい部分に多く見られるものです。
一般的に「しみ」と呼ばれますが、医学的には後天的にできる色素沈着を指します。
この中には、老人性色素斑(日光黒子)、肝斑、雀卵斑(そばかす)、後天性太田母斑様色素斑、炎症後色素沈着などがあります。
これらのしみの中でも、老人性色素斑が最もよく見られますが、複数の種類のしみが同時に存在することもあります。
しみは見た目に影響を与えるだけでなく、健康にも影響を及ぼす可能性があるため、正確な診断が重要です。
しみの原因
しみの多くは、メラニン色素の増加によって引き起こされる色素異常の一種で、主に紫外線やホルモンの変化、炎症の影響を受けます。
メラニンは皮膚の色を決める色素で、肌の基底層という部位に存在する「メラノサイト」という細胞によって生成され、紫外線から肌を守る役割を果たします。
しみの種類ごとに、原因を詳しく見ていきましょう。
老人性色素斑
老人性色素斑は、40歳以上で特に多く見られるしみです。
加齢と紫外線が主な原因で、日光にさらされる顔や手の甲・前腕などに、褐色から黒色の色素斑として出現します。
紫外線による長期間の露出が、メラノサイトを刺激し、メラニンの産生を増加させます。
肝斑
肝斑は、特に30代から40代の女性に多く、頬や額、上唇に対称的に現れる色素斑です。
紫外線と女性ホルモンのバランスが主な原因とされ、妊娠やピルの使用が悪化要因となることがあります。
メラノサイトが通常よりも多くのメラニンを産生し、しみの原因となります。
雀卵斑
雀卵斑は主に頬や鼻に現れる小さな褐色の斑点です。
遺伝的要因が強く、思春期に目立つようになります。
日光にさらされるとメラニンの産生が促進され、紫外線によって悪化します。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着は、ニキビややけど、湿疹などの炎症が治った後に生じる色素沈着です。
炎症によってメラノサイトが刺激を受け、過剰なメラニンが生成されることで発生します。
後天性太田母斑様色素斑
後天性太田母斑様色素斑は、20歳以降に両側の額や頬に現れる紫褐色の色素斑です。
メラノサイトが真皮層に存在し、メラニンが肌の深い部分で増加するために起こります。
これは他のしみとは異なり、青く見えるのが特徴です。
しみの前兆や初期症状について
しみの中には、注意が必要な症状もあります。
一見しみに見えても悪性の可能性があるため、定期的に自分の皮膚をチェックすることが重要です。
しみの初期症状
まずは、主なしみの初期症状を把握しておきましょう。
老人性色素斑
褐色の色素斑が顔など紫外線によく当たる部位に現れます。
やや盛り上がっている場合や、かさかさしている場合もあり、進行すると「脂漏性角化症」になります。
痛みやかゆみなどの自覚症状はありません。
肝斑
特に30歳以降の女性に多く、妊娠やホルモン療法に関連して発生することがあります。
特に、頬から目尻あたりに発生しやすく、淡褐色の境界がはっきりした色素斑として現れます。
雀卵斑顔や腕、背中などの紫外線が当たりやすい部位に、通常、直径1〜2mm程度の茶色や淡褐色の小さな斑点が現れます。
炎症後色素沈着
茶色や黒色の斑点として皮膚に現れ、炎症が治まった後でも長期間にわたって色素沈着が残ることがあります。
後天性太田母斑様色素斑
思春期以降の女性の顔に左右対称にできる褐色斑です。
頬骨の部分に点状で多発し、まぶたや鼻にも現れるケースもあります。
額では、不整型の大きな褐色斑となる場合もあります。
注意が必要な症状
しみが出現した場合、注意が必要な症状は以下の通りです。
- しみの形が左右対称でない
- しみの境界が不明瞭でギザギザしている
- しみの色調が均一でない
- しみの直径が6mm以上あり、大きさが増している
しみがある場合、まずは皮膚科の受診が推奨されます。
皮膚悪性腫瘍との鑑別が必要な場合は早期発見と適切な治療が重要なので、気になる症状があれば早めに相談しましょう。
しみの検査・診断
しみの正確な診断は、見た目の変化だけでなく、健康への影響を防ぐためにも重要です。
老人性色素斑
老人性色素斑は、円形や楕円形、多角形、不正型など様々な形をした褐色斑として現れます。
部分的にいぼのように盛り上がることもあります。
見た目がメラノーマの初期病変である悪性黒子に似ているため、専門医による視診やダーモスコピー、
皮膚生検によって慎重に鑑別します。
肝斑
肝斑は、褐色の色調を持ち、目の回りを避けて顔に左右対称に現れるのが特徴です。
色素の境界が明瞭であるため、視診によって診断されます。
肝斑と日光黒子が合併している場合も多いため、注意が必要です。
後天性両側性太田母斑様色素斑
発症年齢や典型的な症状から診断されます。
皮膚生検を行い、真皮内にメラノサイトの存在を確認することで確定診断が可能です。
しみの治療
しみの治療法は、しみの種類に応じて異なります。
一般的に、紫外線の影響で発生する老人性色素斑や肝斑、雀卵斑などには、ビタミン剤やトラネキサム酸の内服、
ハイドロキノン配合の外用薬、紫外線対策(UVケア)が効果的です。
レーザー治療に関しては、しみの種類によって適応が異なるため、以下で詳しく説明します。
老人性色素斑
老人性色素斑は、ビタミン剤やトラネキサム酸の内服、ハイドロキノン配合の外用薬、UVケアが有効ですが、
特にレーザー治療による効果が期待できます。
レーザー治療はメラニンを標的として照射するため、しみが一時的に濃く見えることがありますが、
これはかさぶたが形成されているだけです。約1週間で自然にはがれ落ち、元の肌色に戻ります。
光治療(IPL治療)は術後の肌トラブルが少ないものの、複数回の照射が必要です。
肝斑
肝斑はビタミン剤やトラネキサム酸の内服、ハイドロキノン配合の外用薬が主な治療法です。
患部に摩擦を与えないようにすることが重要で、レーザー治療や光治療の適応は難しいため、
医師と相談しながら進めることが推奨されます。
雀卵斑
雀卵斑には、レーザー治療や光治療が有効です。
レーザー照射後はかさぶたが形成されることがありますが、光治療のメリットとして術後の肌トラブルが少ない点が挙げられます。
ただし、紫外線暴露で再発しやすいため、日々のUVケアをしっかり行うことが必要です。
後天性太田母斑様色素斑
色素斑の原因となるメラニンが皮膚の深層にあるため、通常の美白剤や外用薬では効果が得られません。
治療にはレーザー療法が有効で、特にQスイッチ付きルビーレーザーがよく用いられます。
このレーザーは、メラニン色素をターゲットにして破壊し、色素沈着を減少させます。
ただし、レーザー治療は複数回の施術が必要であり、患者さんごとの肌の状態に合わせた治療計画が必要です。
しみになりやすい人・予防の方法
しみができやすい要因には、遺伝的な素因や生活習慣、環境要因などが関与しています。
特に紫外線はしみの発生に大きな影響を与えるため、長時間紫外線を浴びることが多い人や中高年の人は、
老人性色素斑ができやすい傾向にあります。
また、妊娠中や更年期の女性、女性ホルモン剤を使用している人は、肝斑ができやすい可能性があります。
しみを予防するためには、日光を避け、顔を擦らないようにし、ホルモン剤を内服している場合は中止を検討します。
日常生活では日焼け止めを塗ったり、サングラス・日傘を使用するなどのUVケアを徹底することが重要です。
参考文献
- https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyo2v.pdf
- https://plaza.umin.ac.jp/~jocd/disease/disease_01.html
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/koshohin/44/1/44_440104/_pdf
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjmj/52/3/52_437/_pdf
- https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000292.html
- https://www.dermatol.or.jp/qa/qa12/q03.html
- https://jsprs.or.jp/general/disease/biyo/shimi.html