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高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

寒冷蕁麻疹の概要

皮膚に膨疹や赤みが現れ激しいかゆみを感じるのが蕁麻疹です。膨疹とは、虫刺されやみみず腫れのような膨らみのことです。
そのなかでも、寒さや冷たさの刺激を受けることによって蕁麻疹が引き起こされるものを寒冷蕁麻疹といいます。有病率は全人口の0.05% 程度です。すべての蕁麻疹に占める寒冷蕁麻疹の割合はおおよそ2.3%といわれています。
年齢に関わらず発症し、寒暖差が原因となるため冬場に症状を訴える人が増えるのが特徴です。
寒さや冷たさの刺激を受けた直後に発症し、ほとんどの場合は数時間程度で自然に症状が消えますが強いかゆみが数時間も続くのは大きな苦痛を伴い、ひどい場合にはかゆみではなく痛みを感じることもあります。
寒冷蕁麻疹は発症の形態によって局所性と全身性の2種類に分けられます。多くは急激な温度差に晒された場所だけに現れる局所性寒冷蕁麻疹です。冷やされる場所が全身に及ぶと症状が部分的でなく全身に現れるため、これを全身性寒冷蕁麻疹といいます。

寒冷蕁麻疹の原因

寒冷蕁麻疹は、寒冷刺激を受けることによってかゆみを引き起こすヒスタミンという物質が分泌されて膨疹やかゆみなどが現れると考えられています。

ただし、なぜ寒冷刺激を受けるとヒスタミンが分泌されるのかなど、詳しいメカニズムについてはよくわかっていません。

何らかのアレルギー反応や免疫反応が関係しているといわれたり、まれにですが遺伝が関係しているといわれたりもします。

また、局所性寒冷蕁麻疹と全身性寒冷蕁麻疹では原因となるものが多少異なります。

局所性寒冷蕁麻疹の原因

局所性寒冷蕁麻疹は、部分的に水や氷に触れたり冷たい風に当たったりすることが原因と考えられます。具体的には以下のような行動が原因となり得ます。

  • 冷たい水で洗い物をする
  • 寒い日に部分的に肌が出ている状態で外に出る
  • 裸足でフローリングを歩く

全身性寒冷蕁麻疹の原因

全身性寒冷蕁麻疹は、全身が冷える以下のような場面や行動が原因と考えられます。

  • 暖かい室内から寒い廊下や屋外に出る
  • エアコンで冷えた部屋に入る
  • プールや海・川に入る
  • 寒い日にお風呂から上がったり運動後の後で汗が冷えたりする
  • 冷たい飲み物や食べ物を取る

寒冷蕁麻疹の前兆や初期症状について

寒冷蕁麻疹は、寒さや冷たさを感じた直後にかゆみを感じたり皮膚に赤みが現れたりするもので、その初期症状はかゆみだけや赤みまたは膨疹だけという場合が多いでしょう。

症状が本格化しても基本的にはこれ以上に深刻な症状にはなりにくい病気ですが、放置すればかゆみが強くなったり痛みを伴ったり、あまり多くはありませんが呼吸が苦しくなったりすることもあります。

こういった症状が起こった場合は、皮膚科を受診しましょう。

多くの場合は、数十分から数時間または半日程度でかゆみや赤みなどの症状は治まります。
そのため、皮膚科を受診する頃には、赤みや膨疹の痕さえも消えてしまっているということもあります。

ただし、一度寒冷蕁麻疹を発症すると次に寒冷刺激を受けたときに寒冷蕁麻疹の症状を繰り返す人も少なくありません。

また、全身に症状が出ている場合は血圧が低下して意識を失うなど重大なショック症状も起こり得ます。その他にも、蕁麻疹と似たようなまぎらわしい別の病気の可能性も捨てきれません。

かゆみがなかなか治まらない場合や膨疹が慢性化している場合は、自己判断せずに必ず皮膚科を受診してください。

また、蕁麻疹が出たときはその部位をスマートフォンなどで撮影しておくのもいい方法です。
後で病院を受診した際に症状をうまく説明できない方もいらっしゃるからです。

寒冷蕁麻疹の検査・診断

寒冷蕁麻疹は、問診によって診断することがほとんどです。

24時間以内に膨疹や赤みなどが跡も残らずきれいに消えていれば蕁麻疹と診断でき、そのうえで症状が出たときの状況を伺って寒冷刺激が原因と考えられるものを寒冷蕁麻疹と診断します。

蕁麻疹は症状を引き起こしているものを排除することが治療の一つとなるため、原因を特定することが重要ですが、血液検査によって原因を突き止めることができません

問診によって寒冷刺激が疑われるもののはっきりと特定できない場合などには、寒冷負荷試験を行って確認することもあります。

寒冷負荷試験とは、冷水を入れた試験管や氷を腕に当てて、症状が出るかどうか確認するものです。

全身性寒冷蕁麻疹が疑われる場合には、低温室に数分から30分程度入ってもらい、膨疹が出るかどうか見るという方法が行われることもあります。

寒冷蕁麻疹の治療

寒冷蕁麻疹の治療は、2つのアプローチで行います。

薬物療法

寒冷蕁麻疹に限らず蕁麻疹の症状全般に行う治療ですが、現在出ているかゆみや膨疹などの症状を抑えるために薬を服用します。薬は基本的に抗ヒスタミン薬の服用となるでしょう。抗ヒスタミン薬は眠くなるイメージがあるため、運転や仕事に支障が出るということで嫌がられる場合があります。しかし、眠くなりにくい薬もあるので医師や薬剤師に相談してみてください。薬の種類は病院や症状によって異なる場合もあります。例えば急性の場合は抗ヒスタミン薬、慢性の場合は抗アレルギー薬と段階によって薬の種類が異なるかもしれません。また、重症の場合はステロイドの内服または点滴となることもあります。

原因・悪化因子の排除

蕁麻疹の原因となる刺激を避けて再発を防ぎます。寒冷蕁麻疹は刺激誘発型と呼ばれる蕁麻疹で、このタイプは刺激を避けることが治療の中心です。それでも生活するうえで避けられなかったりコントロールできなかったりする寒冷刺激によって何度も繰り返し発症してしまうような場合には、薬の服用を続けることもあります。

寒冷蕁麻疹になりやすい人・予防の方法

寒冷蕁麻疹に限ったものではありませんが、蕁麻疹は20代から40代の女性が発症しやすいといわれます。男性と女性では1:2の比率で女性に多く見られる症状です。

予防法としては、以下のようなことが挙げられます。

寒暖差をなるべくつくらない

寒冷蕁麻疹を繰り返してしまう人は、症状の出やすい部位に重ね着をしましょう。冬場は暖房の効いた室内から屋外、夏場は猛暑の屋外からエアコンの効いた室内へ移動する瞬間に注意が必要です。気温の低い場所に行く前に防寒対策をしてください。

冷たい食べ物・飲み物を避ける

夏場に冷たいアイスを食べたり、氷入りの飲み物を飲んだりするのはできるだけ避けます。どうしても口にしたい場合は、一気に食べたり飲んだりせずにゆっくり少量ずつにしましょう。また、冷たい食べ物・飲み物は体を冷やすため、常温のものを選ぶよう心がけましょう。

体を冷やさない

夏場のプールや山・川での水遊び、水風呂などが寒冷刺激になり得ます。これらは全身を冷たい水につけることになるため、症状が出る範囲が広く重くなりやすいため避けた方がいいでしょう。また、冬場は入浴で温まった体が湯冷めで冷えることにも注意が必要です。水遊びや入浴後は早めに体を拭き、温かい衣服を着て体を冷やさないように心がけましょう。適切な水分補給も忘れてはなりません。

足元を冷やさない

夏も冬も、足元は冷えやすいものです。家のなかでも靴下やスリッパ、場合によってはレッグウォーマーなどを履いて足元の冷え対策を重点的に行ってください。冬だけでなく夏もエアコンによって冷えやすいので、ひざかけやブランケットなどを使って調節しましょう。

規則正しい生活で

自律神経の乱れは、かゆみや赤みなどの症状を悪化させます。食事や睡眠の時間をできるだけ大きくずらさないようにして生活リズムを整え、十分な睡眠時間を確保して適度な運動でストレスをためないようにし、バランスのいい食事を心がけましょう。基本的な体調をよい状態にキープしておくことも大切です。


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