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高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

脂漏性角化症(老人性疣贅)の概要

脂漏性角化症は、一般的によく見られる皮膚の良性腫瘍で、中高年以降に多い皮膚疾患です。
見た目は茶色や黒色のイボのようなもので、肌の表面に隆起して認められます。表面がテカテカと脂のように光って見えることもあり、「脂漏性」角化症と言われています。

この腫瘍はどこの部位の皮膚にも発生しますが、特に顔、胸、背中、肩、腕などの皮脂腺の目立つ部分に多く発生します。
通常の脂漏性角化症は癌ではなく、健康に重大な影響を及ぼすことはほとんどありませんが、美容的観点や物理的な不快感から治療・切除を希望する人もいます。

脂漏性角化症(老人性疣贅)の原因

脂漏性角化症の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
主な要因には以下のものがあります。

遺伝的要因

脂漏性角化症は家族で遺伝する傾向があります。
これは、特定の遺伝子がこの疾患の発生に寄与している可能性を示唆しています。

加齢

年齢が進むにつれて脂漏性角化症の発生頻度が増加します。
一般的に中年以降に見られることが多くなっています。
そのため、老人性疣贅、老人性いぼと言われることもあります。

日光曝露

紫外線に長時間曝露されることにより、脂漏性角化症のリスクを高める可能性があります。
そのため、日光にさらされやすい部位に多く見られます。

ホルモンの影響

妊娠やホルモン治療など、ホルモンの変動が脂漏性角化症の発生に影響を与える場合があります。

脂漏性角化症(老人性疣贅)の前兆や初期症状について

小さな斑点

最初は小さな褐色から茶色、黒色の斑点として現れ、時間とともにサイズが大きくなることがあります。

表面の質感

初期段階では周りの皮膚と同じような滑らかな表面になっていますが、時間とともに表面が粗く、イボ状に隆起してきます。
また一部の腫瘍は角質化し、表面がざらざらしている場合が多くなっています。

大きさ

直径数ミリメートルから数センチメートルに至るまで、大きさもさまざまです。
時間が経つにつれて大きくなることがありますが、一定のサイズで止まることもあります。
なお、もともとあった脂漏性角化症が急速に増大する場合、悪性腫瘍に変化した可能性もあります。

かゆみや刺激

初期にはかゆみや軽い刺激感を伴うことがありますが、通常は痛みはありません。

多発性

一つだけでなく、複数同時に発生することもあり、特に高齢者で多発する傾向があります。
特に、通常、脂漏性角化症はゆっくりと増大したり、ぽつぽつと増えたりしますが、短期間で多数の新しい脂漏性角化症が発生することがあり、これをLeser-Trelat徴候と呼びます。

これは胃がん、大腸がん、肝がん、膵臓がん、リンパ腫などの内臓悪性腫瘍と関連していると言われており、脂漏性角化症が急激に多発した場合は、内臓臓器の検査を行うことが推奨されています。
内臓悪性腫瘍が特定の成長因子やサイトカインを異常に分泌し、これが皮膚の表皮細胞に作用して脂漏性角化症の形成を促進するという説や、悪性腫瘍によって引き起こされる免疫系の変化が関連している、と考えられています。

そのため、血液検査、CT検査、内視鏡検査などを含む詳細な内臓の検査を行うことが重要です。
なお、腫瘍が見つかるまでに数ヶ月程度の時間差を示すことがあるため、注意深い観察が必要です。

脂漏性角化症の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、皮膚科です。
脂漏性角化症は皮膚にできる良性の腫瘍であり、皮膚科で診断と治療が行われています。

脂漏性角化症(老人性疣贅)の検査・診断

視診

肉眼で皮膚の変化を観察し、特徴的な外観を確認します。
脂漏性角化症は一般的に容易に識別できるため、視診のみで診断が可能なことが多い病変です。

ダーモスコピー

ダーモスコピーは拡大鏡の一種であり、皮膚の表面を詳しく観察することができます。
これにより、脂漏性角化症に特有な色調やパターンの変化を確認できます。
色調の分布として、全体的に均一な暗褐色または黒色、青色調の色調を示します。

表面に現れる特有のパターンとして、例えば、指紋様構造、脳回転様外観や敷石状外観と言った溝・隆起の構造、焦げ茶色で境界明瞭なクレーターのような構造物である面皰様開大、白くてぼんやりした円形の構造物である多発性稗粒腫様囊腫、繊細なヘアピン様血管を確認できます。
また脂漏性角化症の場合は腫瘍と周囲の皮膚との境界がはっきりしています。

生検

必要に応じて、病変の組織の一部を切り取り、顕微鏡で病理学的に検査します。特に悪性腫瘍との鑑別が必要な場合に行われます。
組織を詳しく調べることで、腫瘍細胞が脂漏性角化症として矛盾しないか、また、腫瘍を構成している細胞に悪性を考える所見がないかを検討し、最終的に脂漏性角化症の診断が確定されます。

脂漏性角化症(老人性疣贅)の治療

脂漏性角化症は良性の腫瘍であり、治療は通常必須ではありませんが、美容上の理由や物理的な不快感から治療を希望する場合があります。治療法には以下のものがあります。

凍結療法(クライオセラピー)

一般的な治療法であり、簡単かつ迅速に行うことができます。
液体窒素を綿棒やスプレーで腫瘍に直接適用し、腫瘍の細胞を凍結・壊死させます。

凍結された組織は数日から数週間で自然に脱落します。
治療後の皮膚は自然に回復するため、通常は傷跡が残りません。
手軽でコストが低く、短時間で施術が完了する、と言う利点もあります。

ただし、凍結による一時的な痛みや腫れが生じることがあり、色素沈着や脱色が起こることもあります。

レーザー治療

高エネルギーのレーザー(二酸化炭素レーザー)を腫瘍に照射し、腫瘍を焼灼して蒸散させます。
レーザー治療は精密であり、周囲の健康な皮膚に対する影響が少ないため、美容的な観点からも有効です。
治療後の回復も早いとされています。感染のリスクも低いと言われています。

ただし、通常の病気に対する治療とは異なるため、治療費が高額になる場合があり、専門的な設備と技術が必要です。

外科的切除

外科的にメスを用いて腫瘍を切除する方法で、大きな腫瘍や再発した場合に用いられます。
腫瘍が大きい場合に行われることが多く、切除後は縫合することが多くなります。
局所麻酔下で行われ、完全に除去することで再発を防ぐことができます。

また、悪性腫瘍に変化した可能性がある場合も切除されます。
大きな病変を切除すると、手術後の傷跡が残る可能性があり、感染リスクもあります。
そのため、切除による治療後は患部を清潔に保ち、感染のリスクを減らすために適切な湿潤を基本とした保護を行います。

電気焼灼

電気メスなどで高周波電流を使用して腫瘍を焼灼する方法です。

治療後に一時的な痛みや腫れが生じることがあり、傷跡が残ることもあります。

脂漏性角化症(老人性疣贅)になりやすい人・予防の方法

通常は悪性ではないため、命に関わるものではありませんが、定期的な皮膚検査を行うことで、早期に発見し、適切な対処を行うことができます。

遺伝的要因

家族に脂漏性角化症の既往歴がある場合、発症リスクが高くなります。
遺伝的な要因に対する予防は難しいですが、定期的に医師の診察を受けたり、自分で観察したりすることで、早期発見や早期の治療が可能となります。

日光曝露の調節

紫外線の影響を避けるため、日焼け止めを使用したり、長時間日光にさらされることを避けたりすることが重要です。
特に日中の強い日差しを避けるよう心掛けましょう。

健康的な生活習慣

バランスの取れた食事と適度な運動を心掛けることで、全体的な健康を維持し、皮膚の健康を促進します。

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