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高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

乾癬(かんせん)の概要

乾癬は、皮膚に赤い斑点と白い鱗のようなものができる慢性的な病気です。

この病気は、皮膚が新しく作られるサイクルが異常に速くなることで起こります。
通常の皮膚は約28日かけて新しくなりますが、乾癬の患者さんの場合、これが数日で行われてしまうため、古い皮膚が剥がれ落ちずに積み重なり、鱗のようになります。
乾癬は見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みを伴うこともあります

また、関節炎や心臓病、糖尿病などの併存症を引き起こすこともあります

さらに、乾癬は患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与え、心理的な負担も増大します。
特に、社会的な場面での不安や自尊心の低下など、精神的な影響も大きいです。

乾癬の原因

乾癬の原因は完全にはわかっていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。

まず、遺伝的な要因が大きく、家族に乾癬の人がいる場合、そのリスクが高まります。
さらに、免疫系の異常も関係しています。

通常、免疫系は身体を守るために働きますが、乾癬の患者さんでは免疫系が皮膚細胞を攻撃してしまいます。

この結果、皮膚の新陳代謝が異常に速くなります

また、外傷や感染、特定の薬剤、ストレス、寒冷な気候なども乾癬を引き起こす引き金となることがあります。
最近の研究では、遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合って発症することが示唆されています。

例えば、特定の遺伝子を持つ人が感染症にかかったり、強いストレスを受けたりすると、免疫系が過剰に反応し、皮膚の細胞が急速に増殖することで乾癬が発症します。

また、生活習慣も影響を与えることがわかっています。
肥満や喫煙、過度のアルコール摂取は乾癬のリスクを高める要因となります。

乾癬の前兆や初期症状について

乾癬の初期症状には、皮膚に赤くて厚みのある斑点が現れることがあります。
< これらの斑点は鱗のような白い層に覆われることが多い傾向です。

かゆみや痛みを伴うこともあります。

特に、肘や膝、頭皮など、摩擦を受けやすい部分に発生しやすいです。

また、爪にも影響が及ぶことがあり、爪がデコボコになったり、変色したり、爪が爪床から離れてしまうことがあります。
乾癬にはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なる症状が見られます。
以下に主要なタイプとその症状を説明します。

  • 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
    最も一般的なタイプで、赤く盛り上がった皮疹とその上に重なる白い鱗が特徴です。
    かゆみや痛みを伴うことが多いようです。
  • 滴状乾癬(てきじょうかんせん)
    小さな水滴状の皮疹が全身に広がります。通常は急に発症し、特に子どもや若者に見られます。
    しばしば喉の感染症が引き金となります。
  • 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

    膿の入った小さな水疱が現れる重症型です。全身に広がることもあり、大変痛みを伴います。

    また、発熱や全身の不調を引き起こすことがあります。

  • 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
    関節にも炎症が起こり、痛みや腫れを伴います。特に指やつま先に症状が現れることが多いようです。
    皮膚の症状が先行したり、逆であったりします。進行すると関節の変形を引き起こすことがあります。

尋常性乾癬の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、皮膚科です。
尋常性乾癬は皮膚の慢性炎症性疾患であり、皮膚科で診断と治療が行われています。

乾癬の検査・診断

乾癬の診断は主に医師の視診によって行われます。
<医師は皮膚の状態を見て診断しますが、必要に応じて皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べることもあります。
これを皮膚生検といいます。

乾癬の典型的な症状は、境界がはっきりとした赤い斑点と、その上に乗った白い鱗です。

また、関節炎の症状がある場合は、その検査も行われます。
関節炎があるかどうかを確認するために、関節のX線や超音波検査が行われることもあります。

また、血液検査を通じてほかの疾患との鑑別を行うこともあります。
例えば、リウマチなどのほかの自己免疫疾患との鑑別が重要です。

乾癬の診断には、総合的な評価が必要であり、特に併存症が疑われる場合には科をまたいだ連携も重要になります。

乾癬の治療

乾癬の治療法は、患者さんの症状や生活習慣、その他の健康状態によって異なります。
まず、軽度の乾癬には皮膚に直接塗る薬(外用薬)が用いられます。
これは炎症を抑えたり、皮膚の新陳代謝を正常に戻したりします。
ステロイド剤やビタミンD3の誘導体が一般的です。

中程度から重度の乾癬には、紫外線を使った療法(光線療法)や、内服薬や注射薬を使用する治療(全身療法)が用いられることがあります。
光線療法では、特定の紫外線を皮膚に当てることで症状を改善します。
これは病院で行うことが一般的です。

全身療法には、免疫系の特定の部分を標的にした生物学的製剤と呼ばれる薬が効果的であることがわかっています。
これには、免疫の働きを調整する特定の薬の種類(TNF-α阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬)があります。
例えば、TNF-α阻害薬は、炎症を引き起こす物質であるTNF-αというタンパク質を抑える働きがあります。

また、乾癬性関節炎のように関節の症状がある場合には、抗リウマチ薬や生物学的製剤が使用されます。
これらの薬は関節の炎症を抑え、関節の破壊を防ぐ効果があります。
薬の選択は、症状の重さや患者さんの生活スタイルに応じて決定されます。

さらに、心理的なサポートも不可欠です。
乾癬は見た目に影響を与えるため、患者さんは心理的なストレスを感じやすいです。
カウンセリングやサポートグループの参加が勧められ、精神的な健康を保つための支援が提供されます。

乾癬になりやすい人・予防の方法

乾癬になりやすい人には、家族に乾癬の患者さんがいる場合や、肥満、喫煙、アルコールの多量摂取、ストレスが多い生活をしている人が含まれます。

また、寒冷な気候も乾癬を悪化させる要因の一つです。

予防の方法としては、健康的な生活習慣を維持することが重要です。
バランスの取れた食事、定期的な運動、適度な睡眠、ストレス管理が有効です。
また、皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐことも乾癬の予防に役立ちます。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • バランスの取れた食事

    野菜や果物、魚などを多く摂取し、脂っこい食べ物や加工食品は控えめにします。
    オメガ3脂肪酸を含む食品(例えば、サーモンやマグロ)は炎症を抑える効果があるとされています。

  • 定期的な運動

    運動はストレスを軽減し、心血管の健康を保つために重要です。適度な運動を日常生活に取り入れることが推奨されます。

  • 適度な睡眠

    睡眠は身体の回復と免疫機能の維持に不可欠です。
    十分な睡眠を確保することで、乾癬の症状を軽減することができます。

  • ストレス管理

    ヨガや瞑想、深呼吸などのリラクゼーション技術を活用して、ストレスを軽減します。
    ストレスは乾癬の悪化要因の一つです。

  • 禁煙

    喫煙は乾癬を悪化させる要因の一つです。禁煙をすることで、症状の改善が期待できます。

  • アルコールの節制

    アルコールの多量摂取は乾癬を悪化させる可能性があるため、節度ある飲酒が推奨されます。

  • 皮膚のケア

    保湿剤を使って皮膚をしっかりと保湿します。
    乾燥は乾癬の症状を悪化させるため、毎日のスキンケアが重要です。

  • 適度な紫外線

    適度に日光浴をすることは皮膚の健康に良い影響を与えることがありますが、過度な日光浴は逆効果です。
    日焼け止めを使用して皮膚を守りましょう。

参考文献

  • 渡部龍、ほか:全身疾患としての乾癬 Overview “乾癬マーチ”:乾癬は全身疾患である. 内科 2022: 129(1): 5-7.
  • 高橋英俊:皮膚から診断する全身疾患 メタボリック症候群と皮膚科疾患 乾癬とメタボリック症候群. 日皮会誌 2012: 122(13): 3586-7.
  • 森田明理:全身性炎症疾患としての乾癬とその治療. The Psoriasis 2019: 10-5.

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