内耳炎

監修医師：
渡邊 雄介（医師）

内耳炎の概要

内耳炎（ないじえん）は鼓膜よりも奥に存在する「内耳」の炎症です。

内耳は音を感じ取る役割をもつ「蝸牛（かぎゅう）」と、身体のバランスを整える「三半規管（さんはんきかん）」などから構成されています。これらが炎症の影響を受けると、めまいや眼振（がんしん）、吐き気や嘔吐、耳鳴りなどの症状が現れることがあります。

内耳炎の発症機序で多いのは、慢性中耳炎が耳の奥にある内耳にまで及ぶケースです。

真珠腫性中耳炎（しんじゅしゅせいちゅうじえん）によって内耳の骨まで破壊される場合や、ヘルペスウイルスやムンプスウイルスなどが血液を介して内耳へと運ばれてきたことが原因で発症することもあります。

内耳炎は適切な治療をおこなわなければ重症化する恐れがあり、中耳炎が治っても内耳の機能に障害が残ることもあります。

急性中耳炎で耳が痛くなった後にめまいなどの症状が現れた場合は、内耳にも影響を及ぼしている可能性があるため、早めに耳鼻科を受診することが重要です。

内耳炎の原因

内耳炎の主な原因として、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎が内耳にまで波及するケースや、ウイルスが血液を経由して炎症を起こすケースなどがあります。

これらのなかでも慢性中耳炎が進行して、内耳炎を引き起こすケースが多いです。

また、耳の中の骨を破壊しながら進行する真珠腫性中耳炎が、内耳の骨も破壊することで発症する場合もあります。

またヘルペスウイルスやムンプスウイルスが血液循環に乗って内耳へと運ばれることで発症するケースもあります。

内耳には音を感知する「蝸牛（かぎゅう）」や平衡感覚をコントロールする「三半規管」などの組織が存在しています。

蝸牛にある有毛細胞（ゆうもうさいぼう）は一度損傷されると再生が困難であるため、内耳炎による障害が重症化すると聴力障害が残る恐れもあります。

内耳炎の前兆や初期症状について

内耳炎の症状は強いめまいや眼振、それにともなう吐き気や嘔吐、耳鳴りなどです。

これらの症状は身体のバランス感覚を司っている三半規管や、音を感知する器官である蝸牛が炎症によって障害を受けることで生じます。

また、急性中耳炎で耳の痛みを感じた後にめまいや難聴が現れる場合は、内耳炎も併発している可能性があります。

長期にわたって中耳炎を患っている場合も、めまいやふらつき、耳鳴りや聴力の低下のような症状が現れたら、内耳へ影響を及ぼしている可能性があります。

内耳炎の検査・診断

内耳炎が疑われる場合には、耳鏡検査や聴力検査、眼振検査や画像検査などの検査をおこないます。

耳鏡検査では、内耳炎が中耳炎からのものかどうかを確認するために、耳鏡を用いて中耳の状態を観察します。

内耳炎の場合は感音性難聴（かんおんせいなんちょう）という、内耳から脳へ音の刺激が伝わらないタイプの難聴になる可能性があるため、聴力検査を実施することもあります。

また、内耳炎では眼振という眼球が揺れ動く症状が出ることもあるため、専用の眼鏡を使用して詳しく調べたり、CTやMRIなどの画像検査で内耳炎の程度や炎症の範囲などを確認したりします。

これらの検査結果を総合的に判断し、内耳炎の診断とその後の治療方針を決めます。

内耳炎の治療

内耳炎の治療では、まず炎症を抑えるために抗生物質や抗菌薬などの薬剤を使用します。

慢性中耳炎が原因の内耳炎では、薬剤による治療に加えて、中耳炎の手術をおこなう場合もあります。

この手術は鼓膜形成術や鼓室形成術と呼ばれ、慢性中耳炎を治すことで内耳への影響も防ぐことを目的としています。

中耳炎は内耳へ影響を及ぼしやすく、また内耳は構造的に複雑で繊細であるため、異変を感じた場合は早期に治療する必要があります。

内耳炎になりやすい人・予防の方法

内耳炎は主に中耳炎によって引き起こされるため、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎を患っている人は内耳炎の発症リスクが高まります。

内耳炎を予防するためには、これら中耳炎の適切な管理と治療が重要です。

中耳炎を発症した場合は、できるだけ早く受診して適切な治療を受けることが、結果的に内耳炎の予防につながります。

ヘルペスウイルスやムンプスウイルスなど、何らかの感染症によって内耳炎を発症した場合は、原因となっている感染症の治療を受けることが内耳炎の予防となります。

内耳は一度ダメージを受けると回復が難しいとされている器官です。

とくに内耳にある有毛細胞は一度障害されると再生しないため、内耳炎による重篤な後遺症が残る恐れもあります。

聴力低下や耳鳴り、めまいや吐き気などの症状を感じた場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

慢性中耳炎がある場合は定期的に医師の診察を受け、内耳へ影響が及んでいないかどうか経過観察を受けることが重要です。