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好酸球性肺炎
松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

好酸球性肺炎の概要

好酸球性肺炎は、好酸球という白血球が肺に集まり、炎症を引き起こす疾患です。
急性型(Acute Eosinophilic Pneumonia:AEP)と慢性型(Chronic Eosinophilic Pneumonia: CEP)の2種類があります。

急性型は短期間で症状が進行し、呼吸困難や高熱が現れ、慢性型では症状がゆっくりと進行し、長期にわたる咳や息切れが生じます。
アレルギー反応と関係があると考えられており、人からうつることはありません。

好酸球性肺炎の治療には主にステロイド薬が使用されますが、再発しやすいため、長期的な治療と経過観察が必要です。

好酸球性肺炎

好酸球性肺炎の原因

好酸球性肺炎は、さまざまな原因によって肺に好酸球が異常に集まり、炎症を引き起こします。
主な原因は、喫煙、薬剤、アレルギー反応、感染症などです。

喫煙

喫煙は急性型の大きな原因であり、特に新たに喫煙を始めた人や、しばらく禁煙していて再開した人に起こりやすいです。
喫煙による煙や化学物質が肺に好酸球を引き寄せ、炎症を引き起こすことが原因だと考えられています。

薬剤

好酸球肺炎は以下の薬剤が原因で発症することがあります。(薬剤性好酸球性肺炎)

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):ロキソプロフェン、ディクロフェナク
抗リウマチ薬: メサラジン、サラゾスルファピリジン、メトトレキセート、シクロスポリン
抗生物質: ミノサイクリン、レボフロキサシン、クラリスロマイシン
抗てんかん薬: カルバマゼピン、フェニトインなど

薬剤性好酸球性肺炎は通常、急性に発症し、発症までの期間は数日から1週間以内であることが一般的です。

アレルギー反応

カビ(真菌)などのアレルゲンに対する過剰な免疫反応も、好酸球性肺炎の原因になります。
慢性型はアレルギー体質の人や喘息を持つ人に多く見られ、日常的にアレルゲンにさらされることで、肺に好酸球が集まり発症します。

感染症

感染症によって寄生虫が体内に侵入すると、免疫システムが反応し、好酸球が肺に集まって炎症を引き起こします。
熱帯地域では、回虫や鉤虫(こうちゅう)などの寄生虫感染が頻繁に報告されており、その結果として好酸球性肺炎が発生するケースが多いです。

好酸球性肺炎の前兆や初期症状について

好酸球性肺炎の症状には、咳や発熱、息切れ、胸の痛み、全身倦怠感などがあり、急性型と慢性型の症状で進行や強さが違います。
慢性型ではゆっくりと症状が進行し、長期にわたって症状が持続するため、自覚しにくいこともあります。

好酸球性肺炎の一般的な症状として咳が挙げられ、急性型では突然乾いた咳が出始め、数日から数週間の間に急速に進みます。
慢性型では乾燥した咳がしばらく続き、数週間から数ヶ月かけて徐々に進行します。

発熱

発熱は好酸球が肺に集まり、体内で炎症が起きているサインです。
好酸球性肺炎の一般的な症状であり、急性型では、数日以内に高熱が現れることが多く、体温が急激に上昇することがあります。
慢性型でも発熱は見られますが、急性型ほどの高熱ではなく、比較的軽度の熱が長期間続くことが特徴です。

息切れ

好酸球性肺炎では、急性型と慢性型のどちらでも息切れが発生します。
急性型では息苦しさが顕著に現れ、数日から数週間のうちに呼吸が困難になる一方、慢性型では運動時に息が切れやすくなり、徐々に症状が進行していきます。

胸の痛みや不快

好酸球性肺炎では炎症が急速に進行するため、胸部に痛みや不快感を感じることがあります。
特に急性型では胸の痛みが強く現れ、息を吸う際に痛みが生じやすいです。

全身倦怠感や体重減少

慢性型の好酸球性肺炎では、全身のだるさ(倦怠感)や体重の減少などの症状が見られることがあります。

好酸球性肺炎の検査・診断

好酸球性肺炎の診断には、血液検査、胸部X線、CTスキャン、気管支鏡検査(BAL)、必要に応じて肺生検(肺から組織を採取し検査する方法)が行われます。

血液検査

血液検査では、血中の好酸球数を調べます。

好酸球性肺炎では血液中の好酸球が通常よりも多くなり、特に慢性型では好酸球の増加が顕著です。
急性型の場合、発症初期には好酸球の増加が見られないこともありますが、病状の進行とともに徐々に増加します。

胸部X線・CTスキャン

胸部X線やCTスキャンでは、肺の状態を詳しく観察できます。
好酸球性肺炎で特徴的な所見は、肺の「すりガラス状陰影」や「浸潤影」です。
急性型では、特に肺全体にすりガラス状の陰影が現れることが多く、肺の上部に胸水が観察されることもあります。

気管支鏡検査(BAL)

気管支鏡検査(BAL)は、好酸球性肺炎の確定診断に重要です。
気管支鏡を用いて肺の内部から液体(BALF)を採取し、好酸球の割合を調べます。
BALFにおける好酸球の割合が25%以上の状態は、急性好酸球性肺炎の診断基準の一つです。
参考:好酸球性肺炎(急性好酸球性肺炎・慢性好酸球性肺炎)と気管支鏡/気管支学/27巻(2005)1号/p32-36

肺生検

気管支鏡検査でも好酸球比率が低かった場合、肺生検にて肺の組織を直接採取して、好酸球の浸潤があるかどうかを調べます。
特に、慢性型では再発の可能性が高いため、確実な診断を行うために肺生検が推奨されます。

好酸球性肺炎の治療

好酸球性肺炎の治療は、病状の進行や原因に応じて適切な治療法が選択されます。治療後も再発のリスクがあるため、継続的な観察と管理が求められます。
好酸球性肺炎の治療には主にステロイドが使用され、急性型と慢性型で治療方針が異なります。

急性型の場合、症状が急速に進行するため、初期にステロイドの投与が必要です。
重症で呼吸不全が見られる場合には、パルス療法(ステロイドを短期間大量投与し、炎症を迅速に抑える治療法)が行われます。
治療が遅れると重篤な呼吸不全におちいる可能性があるため、迅速な対応が必要です。

一方、慢性型(CEP)では、6か月から1年かけてステロイドの使用量を少しずつ減らしていきます。
再発しやすいため、治療後も定期的な経過観察が必要です。
参考:好酸球性肺炎/アレルギー/69巻(2020)3号/p.155-162

好酸球性肺炎になりやすい人・予防の方法

好酸球性肺炎は、喫煙者、アレルギー体質の人、特定の薬剤を使用している人、寄生虫感染のリスクがある地域に住む人がかかりやすいです。

急性型では喫煙が主なリスクで、受動喫煙も含めて避けることが予防になります。
慢性型はアレルギーや喘息持ちの人に多く、アレルゲンの管理や適切な治療が必要です。

薬剤が原因で発症する場合は、今後の使用について医師と相談のうえで決定していく必要があります。


関連する病気

  • アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
  • 寄生虫感染
  • 薬剤性肺炎
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